ファッションは時代を映す鏡と言われますが、なかでも「カラー」に反映されるのは、時代に漂う「気分」でしょう。今回のコレクション取材で気になったのは「クールパステル」「プレイフルベージュ」「ハッピーピンク」「エナジーレッド」「サステナブルブラウン」。洗練のトレンドカラーを上手に取り入れて、新たな日常に一歩踏み出せるであろう2023年の春を、ファッションで思い切り楽しみましょう。

■TREND COLOR1:繊細で大人っぽい「クールパステル」

写真はすべてドリスヴァンノッテンより。
写真左から/ミュウミュウ、セシリー・バンセン、ドリス ヴァン ノッテン

2023年春夏は、パンデミックの終わりの始まり。安全な環境を求めながら、気分は前のめりなほど希望に満ちた解放感にあふれています。 そんな気持ちを代弁するように、コレクションでは、澄み切った明るく輝く明日を夢見るにふさわしいパステルカラーが主役に。 ライムやピスタチオ、ミントなどのグリーン、アクアやスカイなどのブルーといった寒色系を中心に、甘さを抑え、少しグレイッシュなクールなパステルが中心になっているのが特徴です。「ミュウミュウ」や「セシリー・バンセン」ではシフォン、オーガンジー、メッシュなど透ける素材を重ねて。また、「ドリス ヴァン ノッテン」のように複数の色を重ねたり、曇りガラスを通したようなぼんやりしたニュアンスのパステルも今季らしい。

■TREND COLOR2:進化した「プレイフルベージュ」

写真左から/フェンディ、クレージュ、マックスマーラ
写真左から/フェンディ、クレージュ、マックスマーラ

「ベージュ」は定番カラーとして、常に私たちのクロゼットにあるはず。品の良さとともにあるべきカラーですがその反面、ちょっと冒険の足りない印象もあり、実は、そのあたりのさじ加減が難しいカラーでもあります。
でも今季のベージュはまさにトレンドど真ん中。流れに乗れば、今季らしい遊び心と大胆さで旬のニュートラルカラーを楽しめるはず。「マックスマーラ」では、コットンやリネン素材で軽やかに肌見せしつつ、マキシ丈のトータルカラーで。「クレージュ」はほっそりシルエット、シンプルなデザインでも、凹凸のある素材やフリンジ使いで遊び感覚が満載です。「フェンディ」はサテン、スパンコールなど艶やめく素材で。 全体的には、明るく白に近いベージュ、サンドベージュなどニュートラルトーンが今季の中心です。

■TREND COLOR3:「幸せピンク」は、ペールにクールに変身

写真左から/アルチュザラ、ステラ マッカートニー、アミ パリス
写真左から/アクネ ストゥディオズ、モリー ゴダード、ジャンバティスタ ヴァリ

このところ絶大な人気が続く「ピンク」ですが、今季はホットピンクだけではなく、「ジャンバティスタ ヴァリ」のようにピンク同士の色目を少しずらした配色でニュアンスを出したり、「アクネ ストゥディオズ」のようにシフォンなどでより透け感を強調するペールピンク、「モリー ゴダード」の青味を足したラベンダーなど、クールな大人のピンクへと爽やかな気品を増しています。

また、オープンエアーの庭園でダイナミックなショーを披露した「ファビアナ・フィリッピ」が提案した「ピンク×ブラウン」という組み合わせは、ぜひ試してみたい大人仕様のエレガンス配色です。

写真は「ファビアナ フィリッピ」のプレゼンテーションより。
写真は「ファビアナフィリッピ」のプレゼンテーションで気になった「ピンク×ブラウン」の洗練配色。

■TREND COLOR4:前向きパワー満載の「エナジーレッド」

写真左から/プラダ、ディースクエアード、ランバン
写真左から/アクネ ストゥディオズ、フェラガモ、ロエベ

前向きのエネルギーを放つ、祝祭感あふれる「レッド」が台頭してきています。もはやアクセントカラーではなく、「アクネ ストゥディオズ」や「ロエべ」のようなドレスなど、トータルカラーで用いるパワフルなスタイリングが目立っていました。トーンは真紅が今季を象徴しますが、コーディネートは「フェラガモ」のようにシアー素材とマットな素材の組み合わせで変化をつけたり、ボルドーやオレンジ味に振ったトーン違いで合わせるなど、工夫して組み合わせるのが、着こなしのコツです。

■TREND COLOR5:熱い大地を感じさせる「サステナブル ブラウン」

写真左から/バリー、フェラガモ、サンローラン
写真左から/バリー、フェラガモ、サンローラン

久しぶりにトレンドカラーとして注目されているのが「ブラウン」。環境保全やオーガニック、SDGsへの取り組みを考える時、基本になるのは豊かな大地だ。今季は森や海だけではなく、母なる大地を思わせるブラウンが、明るい赤みブラウンから「サンローラン」のような濃いチョコレートのブラウンまで登場。サテンの艶やスェードやベルベットやピーチスキン、レザーに至るまで、濃淡や同系色でまとめるのが、着こなしの基本となっています。「 バリー」のようなブラウン同士を合わせたスタイリングは、成熟感があって、大人の雰囲気が漂って。親しみのあるカラーだけに、気軽に着こなしてみたいトレンドカラーです。

「藤岡篤子の2023年トレンド予測」第3回も近日公開予定。どうぞお楽しみに!

この記事の執筆者
1987年、ザ・ウールマーク・カンパニー婦人服ディレクターとしてジャパンウールコレクションをプロデュース。退任後パリ、ミラノ、ロンドン、マドリードなど世界のコレクションを取材開始。朝日、毎日、日経など新聞でコレクション情報を掲載。女性誌にもソーシャライツやブランドストーリーなどを連載。毎シーズン2回開催するコレクショントレンドセミナーは、日本最大の来場者数を誇る。好きなもの:ワンピースドレス、タイトスカート、映画『男と女』のアナーク・エーメ、映画『ワイルドバンチ』のウォーレン・オーツ、村上春樹、須賀敦子、山田詠美、トム・フォード、沢木耕太郎の映画評論、アーネスト・ヘミングウエイの『エデンの園』、フランソワーズ ・サガン、キース・リチャーズ、ミウッチャ・プラダ、シャンパン、ワインは“ジンファンデル”、福島屋、自転車、海沿いの家、犬、パリ、ロンドンのウェイトローズ(スーパー)
WRITING :
藤岡篤子