東京から直線でおよそ2800km、羽田空港や成田空港からは約5時間の場所に位置している香港は、日本人にとっても比較的なじみある都市です。しかし、面積は2754平方キロメートルと、日本の約137分の1ほどしかありません。そんなミニマムな都市になぜ、世界中の富裕層が注目しているのか。理由を伺ってきました。

■香港は中国への返還を転機に急激な経済成長を遂げた

香港の街中写真
香港の街中写真

2017年10月、リスト サザビーズ インターナショナル リアルティは香港に新たな海外拠点を設立。提供するのは、富裕層向けの高級不動産です。わざわざ香港を選んだ理由について、同社の武田さんによると「ここ数年、アジア経済の中心地域として香港への注目度が上昇してきたから」とのこと。

高級不動産の一例
高級不動産の一例

「弊社不動産事業の母体会社のルーツは、アメリカのオークションハウス・サザビーズです。世界的なオークションを年2回開催していますが、ここ数年主要エリアであるニューヨークとロンドンと並ぶ存在感を持ってきているのが香港です。

香港の営業拠点を開設したのはその流れを受けたのもあり、また昨今、アジア経済の中心地域として香港が注目されていることから、不動産事業についての展開を決断しました」

2016年における香港のGDPは、3209億USドル(約36兆円)となっています。経済成長の大きな転機となったとされるのは、1997年にイギリスから中国へと返還され、特別行政区として「一国二制度」が取られた時期から。実は、返還当時に1774億USドル(約20兆円)であったGDPはおよそ2倍に匹敵するほどとなり、今後もますますの経済成長が見込まれているのです。

■キャピタルゲインや課税所得についての優遇が魅力

 
 

米国のシティバンクによる香港の富裕層についての調査によれば、2016年時点で、1000万香港ドル(約1.4億円)以上の資産を持つ人口が約5万9000人である一方、100万香港ドル(約1462万円)以上の資産を保有する人々が約87万8000人、前年比で約14%増加したという結果が出ています。

とりわけ活況なのが不動産分野で、同社の今井さんによれば「街中にある築数十年のマンションも5000万〜6000万円の値が付くほど」の状況で、日本でも人気のタワーマンションや郊外の“億”を超える大邸宅ですら、市場に出る前から買い手が付くほどの人気となっているそうです。

高級不動産の一例
高級不動産の一例

また、投資目的の購入者がいる一方、中国を中心に世界からの移住者も集まっているといいますが、武田さんはその魅力として独自の「税制措置」を挙げます。

「キャピタルゲイン(土地や株などの資産から得られる配当にかけられる税金)への課税がないというのは、一つの大きなメリットだと思います。

アジア圏では、香港以外にシンガポールも同様の措置を図っていますが、現地のプライベートバンクとのやり取りの中では、その点に惹かれる富裕層がいたという話もあります。年齢層としては、40〜50代の方々が多い印象もありますが、30代で資産を築いて移住される方も多いようです」

課税所得でも優遇措置があり、今年10月、香港政府は200万香港ドル(約2800万円)まで所得についての税率を8.25%に引き下げることを発表。参考までに、日本の国税庁のホームページによれば「1800万円を超え4000万円以下」の所得については40%の税率(控除額:279万6000円)が課せられるとされています。

日本と比較しても、税制面での優遇がみられる香港。そのため、世界の富裕層がこぞって香港に移住したり、別荘を購入したりしているそうです。ある程度の資産を保有したのち、移住するというのも人生の選択肢として検討してもよいかもしれませんね。

■一国二制度による「ヒト・モノ・カネの流動性」も特徴

スタートアップに最適
スタートアップに最適

順調な経済成長を遂げ、税制面での優遇を理由に注目される香港。ビジネスの側面からすると「スタートアップの段階でも何かを始めやすい環境にある」と、土地柄をふまえた魅力を今井さんは語ります。

「中国のシリコンバレーと呼ばれる深セン市が、距離的に近いのも資産家や投資家に人気の理由になっています。フェリーやバスなど交通手段も多岐にわたり、税制面での優遇と併せて惹かれる魅力になっているようです。

また、中国への返還時からの『一国二制度』により『ヒト・モノ・カネ』が他国と比較しても流動的で、各国からの優秀な人材が香港に集まっているという話もあります。将来的な成長もふまえると、今後も注目はますます高まっていくのではないでしょうか」

一般的には観光スポットとしてのイメージがある香港ですが、世界各国の富裕層にとっては、ビジネスを中心とした魅力もふんだんにあるようです。しかも、まだまだ香港ブームは衰えそうもありません。

現在のキャリアの先で、どのような生き方を選ぶべきかも人生にとっては不可欠。これまでの資産を活かし、歴史と伝統ある香港で第二の人生を送るという選択肢はいかがでしょうか。

PROFILE
リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ
1744年設立のサザビーズオークションハウスに起源を持つ不動産流通・販売ネットワークのグローバルブランド「サザビーズ インターナショナル リアルティ」を日本・香港・ハワイなどで展開。国内では東京・神奈川の拠点を通して各地域に密着した基盤を持つ一方、世界69の国と地域と繋がるグローバルネットワークを持つ。運営会社の母体は日本のリスト株式会社。
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この記事の執筆者
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WRITING :
金子修平