田島尚徳さんは地元の岐阜で修業後、一度独立を考えるも不況のため断念。サラリーマンへ転身して2年後、鮨職人に復帰、福岡、東京の鮨店での修業を経て、2014年、晴れて独立した異色の経歴のもち主です。

『すし 龍尚』の店主・田島尚徳さん
『すし 龍尚』の店主・田島尚徳さん

おまかせコースは、握りとつまみを交互に出すスタイル。

握る際に手を湿らせる手酢は、ネタによって酢の種類や配分を変えた3種、煮切りは4種を使い分ける繊細さが魅力です。田島さんの手から直接受け取るのも楽しい仕掛け。

握りはユニークな手渡しスタイル
握りはユニークな手渡しスタイル

「接待などでいらっしゃるお客様は、握ってもすぐ鮨に手をつけていただけないことも。そこで、いちばんおいしい状態で食べていただきたいと始めました。目の前に出されたら受け取らざるをえないでしょう?」と茶目っ気たっぷりに笑う田島さん。

田島さんも好きだというトリガイ、塩水に浸してくさみを除いた塩じめイワシ、さっとゆで、甘みを引き出した大分産車エビ、富山産白エビの昆布じめなど。
田島さんも好きだというトリガイ、塩水に浸してくさみを除いた塩じめイワシ、さっとゆで、甘みを引き出した大分産車エビ、富山産白エビの昆布じめなど。

型にはまらない自由な流儀や美学は、握りだけにとどまりません。焼き物用にわざわざ炭をおこしたり、食後のデザートも自ら手がけます。特注している美濃焼きの器や酒器への造詣も深く、今後の進化がますます楽しみな一軒。

「今日の鮨に満足していただいても、次いらしたときに成長していなければ再訪はない。常に進化していたい」。

田島尚徳さんに、こんなことも聞いてみました

Q.好きな魚は?
A.マグロ(赤身)。「単純においしいから。特に漬けが好き」
Q.自分を魚にたとえると?
A.マグロ。「泳ぎだしたらだれも止められない⁉」
Q.好きな言葉は?
A.守破離。「伝統を打ち破る勇気も必要」
Q.好きな音楽は?
A.サザンオールスターズ。「特に好きな曲は『みんなのうた』です」
Q.オフの日の過ごし方は?
A.朝からブックカフェで読書。「料理雑誌を読んで勉強&情報収集」
Q.今、いちばん行きたい場所は?
A.秋田、山形の酒蔵。「気になっている酒蔵を巡りたい」
Q.小さいころの夢は?
A.飛行機の整備士。

問い合わせ先

  • すし 龍尚 TEL:03-6873-4229
  • 住所/東京都港区白金3-1-5
    営業時間/18:00~21:30(最終入店)
    定休日/水曜・祝日 ※前日までの要予約
    おまかせコース ¥13,000~(つまみ5~6品、握り13~14貫)、日本酒1合 ¥900~
    カウンター9席のみ
この記事の執筆者
TEXT :
田中美保さん 編集者
BY :
『Precious6月号』小学館、2016年
1974年生まれ。編集プロダクション「スタッフ・オン」取締役社長。『Precious』をはじめ、『Domani』『Oggi』など女性誌の食や旅、生き方や著名人インタビューのページを担当。『しょうが女神の簡単おつまみ127』、『武田双雲の「書いて」夢をかなえる本』、『漂流郵便局』(いずれも小学館)など書籍の編集も。 好きなもの:食べること、料理、お弁当を詰めること、広いキッチン、大きなベッド、古い建物、鎌倉、『Empire 成功の代償』、『Castle ミステリー作家は事件がお好き』、キューバ、ブエノスアイレス、ハワイ、ジャック・ジョンソン、有吉佐和子『悪女について』、林真理子『星に願いを』(山田詠美のあとがきも好き)、ガルシア・マルケス『百年の孤独』、サーティワンのチョコレートミント
クレジット :
撮影/篠原宏明 取材/森中奈央(TRYOUT) 文/田中美保