「家族からのダメ出しがいちばん堪える」「頭痛を堪えて会議に参加した」「鑑賞に堪える作品」の3つの文章で使用している「堪える」という言葉、それぞれ読み方が違うことに気付きましたか? 今回は、紛らわしいのこの語句を理解するための解説です。

【目次】

アナタにとっていちばん「堪える」のはどんな言葉?
あなたにとって、いちばん「堪える」のはどんな言葉?

「堪える」とは?3つの「読み方」とそれぞれの「意味」 】

「堪える」には、「こたえる」「こらえる」「たえる」の3つの読み方があります。それぞれがもつ意味やニュアンスを簡単にまとめましょう。

■堪える(こたえる)

(1)耐える、こらえるという意味で、「我慢しているけれど厳しい」という状況を表します。例:「気温の高さより湿度の高さのほうが体に堪える」

(2)耐え続ける、保つという意味も。例:「最後まで踏み堪える」

(3)打ち消しの「堪(こた)えられない」は「ある状態が我慢できないほど、とても気に入る」という意味でも使われます。例:すやすやと眠る乳幼児の寝顔は堪えらず、つい起こしたくなってしまう。

■堪える(こらえる)

(1)苦しみなどに耐えて我慢すること。辛抱すること。例:「痛みを堪える」「飢えや寒さを堪える」

(2)感情などを表さないことや、外部からの力に耐えることを言います。例:「怒りを堪える」「笑いを堪える」

(3)外部からの力に耐える。持ちこたえる。例:「強風に堪える」

(4)堪忍するや許すという意味も。例:「今回は堪えてやろう」

■堪える(たえる)

(1)苦しいこと、つらいこと、嫌なことを我慢すること。辛抱する。例:「厳しい訓練に堪える」「暑さに堪える」

(2)外部からの圧力や強い作用に対しても、屈したり影響を受けたりせずに抵抗すること。例:「重労働に堪える体力」

(3)性能や力などがなくならずに保たれていること。例:「まだ使用に堪える」

(4)それをするだけの価値があること。例:「鑑賞に堪える」「読むに堪えない」


【ビジネスシーンで使える3種類の「堪える」の「例文」6選】

「堪える(こたえる)」を使った例文

■1:「倒産の危機を何とか持ち堪えることができた」

■2:「暑い日の外仕事のあとの生ビールは堪えられない」

「堪える(こらえる)」を使った例文

■3:「原材料の高騰で状況は厳しいが、ギリギリまで値上げせずに堪えたい」

■4:「会議中だったが、上司の言い間違えに笑いを堪えきれなかった」

「堪える(たえる)」を使った例文

■5:「新製品は長時間の高温にも堪える素材を使用しました」

■6:「確認体制が改善されていないせいで人的ミスが続き、憤慨に堪えません」


【「堪える」の「類語」「言い換え」表現

「堪える」を「こたえる」「こらえる」「たえる」と分けて解説してきましたが、実のところざっくりいうとどれも「我慢」や「辛抱」を表す言葉です。さらに「類語」や「言い換え」を紹介します。

・我慢 ・辛抱 ・忍耐 ・忍ぶ ・堪忍 ・忍苦 ・乗り越える ・もつ(維持する) ・生き抜く ・生き延びる


【「耐える」や「応える」とどう違う?

■「堪(た)える」と「耐える」の違い

『デジタル大辞泉』で「堪える」を調べると、「た・える」として「堪・耐」の字をあてると記載されています。ですから基本的に同義と思っていいのですが、精神的な我慢の際には「堪える」を、物質的に保つ意味の際には「耐える」と使い分けることが多いようです。「悲しみに堪える」「高温に耐える」と覚えるとわかりやすいでしょう。

■「堪(こた)える」と「応える」の違い

「寒さがこたえる」というように、厳しい様子を表す場合は「堪える」でも「応える」でもOK! 「しんどい」という言葉で言い換えることもできますね。一方、「期待にこたえる」のように、報いるや応じるという意味の場合には「応える」を用います。


「堪える」を「英語」で言うと?

「この寒さは体に堪(こた)える」は[This cold weather is very hard on my body.]となります。

「私は堪(た)えられない」は[I can't put up with this.]に。

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読み方が3種類あり、意味も似ているようでニュアンスが違うようで…と、今回の「堪える」はちょっと難しかったでしょうか。使い分けは訓練がモノを言いますが、使う側が難しいと感じるなら相手にも伝わりにくいということ。「我慢」や「辛抱」など、わかりやすい類語に言い換えるのも“大人の語彙力”と言えますね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :