雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は「La Caserne」代表 マエヴァ・ベシさんの活動をご紹介します。
ファッション業界の変革を促すサステイナブルのための「場」
パリ10区にある、この街で最も古い消防署の建物。4000平方メートルに及ぶ広大なスペースが、昨年、サステイナブルをテーマにしたファッションの発信地「ラ・カゼルヌ(消防署の意)」として新たなスタートを切った。
生地のショールーム、製品サンプル作成や耐久性テストもできるラボ、若手デザイナーのためのレンタルオフィス、そして一般開放のセレクトショップやベジタリアンレストラン、地下にはクラブもある。
創設者はマエヴァさん。前職で400人近い若手デザイナーと関わり、「サステイナブルな情報に、より簡単にアプローチできる場所が必要だ」という思いを強くしたことがきっかけだ。
「サステイナブルを目指そうとしても、たくさんの法律があり、理解するためには時間がかかります。同時に消費者も、原材料は何で、どこでつくられたものかということを知りたいと思っている。
だから私は、ファッションの専門家をサステイナブルの観点からサポートし、市民に情報を提供する場所が必要だと考えたんです。そして、ファッションの中心地であるパリには、先駆けてこうした変革を行う義務があると」
例えば、写真でマエヴァさんが手にした生地は、ラグジュアリーファッション業界の大手企業が使わなかった素材を若手デザイナー向けに安価に提供しているもの。
こうした業界内での連携も、拠点があればスムーズになる。毎週水曜日の夜には、サステイナブルファッションに関する勉強会を開催。そして、建物全体でも循環型消費(※)を実現すべく、廃棄物の再利用など実験を重ねている。
「出会い、つながって、前進する。ここがそのための場所になれば」
【SDGsの現場から】
●パリで最も古い消防署の建物を2年がかりで改装
●さまざまなジャンルの人たちと積極的につながる
※循環型消費とは…「ラ・カゼルヌ」ではレストランでの使用ずみキャンドルと食用油で再生キャンドルをつくるなど、独自の取り組みも行っている。
- PHOTO :
- Yusuke Kinaka
- WRITING :
- 剣持亜弥(HATSU)
- EDIT&WRITING :
- 大庭典子、喜多容子(Precious)
- 取材 :
- Noriko Ishizaka