【目次】

【「電話創業の日」とは?】

■「何日」?

「電話創業の日」は12月16日です。

■「由来」は?

1890(明治23)年の12月16日に、東京市内と横浜市内の間で逓信省(ていしんしょう)が日本初の電話事業を開始し、千代田区に設置された電話交換局が営業を始めました。これを記念して制定されたのが「電話創業の日」です。

※逓信省とは1885(明治18)年に設置された省庁で、郵便・電信・電話・簡易生命保険などに関する行政事務と現業業務を所管していました。1949(昭和24)年に逓信省は廃止され、郵政省と電気通信省に分割されました。なお、電気通信省は1952年に廃止され、その業務は日本電信電話公社(電電公社)へ引き継がれています。


【そもそも電話はどう始まった?「電話」と「通信」にまつわる雑学】

■日本の電話のタイムラインは?

1876(明治9)年 世界初の電話が発明される
アレクサンダー・グラハム・ベルが電話機を発明。翌年にはエジソンが改良型送話器を開発し、実用性が大きく向上しました。

1877(明治10)年 日本へ初導入
日本に電話機が輸入され、研究開発を開始。

1890(明治23)年12月16日 日本での電話事業サービスを開始  →「電話創業の日」
東京〜横浜間で日本初の電話事業が営業開始。

1900年 公衆電話機登場
東京の上野と新橋の駅構内の2か所に、「自働(じどう)電話」と呼ばれる日本初の公衆電話が設置されました。当時の電話はまだ一般家庭には普及しておらず、利用料金も高価だったため、電話自体が富裕層や一部の事業者向けのインフラという側面が強いものでした。

1945年 第二次世界大戦の終結
1030年代後半から1941年ごろは、国内の電話加入数はピークを迎え、約100万~190万回線まで増加しました。人員不足や戦火などの影響で約47万回線へと大幅に減少しましたが、戦後、経済の回復成長にともない、再び増加していきます。

1952年 日本電信電話公社 発足
この年の4月、NTTの前身となる日本電信電話公社(電電公社)が発足。経済復興により電話の需要が急速に高まるなか、電電公社が最初に取り組んだ課題は「すぐつく電話」と「すぐつながる電話」でした。

1984年 日本で学術ネットワークが構築される

電話回線を利用し、東京大学、東京工業大学、慶應義塾大学などが相互にネットワークを結び、日本におけるインターネットの基礎が築かれました。

1985年 NTT設立 
通信が自由化され、「日本電信電話株式会社法」により日本電信電話公社が民営化。日本電信電話株式会社(NTT)が設立されます。

1987年  日本初の携帯電話機が発売される

日本ではじめて、ハンディタイプの携帯電話機が発売されました。カバンのような大きさで肩掛けベルトがあり、重さは約3kgもありました。

1992年 インターネット商用利用スタート
日本で初めてのインターネットサービスプロバイダ(ISP)がサービスを開始。家庭や企業でのインターネット利用がはじまります。

2001年 フレッツ光提供開始
NTT東日本が、光ファイバーを利用してインターネットに高速で接続するサービス「Bフレッツ」の提供を開始しました。

2008年 スマホ時代の到来

「iPhone 3G」が発売され、スマートフォンが一般にも広がり始めました。携帯電話は、音声通話を中心とした端末から、インターネットやアプリを利用できる多機能端末へと進化。通信インフラも3Gを基盤に高度化が進み、電話の役割が大きく変わり始める転換点となりました。

2010年代 「電話をかけない時代」へ

スマートフォンの普及により、電話は「かけるもの」から「必要なときだけ使うもの」へと変化しました。LINEやメール、SNSの普及によって、日常的な連絡手段は文字やスタンプが主流に。「電話が鳴る=緊急事態」と感じる人も増え、電話の意味そのものが変わっていきました。かつて1990年代後半に6,000万件超あった固定電話の加入契約数も、スマートフォンの普及に伴って急激に減少。2025年度では、およそ 1,250万〜1,360万件台と報告されています。2020年代半ばには1000万台前後まで縮小しました。

2020年代〜 電話は、もう「電話」じゃない

5GやAIの進化により、通信は人と人をつなぐだけでなく、人とシステム、都市、医療、防災を結ぶ社会インフラへと役割を広げています。

たとえば、スマートフォンは通話端末であると同時に、キャッシュレス決済や本人認証の手段となり、日常の支払いを支える存在になりました。また、医療分野ではオンライン診療や遠隔医療が進み、通信を通じて医師と患者が場所を選ばずにつながる仕組みが整いつつあります。さらに、防災の分野では、緊急速報や災害情報の一斉配信によって、通信が命を守る役割を担う場面も増えました。

電話はもはや「声を届ける道具」ではなく、姿を変えながら、私たちの生活の裏側を静かに支え続けているのです。

■「電話創業の日」当時の電話の状況は?

