世界レベルのパンデミックに見舞われた2020年。外出を控えて静かに立ち止まると、見えてきた世界には、これまでとは異なる価値観が生まれつつありました。
そんな中、雑誌『Precious』編集部は、新しい時代が求めるファッションの「名品」とは何か?について、最新1月号の「ニューノーマル時代の『新名品』」特集を通して深く考え抜きました。その特集の中で、生き方やおしゃれに共感を集める素敵な女性たちに、今の暮らしの中で「名品がどうあるべきか」をインタビューしました。
この記事では、その特集の中から、女優の井川遥さんが語ってくれた、暮らしやよそおいの変化についてのインタビューをご紹介します。
「一緒に時を重ねて・・・名品とは持つ人とともに息づいていくもの」
「ふたりの子供たちの小学校が4か月にわたって休校になったステイホーム期間。幼少期の子育てを彷彿とさせる目まぐるしさながら、かけがえのない時を共にしました。また4年前に立ち上げたブランドの仕事では、テレワークという慣れない生活様式の変化への対応に追われる日々でした。
そんな暮らしを通して、よそおいに加えたいと思うものが生まれています。たとえば美しい艶をたたえつつ、ストレスなく日常着にできるウォッシャブルシルク。きちんと感と軽快さのバランスが今の気持ちにフィットする気がして、手がけるブランドでもシャツやワンピースをつくりました。この季節、しなやかなコートをはおれば、すぐに出かけることができます。
少し変化を覚えたのは、ジュエリー使い。これまで大ぶりで迫力のあるものが好きでしたが、自宅でも一日つけたまま過ごすので、少し華奢なスキンジュエリーにも心惹かれています。
だれに見せるわけでなくとも、いつも肌触りのいい上質な素材に包まれること、好きな香りやジュエリーといった至近距離で楽しむおしゃれによって、自分のために、自分自身の気持ちが華やぐことが大切だと思うのです。
服づくりを始めたのはライフステージが変わり、頼れる服がほしいと思ったからです。
シンプルで、仕事では信頼を得られる端正さがあり、母として過ごす場では動きやすい服。そして靴を履き替え、ジュエリーを添えるだけで、夜の席にも通用する優雅さや遊び心も程よくある服。素材やパターンを追求すれば長く着られる服があるのではないかと。
つくり手になってますます心ときめくのは、ビッグメゾンの上質な物づくりや豊かさです。伝統と旬の感性とが生み出す底力を改めて感じます。そのひとつが、ブランドのスタイルを象徴するようなドラマティックなコート。機能美を語るディテールを秘めた仕立てのいいコートは、一枚まとうだけで女らしい雰囲気を醸し出し、余韻すらもたらしてくれる。そんなコートに出会えたら歳を重ねる楽しみがありますね」
「『名品』とは持つ人とともに息づくもの。古着のように、服がただ経年でなじむのではなく、自分が物と一緒に過ごした時間を楽しむことが大事なのです。
経過していく時間に人生を刻んでいくように…。だからこそ、物に対する愛着も少しずつ生まれていく。人を好きになることと、どこか似ています。選ぶときも流行りすたりではなく、物の芯を捉える眼をもち、深く愛せるかが大切だと思っています」(井川さん)
※掲載した商品は、すべて税抜です。
問い合わせ先
- PHOTO :
- 浅井佳代子、矢吹健巳(井川遥さん)
- STYLIST :
- 小倉真希
- HAIR MAKE :
- 三澤公幸(3rd)
- MODEL :
- 立野リカ(Precious専属)
- EDIT&WRITING :
- 藤田由美、小林桐子(Precious)