毎年4月に行われる世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」へ行ってきました。滞在中、インテリアが話題の2つのホテルに泊まってきました。

ひとつ目は、インテリア業界で最も注目を浴びている女性建築家・デザイナーのひとりとして賞賛され、2015年からはカッシーナのアートディレクターも務める、パトリシア・ウルキオラによるデザイナーズホテル「room mate giulia(ルーム メイト ジュリア)」。ふたつ目は、ニコラ・ガリツィアが内装デザイン 、Molteni(モルテーニ)が家具を手がけた「HOTEL VIU MILAN(ホテルビウミラン)」です。

本記事では「room mate giulia(ルーム メイト ジュリア)」の外観、内観、ロビーや廊下、カフェテリア、フィットネススパ、ジム、部屋の内観、アメニティ、宿泊した感想などをまとめています。

ミラネーゼの名前をもつ、ミラノの魅力がつまったデザインホテル「room mate giulia(ルーム メイト ジュリア)」

イタリア・ミラノには何度か訪れたことがあるという方も多いはず。今度行くなら、宿泊するホテルをイタリアならではのおしゃれなインテリアで選んでみませんか?

2016年3月にオープンした「room mate giulia(ルーム メイト ジュリア)」はミラノの中心部、ドゥオーモ広場横のガレリアから2軒先の非常に便利な立地にある4つ星ホテルです。

5つのカテゴリー(スタンダード、スーペリア、デラックス、ジュニアスイート、テラス付きペントハウス)に分けられた、6フロア85室の客室。お部屋の広さは、20〜35㎡。宿泊費の目安は、¥31,114〜¥165,175 (スタンダード ルームの平均価格に基づきます) 。※ミラノサローネが開催される4月は高騰します。

ガレリアからレストラン挟んで2軒先。パークハイアットの向かいです。パークハイアットのバーのインテリアも素敵です。家具の張り地がデダールなのです! 
ガレリアからレストランを挟んで2軒先。パークハイアットの向かいです。パークハイアットのバーのインテリアも素敵です。家具の張り地がデダールなのです!

ルームメイトグループは、ヨーロッパ、北米・南米を中心に、好立地なロケーションにおしゃれなデザインと、リーズナブルなホテルをチェーン展開するスペイン発のホテルグループです。

人気女性建築家・デザイナー、パトリシア・ウルキオラが手がけた最旬インテリア

インテリアを手がけたのは、カッシーナのクリエイティブディレクターに就任したことでも話題の、パトリシア・ウルキオラ。コーディネートのキーワードは「ミラネーゼ」。ルームメイトジュリアの、Giulia(ジュリア)とは、「若々しい」という意味のイタリアで人気のある女の子の名前です。

過去と現在をリサーチしてつり上げる彼女の世界観は、多種多様な素材や感触が組み合わさり、友人の家に招かれたような心地よさとワクワク感があります。

156㎝のインテリア5月に掲載されている「カッシーナ」の「チッコニーニョ」
カッシーナの「チッコニーニョ」

ホテルのロビーの床は、ドゥオーモでも使用されているピンク色の大理石。パトリシアの建築プロジェクトでも使われており、この色は彼女のカラースキームの中でもよく使用されています。

ロビー
気取っていないのに贅沢。新旧ミックスのスタイルは、ミラネーゼのイメージそのもの。

立体的なグラフィックと平面のグラフィックがかけ合わさる楽しいロビー。湾曲した壁面は、ミラノ建築でよく使用されるテラコッタレンガ、グリッド状にカスタマイズされたカーペットに、パトリシアがさまざまなメーカーから出している家具がリズミカルに配置されています。

ラウンジ
ロビーにも廊下にも室内にもアートが取り入れられています。

飾り棚のあるロビーラウンジの一角。アクリルや木、ファブリックにスチール、大理石にグラフィックアートにネオン管。ミックスされた素材感と、ちょっとしたコーナーづくりが楽しい!

