ウイスキーのほのかな甘みと、すっきりとした飲み口のハイボール。ウイスキーほどアルコール度数が高くないので、居酒屋やバーでは「とりあえずビール」ではなく「とりあえずハイボール」の人も多いはず。けれど、ハイボールの名前の由来を知る人はそう多くないはないでしょう。はたして、その真相は?

世界各国から集められた1000種類を越えるウイスキーを取り扱うバー&ラウンジ「TOKYO Whisky Library」のバーテンダー・小田健吾さんが、そのルーツを教えてくれました。

TOKYO Whisky Libraryのバーテンダー小田健吾さん

■バーボン好きの鉄道員がハイボールの発案者?

TOKYO Whisky Libraryの店内にずらりと並ぶウイスキーボトル

ハイボールの名前の由来は諸説ありますが、小田さんによると、ふたつの説が有力なのだそうです。

「ルーツは19世紀のアメリカ、開拓時代に遡ります。当時、鉄道ではボールが上がったら『進行』、下がったら『停止』を意味するボール信号機で列車に指示を送っていました。ある鉄道員がバーボンを飲みながら列車を待っていて、ボールが上がるたびにバーボンをソーダで割って一気に飲み干していたそうです。転じて、ウイスキーのソーダ割りが『ハイボール(High Ball)』と名付けられたと伝えられています」と小田さん。

そのほか、列車が途中停止する際の合図に、先端にボールが付いた棒を掲げていたことも由来のひとつ。合図後、停車した列車内では乗客にウイスキーのソーダ割がふるまわれ、そこから「ハイボール(High Ball)」と呼ばれるようになったとも言われています。

小田さん曰く「このふたつの説は、アメリカのバーテンダースクールにも伝わっているので信憑性が高い」と説いています。

鉄道員が業務中に飲酒するというのは、今では絶対に考えられないこと。ハイボールはおおらかな時代の産物と言えるかもしれませんね。

■日本人好みの軽やかな飲み口がブームに火をつけた

左から/「シトラス ハイボール」¥1,500(税込、サービス料別)、「イタリアンスタイル ハイボール」¥1,500(税込、サービス料別)

日本でハイボールが生まれたのは、戦後間もない1950年代と言われています。当時の洋酒ブームも手伝って、おしゃれな飲み物としてハイボールも広く浸透しました。やがて、ウイスキーの飲み方はロックや水割りが主流に。しかし2000年代のブーム再来まで、ハイボールが日の目を見ることはありませんでした。それでは、第二次ハイボールブームが起こったきっかけとはなんだったのでしょうか?

「和食をはじめ、日本人の手にかかれば、中華料理もイタリアンもさっぱりした味付けになります。キレがあって軽い飲み口のハイボールは、日本人好みの料理やつまみと相性がいい。そこから、料理の味をひき立てる食中酒として親しまれるようになったのでしょう。もちろん、サントリーさんを筆頭にメーカーのプロモーションも大きな後押しになっています」(小田さん)

ちなみに、海外でいう「ハイボール」は、スピリッツ(蒸留酒)やリキュールをソーダ、コーラ、ジュースなどで割ったカクテルのこと。割り材の役割は、あくまでもフレーバーを加える程度。ウイスキーのロック、ストレートのアレンジに近い飲み方になります。海外ではアルコール度数の強いカクテルを飲みながら、しっかりした味付けの料理をつまむのが主流なのだそうです。

「うちを利用する外国人のお客様も、日本滞在歴が長い人ほど日本独自のハイボールを好んで飲んでいる印象。やっぱり、舌の好みが日本人寄りになっていくのでしょう」(小田さん)

■ウイスキーの長所を伸ばして、ハイボールをさらに楽しむ。

手前から/ウイスキーカクテル「グリーンカーテン」¥1,500(税込、サービス料別)、「ぶどうの燻製」¥980(税込、サービス料別)

ウイスキーのソーダ割りでも充分おいしいハイボールですが、少しのアレンジを加えるだけで、多彩な魅力を展開します。TOKYO Whisky Libraryでは、工夫を凝らした創作ハイボールを開発しているのだそう。

「うちの一番人気は『シトラス ハイボール』。スコットランドのウイスキー、『ザ・グレンリベット12年』にレモンの果皮を浸けて、ソーダで割ったらできあがり。柑橘系の香りが加わり、より爽やかな飲み口になります。甘いカクテルが好みなら、『アベラワー12年』とリキュールのカンパリを使った『イタリアンスタイル ハイボール』を。カンパリの甘み・苦みでひと味違ったハイボールに仕上がります。そのほか、ウイスキーにコーヒー豆を漬けこんだ『コーヒー ハイボール』やアールグレイティーを使った『アールグレイ ハイボール』もおすすめです」(小田さん)

家庭でハイボールをつくる際は、個性が強いシングルモルトのウイスキーより、割り材によく馴染むブレンデッド・ウイスキーのほうが使い勝手がいいそうです。

TOKYO Whisky Libraryはオリジナルのウイスキーカクテルも提供。女性でも楽しめる飲み方を追求している

「ハイボール、ウイスキーカクテルをおいしくつくるコツは、ウイスキーの個性をよく知ること。個性を潰さず、長所を伸ばすつもりで割り材やレシピを考えましょう」(小田さん)

19世紀にアメリカに生まれ、日本で独自の進化を遂げたハイボール。男性向けのイメージが強いウイスキーですが、ハイボール、カクテルなら女性でも楽しめるレシピがいっぱい。専門店で本格的なハイボールを楽しんだり、オリジナルハイボールを考えてみたり。知れば知るほど、飲めば飲むほど奥深いハイボールの世界にひきこまれるはずです。

問い合わせ先

  • TOKYO Whisky Library 
  • 営業時間/18:00〜27:00(26:00 L.O.)、土曜15:00〜27:00(26:00 L.O.)、
  • 日曜・祝日15:00〜24:00(23:00 L.O.)
  • TEL:03-6434-1163
  • 住所/東京都港区南青山5-5-24  南青山サンタキアラ教会2階  

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PHOTO :
島村 緑
WRITING :
名嘉山直哉
EDIT :
高橋優海(東京通信社)
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