1890年に東京−横浜間で電話が開通した当初の加入者数は、 東京が155台、横浜でおよそ44台だったそうです。これに対し、千代田区の電話交換局では、女性7名、夜間専門の男性2名が交換手として対応していました。 

利用料金は定額制で、東京が40円、横浜が35円。当時は「1円で米が15kg買えた」とされており、現在の米価(2025年11月末現在、5kgあたり約4,335円)で換算すると、東京は約52万円、横浜は約46万円に相当します。富裕層に向けられた、特別なインフラサービスだったことがわかりますね!

当時の電話交換手の仕事は、電話局内にある交換台に待機して、一組の電話プラグを適切なジャックに差し込むことで電話の回線を接続し、通話できるようにすることでした。つまり、通話の際は、現在のように相手に直接ダイヤルするのではなく、まず交換手につないでから、彼らが回線を手でつないでいたのです。

■黒電話の仕組みが知りたい!

黒電話とは、主に昭和の時代に日本の家庭や職場で使われていた、黒色のダイヤル式固定電話のこと。受話器と本体がコードでつながり、番号をかける際は、円盤状のダイヤルを指で回して操作するのが特徴でした。

こちらがベーシックな「黒電話」。覚えていますか? 懐かしいーー!と感じる人もいるかもしれませんね。

日本の電話機が、ダイヤル式からボタン式のプッシュホン(トーンダイヤル式)への移行が始まったのは、1960年代後半から。一般家庭への普及は、1980年代から1990年代にかけて、急速に進みました。「ダイヤル式」だった時代、電話はどのようにつながっていたのでしょうか? 具体的に動作の流れから説明しましょう。

1)ダイヤルを指で回す。
2)指を離すと、ダイヤルがバネの力で「ジーッ」と戻る。
3)この戻る過程で 回数分だけ接点が断続(パルス) する。
4)電話局の自動交換機がその回数を読み取り、番号として理解する。

つまり、ダイヤルをひとつの数字分回すと、その数字の回数だけ「クリック」(断線)が電話局に送られ、自動交換機がその回数を読み取って、番号として理解していたのですね!

■今でも「黒電話」は使えるの?

答えは、「条件付きですが、使えます」。

現在、家に固定電話を契約しており、その電話サービスが「ダイヤル回線(回転パルス方式)」であることなど、いくつかの条件を満たしていれば、今でも通話は可能です。「黒電話」の利点を挙げると…

・停電・災害対策として。黒電話は電源不要。
・インテリア性 レトロなインテリアとしても楽しめる。

あくまで「ダイヤル回線」であることが前提条件です。さらに「ダイヤル回線」は「プッシュ回線」より発信に時間がかかるため、利便性では劣ることを念頭に置いてくださいね。

■かつて、個人の電話番号は公開されていた!

黒電話とともに、懐かしいものとして「電話帳」がありました。日本で最初の「電話帳」が発行されたのは、電話創業の年である1890(明治23)年です。初版は一冊の厚い本ではなく、「電話加入者人名表」と呼ばれた、たった1枚の紙で、番号順に加入者名(住所なし)が縦書きで並んでいただけだったそうです。 この名簿には、1番が東京府庁、そのほか官庁・銀行・新聞社などが並び、著名な実業家や政治家も登録されていました。

その後、1951年には「職業別電話番号簿」と「人名別電話番号簿」に分かれ、さらに1971年に「電話帳」と改称されました。「個人名+電話番号」が載る電話帳は「ハローページ個人名編」と呼ばれ、「職業別電話番号簿」は後に タウンページ と呼ばれるようになりました。

「ハローページ個人名編」は、2021年10月発行分をもって「最終版」 とされ、以降、新しい個人名入りの電話帳は配布されていません。それ以前は、多くの人にとって「公共の電話帳に氏名と電話番号を公開するか/しないか」は、選択可能なシステムとして機能していたのです。公開を止めたのは、スマートフォンの普及や個人情報保護の意識の高まりが影響していたと考えられます。

昭和の時代では、自分の家の固定電話番号が電話帳に掲載されているのは、ごく当たり前のことでした。今振り返ると、情報の扱いに対する感覚が、ずいぶんとおおらかな時代だったことがわかります。

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1890(明治23)年に始まった日本の電話の歴史は、「交換手が手で回線をつなぐ」時代から、21世紀の「スマートフォンで世界とつながる」時代まで、約130年で劇的な進化を遂げました。「電話創業の日」をきっかけに通信インフラの黎明期を振り返ると、技術の発展そのものだけでなく、その恩恵を私たちが当たり前のように使えていることの尊さにも、改めて気付かされます。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /NTT東日本の歴史(https://www.ntt-east.co.jp/recruit/mid-career/about/history.html?utm_source=chatgpt.com) /NTT技術資料館(https://hct.rd.ntt/index.html) /NTT西日本「電話帳の主な歴史(https://www.ntt-west.co.jp/info/databook/pdf/072_denwachorekishi.pdf?utm_source=chatgpt.com) :