【目次】
【国際山岳デーとは?由来】
■「国際山岳デー」とは?
2003年に国連(国際連合総会)が12月11日を「国際山岳デー」と定めた国際デー(啓発デー)です。英語では[International Mountain Day]と表記、日本語では「国際山の日」とも呼ばれます。
■目的は?
山が生命にとっていかに重要であるかという認識を高め、山岳地域の発展の重要性を唱え、世界中の山岳地帯の人々と環境に前向きな変化をもたらす連携を築くことを目的として制定されました。山での安全を啓蒙する日なのではなく、山がもたらす恩恵や山岳地帯の人々について考え、問題を解決するようはたらきかける日なのです。
■何をする?
食料の安全保障と栄養、作物や家畜、漁業と水産養殖を含む農業、農村開発を進める先導機関である国連食糧農業機関(FAO)が「国際山岳デー」での祝典の準備と推進を行い、世界レベルでの記念行事を主導しています。
山岳地域の発展への関心を高めるため、世界各国でさまざまな行事を行うことが提唱されています。
■2025年「国際山岳デー」のテーマ
2025年の「国際山岳デー」のテーマは、「氷河は山岳地帯とその周辺地域の水、食料、生活にとって重要である」です。山岳地帯が世界の淡水の主要な供給源として果たす重要な役割を強調し、氷河の消失を防ぐための即時の対策を求めます。「山と水、氷河と流域社会」というテーマでにシンポジウムが開かれたり、地域レベルから国際レベルまで各種の啓発活動やイベントが行われます。
【ビジネス雑談にも役立つ「山」の雑学】
■山岳地域が支える「水」「生態」「文化」
高く険しい山々からなり、過酷な環境にある山岳地域は、私たちの暮らしを支えるうえで欠かせない多様な恩恵をもたらしています。その主なものを挙げてみましょう。
・水源の供給
「世界の貯水塔」とも呼ばれる山岳地域。地球上の主要な河川の源流であり、雪や氷河という形で水を貯え、ゆっくりと溶け出すことで安定した水の流れを確保しています。それらは生物を育み、人間の生活用水や農業用水、工業用水などに不可欠。世界の人口の半数近くが、山岳地域からの水に依存していると推定されています。
・多様な生物の宝庫
山岳地域には標高差による多様な気候帯が存在し、独自の生態系と多様な動植物が生息しています。生物多様性のホットスポット(生物多様性が特に高い地域のこと)の多くが山岳地にあり、多くの固有種の生息地でもあります。
・食料と資源の供給
コーヒーやお茶、じゃがいもなどなど、特定の果物や野菜などの重要な農作物の原産は山岳地域です。また、木材や薬用植物などの林産資源、貴金属や鉱石などの貴重な鉱物資源が産出されることも。
・文化的価値、精神的価値とレクリエーション
多くの文化において山は崇拝の対象であり、精神的な中心地といえます。また、美しい景観は観光業やレクリエーション(登山、スキー、ハイキング)の場を提供し、地域を活性化させて経済を支えています。
■温暖化と氷河の減少がもたらす影響
2025年1月21日、世界気象機関(WMO)とユネスコは、地球に不可欠な氷を保護するための世界的な行動呼びかけ「2025国際氷河保全年」を正式に発足しました。
地球の氷河は約70万キロ㎡に及びます。この氷河は世界の淡水の約70%を蓄えていて、私たちにとって氷河がどれほど重要か、氷河の衰退が生命維持に大きく影響することがわかりますね。
そして、現在、急速に氷河が衰退しており、2023年には、過去50年間で最大の質量損失を経験しました。
氷河の衰退・消失は、短期的には「地滑り」「雪崩」「洪水」「干ばつ」の増加に繋がります。そして長期的には、世界の20億超の人々の「水の安全保障」が脅かされることになります。また、氷河という特別な環境で進化を遂げてきた独自の生態系や生物多様性の損失をもたらすことにも。
「2025国際氷河保全年」は、気候を安定させるために温室効果ガス排出を削減し、効果的な適応戦略実施のための緊急かつ野心的な行動が急務であると強調しています。
■心と体を整える「山時間」「森林浴」のすすめ
本格的な登山でなくても、山歩きやハイキングなど、自然豊かな環境に身を置くのは気持ちがいいですね。自然が私たちの心身にもたらす効果、特に森林浴についてまとめてみましょう。
・免疫力アップにつながる
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)という細胞には、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を認識して攻撃するはたらきがあり、自然免疫において重要な役割を果たしています。医学博士で森林医学の第一人者である日本医科大学の李卿教授が中心となって行った研究では、森林浴によって、このNK細胞の活性が高まることが報告されています。
・リラックス効果が高まる
森林と都市の景色を眺めることを比べると、森林のほうが副交感神経の活動が1.5倍増加し、ストレスホルモンは13%減少するのだとか。森林の香りも副交感神経の活動を46.8%増加させるそう!
・土に触れることや自然音にふれることでストレスが軽減
園芸や土いじりなどで土に触れることは、心の落ち着きやストレスの軽減に寄与するとされており、土壌中の善玉菌が、気分を安定させる神経伝達物質・セロトニンの分泌を促す可能性があるとする研究もあります。
また、近年の音響研究では、鳥のさえずりや川のせせらぎといった自然音は、脳のストレス応答を和らげることが示唆されています。
■山での活動で「ハイパーソニック・エフェクト」を!
ハイパーソニック・エフェクトとは、約20kHzという人間の可聴域を超える高周波の音(ハイパーソニック)が、皮膚や身体を介して脳の基幹部(脳幹、視床、視床下部など)を活性化させ、心身によい影響を与えるという現象です。上記でもふれた「聴こえている」と認識できる鳥のさえずりや川のせせらぎなどの音のほか、認識できない超高周波音が基幹脳の血流を増加させるというわけです。
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2025年の「国際山岳デー」は、「氷河は山岳地帯とその周辺地域の水、食料、生活にとって重要である」というテーマを掲げています。山岳地帯は、世界の淡水供給の大部分を担う“自然の水源地”であり、その存在が多くの地域の暮らしや経済活動を根底から支えています。気候変動によって氷河の消失が進めば、私たちの「水」「食」「生活」に深刻な影響が及ぶことは避けられません。
たとえ都市で働き、暮らす日常に山の風景が見えなかったとしても、私たちの生活は静かに、しかし確実に山とつながっています。持続可能な未来に向けて、今、何ができるのか――。「国際山岳デー」は、わたしたちにとっても、日々の選択を見直すきっかけとして、大切な問いを投げかけてくれます。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/国連総合広報センター( https://www.unic.or.jp/ )/一般財団法人環境イノベーション情報機構( https://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=51593&oversea=1 )/環境省( https://www.env.go.jp/nature/nationalparks/pick-up/health/ ) :

















