宅配物などにバーンと貼ってある「天地無用」のシール、見たことありますよね。この「天地無用」という言葉を真逆の意味で使用している人が多いとか! それはなぜなのでしょう。言葉の綾では済まされない、事故やトラブルを招きかねない「天地無用」の使い方を、しっかりチェックしてください。

【目次】

「天地無用」シールは正しく貼りましょう!
「天地無用」シールは正しく貼りましょう!

「天地無用」とは?「読み方」「正しい意味」「由来」など基礎知識 】

■読み方

「天地無用」は「てんちむよう」と読みます。

■正しい意味

「天地無用」は、運送する荷物などに表示する言葉で「上と下を逆にしてはいけない」という意味です。逆さにすると破損や形状の変化、水分漏れなどの恐れがあるものを運搬する際、上下(天地)を逆さにしないでこの向きのまま運んでくださいという意味で、「天地無用」と書かれたシールを貼るなどします。

■間違って使われている!?

ところが、文化庁が発表した平成25年度の「国語に関する世論調査」では、「上下を逆にしてはいけない」で使う人が55.5%で、本来の意味ではない「上下を気にしないでよい」で使う人が29.2%もいるという結果が出ています。「天地」が天と地や上下を表すのはわかりますが、「無用」がちょっと厄介なのです。

■「無用」の意味

「無用」にはいくつか意味があります。

1)役に立たないこと。使い道のないこと。また、そのさま。無益。「無用な臓器はない」

2)いらないこと。また、そのさま。不要。「ここでは遠慮は無用です」「心配御無用」「問答無用」

3)用事のないこと。「無用の者立ち入るべからず」

4)してはいけないということ。禁止。「立ち入り無用」「開放無用」「貼紙無用」「他言無用」

日常的に使用される「無用」には、大きく「しなくてよい」と「してはいけない」のふたつの意味があることがわかりますね。「天地無用」の「無用」は4の意味で使われているので、「天地を気にしなくていい」ではなく、「天地(上下)を逆さにしてはいけません」ということなのです。

■由来

もともとは「天地入替無用(てんちいれかえむよう)」や「天地顛倒無用(てんちてんとうむよう)」といった運送業界で使われていた専門用語。それが四字熟語の形をとって「天地無用」として使われるようになり、一般にも浸透しました。


【「正しい使い方」がわかる「例文」5選

■1:「この荷物はひっくり返すと破損しやすいので、天地無用のシールを貼って、宅配便で出してください」

■2:「天地無用のシールの貼り方がいい加減では意味がないよ」

■3:「天地無用を上下なしと勘違いしていた!」

■4:「専用のシールがなくても、目立つところに天地無用と書いておけば大丈夫です」

「天地無用」を理解していても、正しく使わなければ意味がありませんね。


【荷物を「天地無用」で運びたい場合は…】

宅配便業者には「天地無用」をはじめ、さまざまな専用シールが用意されています。「われもの注意」「カッター注意」「取扱注意」などのシールを使うこともあるのでは? 「天地無用」は上下を逆さ、あるいは倒した状態にしては困るものを運搬する際に使用するので、荷物のどの面が上(天)なのか、明確にする必要があります。

「天地無用」とだけ書かれたシールは「上になる面」に貼ります。また、「天地無用」と「上向きの矢印」の両方が書いてあるシールも「上になる面」に貼るのですが、ここで問題が! このシールを上になる面に貼ると矢印は横方向を指すことになり、外国人も多く働く仕分け作業の現場では、間違えたり混乱したりすることがあるのだそう。矢印が指す方向を上にして運ぶのだと勘違いすることがあるのです。これは業者や仕分け現場が正しい意味を周知すべき問題ですが、「私も矢印が上の面を指すように、側面に貼ってたかも!?」と心当たりのある人がいるかもしれませんね。「天地無用シールは上になる面がどの面なのか、しっかりわかるように貼る」が正解です。


「類語」「言い換え」「対義語」など関連表現

「天地無用」は少々紛らわしい言葉なので、ほかの言い方で示したほうがいいことも。関連語を見てみましょう。

■類語・言い換え表現

「逆さま厳禁」や「この面を上に」で言い換えることができます。「天地無用」「逆さま厳禁」「この面を上に」は、すべて上になる面に記します。

■対義語

「天地無用」の対義になる言葉は見当たりませんが、特に問題にしないという意味の「不問」を用いて「天地不問」「上下不問」などで意味は通じるでしょう。


【「天地無用」を英語で言うと…】

[this side up]は「この面を上に」、[right side up]は「正しい面を上に」となります。

「取扱注意」は[Handle with care]、「われもの注意」は[Fragile]でOKです。

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普段何気なく使っていたり、習慣として使っている熟語はあるものです。今回の「天地無用」のように、正しい意味を理解しておかないとトラブルの元! その言葉の意味を説明できるかどうか考えると、自分が正しく理解しているか否かわかります。不安になったらぜひ確認を。今回の「天地無用」は、30%程度の人が「上下を気にしなくてよし」と真逆の意味でとらえているようですし…。確認は大切です。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『知っているようで知らない ビジネス用語辞典』(水王舎)/『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) :