色彩にあふれ、シックで楽しいインテリアの食堂で朝食を

正午までとれる朝食は、1階の食堂でバイキング形式。果物、野菜、種類豊富なフレッシュジュース、あたたかいメニューにスイーツもグルテンフリーのコーナーもあります。

フルーツや野菜のビュッフェ
カフェテリアの朝ごはんもカラフル。スタッフもフレンドリーで居心地がとても良かったです。

ホテルのさまざまなシーンで繰り返し使われているグリッドにパターンと、パイプに革でぶら下げる仕様がここでも。雑誌が入り、背もたれのパディングになっています。廊下に続くキーカラーのブルーのクッションが効いてます。

テーブルと椅子
ランダムな背もたれの膨らみが面白い椅子が印象的でした。

遊び心たっぷりのグラフィカルなスパでリフレッシュ

地下には、宿泊者が利用できるフィットネスとスパがあります。このふたつは繋がっていて、フィットネスを通り過ぎるとスパがあります。フロントに予約すると夜中でも利用できるのがうれしい。

コンパクトなフィットネスルーム
コンパクトなフィットネスルーム。
サウナルーム
ドライサウナとスチームサウナとシャワーがあります。
スパ
ロッキングチェアも、横に置かれたアメニティーのテーブルセットもかわいい。バスローブも重すぎず薄すぎず肌触りもよかった。
シャワールーム
写真左はシャワールーム 繰り返される幾何学模様がミラノのタイルワークのようです。

カラフルな客室は、モダンとヴィンテージが融合したデザイン

「room mate giulia(ルーム メイト ジュリア)」の客室の第一印象は、カラフルでワクワクする! でした。パトリシア・ウルキオラの考案したカラーパレットは、ミラノの歴史的なものと現代的なもの両側面からインスピレーションを得たものだそう。テラコッタ、ピーチ、くすんだブルー、モスグリーン、ネオンピンク、マスタード、それぞれの色はお互いに調和したり、パンチの効いたアクセントになったりします。

デラックスダブルルームは、サーモンピンク×テラコッタにグリーンが効いたカラースキーム
パノラミックペントハウスは、スモーキーブルーにテラコッタ色が効いたカラースキーム

客室によってカラースキームは異なるのですが、インテリアコーディネートの手法は共通しています。住宅サイズの高さまでは色壁で視覚的に区切り、上部は白いグリッド模様の壁紙で抜け感のある空間に仕上がっています。このひと工夫で、友人の家に遊びにきたような安心感、心地よさを感じられました。

今回泊まったお部屋はスーペリアツインルーム。モスグリーン×オリーブグリーンの色壁にグレー、オレンジや黄色が差し色に効いたカラースキーム。
今回泊まったお部屋はスーペリアツインルーム。モスグリーン×オリーブグリーンの色壁にグレー、オレンジや黄色が差し色に効いたカラースキーム。

壁の上部の見切り部分に効果的に取り付けられた間接照明や、その高さに取り付けられたパイプに革ベルトで吊るされたヘッドボード、パイプから生えてきたような角度自在なベッドサイドランプなどは、無駄がなく機能的でインダストリアルなつくりではありますが、革や真鍮などの素材の力でそこはかとなくファミニンさも感じられます。色壁上部の壁紙とカーテン、ラグはオリジナルのグリッド模様。グリッドのパターンは、ミラノ市の幾何学レイアウトに敬意を表しているとか。

デスクもあり、PC作業も捗ります。コード類の電源もしっかり配備されており、ビジネス利用にもおすすめです。
デスクもあり、PC作業もはかどります。コード類の電源もしっかり配備されており、ビジネス利用にもおすすめです。

これらのベッド、テーブル、ソファ、デスク、キャビネット、バスルーム用の家具、鏡、カーテン等の特注アイテムは、カッシーナ・コントラクトによるもの。その整えられた空間に、さまざまなヴィンテージデザインの家具と、モダンな家具が配置されています。そのインテリア手法は、代々受け継がれてきた家具に、最新のデザインを取り入れて、自分らしさを更新させるミラネーゼらしい手法。パトリシアがミラネーゼの名前「ジュリア」とホテルに名付けたように、コーディネート全体にその精神が行き届いていました。

また、実際に泊まってみて驚いたのは、隅々までとても使いやすいこと。家具配置、収納計画、はもちろん、欲しいところにある各種電源やコンセント、照明などの現代的な生活に対応した気遣いに驚かされます。女性ふたりの利用でも、それぞれのスーツケースを広げられる場所があり、収納もたっぷりとありました。

