「ギターのエキゾチックな音色に隠された香りへの憧憬」
15歳でクラシックのギタリストとしてデビューして、昨年、40歳で25周年を迎えた村治佳織さん。フランスやスペインともゆかりの深い半生を通して、豊かな香りへの感受性も、音楽とともに育まれてきたようです。
ギタリストとして大きな節目を迎えた今、新たに出合ったのが『メゾン クリスチャン ディオール』の香りでした。モダンなライフスタイルに寄り添い、空間を共有する人たちとその日の気分で楽しめるという、豊かな香りのラインナップのなかから彼女が旅人のように、自由な気分で選んだのは?
幸福な香りとエキゾチックなギターの音色に包まれた、一夜のお話から始めましょう。
今の気分に合うのは、好きな香りだけをわがままに選べる自由
「季節によって、音楽によって、香りはその日の気分で選びたい」。自由気ままな旅人、村治さんらしい香り選び。とはいえノートはほぼ決まっていて、ウッディでスモーキー、オリエンタルなコクがあって、官能的…。そんな一筋縄ではいかないラテンの女性像も見えてくる。花摘みのパニエが、地中海に咲くローズの香りを思い出させてくれます。
「ウッディでスモーキーな香りに心惹かれ、なめらかに漂う官能的なローズの女らしさに癒やされる」
メゾン クリスチャン ディオール ウード イスパハン
村治さんが愛するスペインに残る、イスラム様式の美しい宮殿。魔法のスモークに包まれて、宮殿の扉を開けた瞬間、ローズの芳香に圧倒されるような香り。古代から伝わる希少な香木、ウードウッドをベースに、ダマスクローズやフランキンセンスなどが奏でる、ウッディオリエンタルが艶やかに香ります。
メゾン クリスチャン ディオール ローズ ジプシー
地中海の眩しい太陽と、切ない物語を謳い上げる、南仏からスペインの民族音楽のギターの調べが、ローズの甘い香りとともに聴こえてきそう。収穫されたばかりのみずみずしいメイローズと、その茎から放たれる、いきいきとした青い香りに、胡椒を思わせるスパイスが効いています。
香りを「聞く」愉悦
東京にみぞれ混じりの冷たい雨が降った夜、とある邸宅で『メゾン クリスチャン ディオール』の香りとアートを楽しむパーティが開かれました。
ゲストがそれぞれに選んだ香りをほのかにまとって、ディナーテーブルを囲む前のひととき。リビングで村治佳織さんのギターの調べに、間近で耳を傾ける幸運に恵まれました。繊細に、時に情熱的に、美しい音色が響き渡ると、初めて顔を合わせる人も多いなか、心が打ち溶け、壁が取り払われて、親密な空気が流れるのを、だれもが感じていました。それは五感に響く"香り"と"音楽"のマジックでした。
「たとえば 情熱的な『タンゴ・アン・スカイ』。香りをまとって演奏し、響きを香らせてみたい」
この日、村治さんが22本のフレグランスボトルのなかから選んだのは、『ウード イスパハン』。イスパハンという種類のダマスクローズの香木をイメージした香り。ほかにも『ローズ ジプシー』の官能的なネーミングにも心惹かれました。
「ウッディでスモーキーな香りが汗や体温によって匂い立つ、少し動物的でその人だけの香りになるのが好きなんです」
明るく愛らしい笑顔でそう語る村治さんからは連想し得ない、オリエンタル系のスパイシーな香りが並びました。
けれど演目のなかに「タンゴ・アン・スカイ」というアルゼンチン・タンゴを思わせる情熱的な名曲があり、そのイメージと見事に重なっていたのです。一瞬、アーティストの感性が、嗅覚を通してかいま見えました。
村治さんは、東京の下町で生まれ育ちました。作家の故・井上ひさし氏は、村治さんの家の前を通るたび、まだ10代の少女が奏でるギターの音色に足を止めて「江戸前で歯切れのいい音」と評したそう。
その早熟な才能が見出されて15歳でデビュー。パリへ留学するころから、旅人のようなギタリストの暮らしが始まり、香りの記憶も多くは空港やヨーロッパの街の中に残っています。
二十歳のころ『アランフェス協奏曲』で有名な、ホアキン・ロドリーゴ氏の前で演奏したことをきっかけに、よく訪れるようになったスペイン。一年のうち3、4か月をマドリッドで暮らす生活が続きました。
「陽気な下町気質が肌に合っていたのでしょう。毎朝のように公園を散歩して木々の香りを感じていました。とても乾燥していて、匂いが淀まないのです」
スペインの乾いた空気によく鳴り響く音は、村治さんの「江戸前で歯切れのいい音」に通じるものがあります。
名門レーベル「デッカ」と契約したロンドンでは、ウイスキーの香りも覚えたそう。
「ウイスキーもスモーキーで芳醇な香り。ブレンダーは指揮者のようにひとつの味をつくっていくのです。調香師が香りを"聞く"ようにお酒を嗜たしなむ。香りの楽しみ方を、ウイスキーが教えてくれました(笑)」
アロマの香りに夢中になり、まだ若くて力みがあったころは、緊張をほぐすために、楽屋でお香を焚くこともありましたが、「もう何かに頼らず、現状に感謝することでリラックスできるようになりました」。
そんなふうに香りをポジティブに楽しめる今、『メゾン クリスチャン ディオール』の新しい香りのあり方と出会いました。
「ひとつの香りがその人そのものになっている女性は素敵。でも私はまだひとつに絞れないから、香りをイメージソースに音楽や季節の彩り、生活とつなげて、自分らしく香りを楽しんでいきたいですね」
「香りを聞けばあの女性とだとわかる…。年齢を重ねた今、そんな風情に憧れる」
メゾン クリスチャン ディオール アンブル ニュイ
海外のアーティストが教えてくれた香りの重ねづけ。その洗練されたセンスを簡単にかなえるのが、香りを自由に重ねることを意図してつくられたこのコレクション。
ボディ クリームなら、たっぷりの潤い成分で肌を整えながら、ほんのりとまろやかな香りを添えてくれます。選んだのは、やはり村治さん好みのアンバー系の深い動物的な表情に、ターキッシュローズの繊細な女らしさを重ねた香り。
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※掲載した商品はすべて税抜です。
- PHOTO :
- Fumito Shibasaki (DONNA)
- STYLIST :
- 小倉真希
- EDIT&WRITING :
- 藤田由美、五十嵐享子(Precious)