ネタとシャリと一体化させた握りでファンを増やし続ける

渋谷の静かな裏通りにある『くろ﨑』。店内に足を踏み入れると、檜のカウンターがまるで能舞台のように照らされて、ドラマティックな気分が高まります。

黒﨑一希さん
黒﨑一希さん

「お客様のカウンターと、僕が握るつけ場はほとんどフラット。お客様から手元が見えるようにして、少ないスタッフで接客していても、仕事ぶりを楽しんでいただけるように。ごまかしがいっさいきかない、自分の覚悟の意味も込めています(笑)」

上京して食いっぱぐれないように就職したのが、寮のある鮨店だったという、意外なきっかけで鮨職人になった黒﨑さん。「同期や先輩に負けたくない」と修業を重ねるうちに夢がふくらみ、店を構えたのは2015年2月のこと。

シャリはネタを引き立たせるため3種の酢をブレンド。対馬のアナゴは小ぶりで脂ののった希少なものを厳選。ふっくらして小骨をまったく感じさせない。
シャリはネタを引き立たせるため3種の酢をブレンド。対馬のアナゴは小ぶりで脂ののった希少なものを厳選。ふっくらして小骨をまったく感じさせない。

ネタに繊細な切り込みを入れてシャリと一体化させた握りや、独自の調理法で手間をかけたつまみがまたたく間に評判に。その探究心こそが、ファンを増やし続けている理由だといえそうです。

「開店当初から、ネタの仕込み方や味は相当変わりました。僕には師匠と呼べる師匠がいないので、頼るメソッドもなければ守る流派もない。“本当にこれでいいのか?”と、毎晩閉店後に10貫ほど握って、味を確かめています」

黒﨑一希さんに、こんなことも聞いてみました

Q.好きな魚は?

A.コハダ。「板前によって味や形を変える、八方美人っぷり」

Q.自分を魚にたとえると?

A.マグロでないことは確か。「理由はご想像におまかせします」

Q.好きな言葉は?

A.やらずに後悔するより、やって後悔すべし。

Q.好きな音楽は?

A.HIP HOP、昭和歌謡。「HIP HOPは’90年代が好きです」

Q.オフの日の過ごし方は?

A.食べ歩き、ジム。「家ではまったく食べず、フル外食」

Q.今、いちばん行きたい場所は?

A.海外。「まずはパスポートとってきます!」

Q.小さいころの夢

A.NBAプレイヤー。「バスケ漫画『スラムダンク』世代です」

問い合わせ先

  • くろ﨑 TEL:03-6427-7189
    営業時間/18:00~21:30(最終入店)
    定休日/水曜 ※要予約
    おまかせコース ¥16,000(つまみ8品、握り12貫程度)、日本酒1合 ¥800~
    カウンター9席、個室カウンター6席(室料なし)
    住所/東京都渋谷区渋谷1-5-9 1F
    ※この情報は2016年5月7日時点のものになります。詳細はお問い合わせください。
この記事の執筆者
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田中美保さん 編集者
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『Precious6月号』小学館、2016年
1974年生まれ。編集プロダクション「スタッフ・オン」取締役社長。『Precious』をはじめ、『Domani』『Oggi』など女性誌の食や旅、生き方や著名人インタビューのページを担当。『しょうが女神の簡単おつまみ127』、『武田双雲の「書いて」夢をかなえる本』、『漂流郵便局』(いずれも小学館)など書籍の編集も。 好きなもの:食べること、料理、お弁当を詰めること、広いキッチン、大きなベッド、古い建物、鎌倉、『Empire 成功の代償』、『Castle ミステリー作家は事件がお好き』、キューバ、ブエノスアイレス、ハワイ、ジャック・ジョンソン、有吉佐和子『悪女について』、林真理子『星に願いを』(山田詠美のあとがきも好き)、ガルシア・マルケス『百年の孤独』、サーティワンのチョコレートミント
クレジット :
撮影/篠原宏明 取材/森中奈央(TRYOUT) 文/田中美保