コンセントや電源周りもテラコッタで囲まれていて、可愛い。
コンセントや電源周りもテラコッタで囲まれていて、可愛い。
ちょっとストールをかけたいところに、クリスタルのような可愛いフック
ちょっとストールをかけたいところに、クリスタルのような可愛いフック
接照明のついたオープンな収納
接照明のついたオープンな収納。インテリア全体で使われている重要なエレメントのパイプは無駄がなく機能的です。ぜひお気に入りのお洋服を使って、インテリアを盛り上げましょう!
室内のスチールラック
バッグや帽子はこちらに収納しました。
冷蔵庫も収納されている、そこはかとなくミッドセンチュリーな印象のスチールラック。
冷蔵庫も収納されている、そこはかとなくミッドセンチュリーな印象のスチールラック。

スモーキーオレンジに黒が効いた機能的なバスルーム

ベッド横のアートが飾られた壁の奥は、スーモキーオレンジ色のバスルーム
ベッド横のアートが飾られた壁の奥は、スーモキーオレンジ色のバスルーム。このカラーコントラストがかわいい。
バスルームの様子
ここでも鏡が、パイプに革ベルトで吊り下げられています。カウンターに据え置くスタイルのボウルが、赤と黒で漆の器のようにも見えました。タイルでグリッドパターンがくり返されています。タイルの端のゴールドの見切りが、洗面台の脚と共に空間にきらりと効いていました。
トイレの便器やビデは、ヨーロッパ最高級の衛生陶器メーカーDURAVIT(デュラビット)製。
トイレの便器やビデは、ヨーロッパ最高級の衛生陶器メーカーDURAVIT(デュラビット)製。タオルウォーマーやシャワールームのガラスドアのスチール部、アメニティーに使われた黒がアクセントに。
ウィットに富んだお喋りなアメニティー類
ウィットに富んだお喋りなアメニティー類。 香りもよく、日本人も好みそうな質感でした。その名も「HEAD CONDITIONAER MADE FROM WABI SABI」!

廊下や居室前のちょっとしたコーナーもかわいい

ブルーラインの廊下
廊下も部屋の色壁と同じようにブルーのラインで、フレーミングされ空間に親密さが感じられます。
廊下のコーナー
廊下のちょっとしたコーナーにもアート飾られ、椅子が置かれ、親しい友人の家に招かれたような心地よさです。
無料貸し出しのモバイルwi-fi
ホテル内だけでなく街中で使えるモバイルWi-Fiを、無料で貸し出ししてくれます。メッセージにキュンとくるキャンディーも街歩きのお供に。

またルームメイトジュリア に泊まりたい!そんな思いにさせてくれる、ファンになる仕掛けがたくさん散りばめられたミラノらしいホテルでした。

問い合わせ先

Patricia Urquiola(パトリシア・ウルキオラ)
女性建築家・デザイナー
1961年、スペイン、オビエド生まれ。マドリード工科大学、ミラノ工科大学で建築を学び、現在はミラノで活動。2001年、自身のスタジオを開設。人間的な温かみにあふれた、パーソナリティーを反映させたデザインワークは、世界中の人々を魅了し続けています。 2015年より、カッシーナのアートディレクターに。ウルキオラのカラースキームと、彼女独特のインテリアコーディネートは、カッシーナ青山で実現できます。
Patricia Urquiola(パトリシア・ウルキオラ)
カッシーナ・イクスシー青山本店 TEL:03-5474-9001

ミラノのカッシーナでパトリシア・ウルキオラとお喋り

パトリシアとの記念撮影
インタビュー撮影の合間に気さくに応えてくれました。

後日談ですが、カッシーナのショールームで新作についてインタビューを受けているパトリシアに、ホテルの心地よさについて話しかける機会がありました(勇気ひとつで憧れのデザイナーとお喋りできるのも、ミラノサローネの最大の魅力!)。

「ローコストでミラノらしいシックなインテリアを設計したのに、立地が便利すぎて宿泊費が高いホテルになっちゃったわ(笑)。でも、ここにいる女性3人はみな東京から、シドニーから、香港から、とミラノデザインウィークに集まってきている、この状況こそI love it!よ」と、チャーミングな笑顔で話してくれました。

この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM
EDIT&WRITING :
土橋陽子