【目次】

【「デパート開業の日」とは?】

■「いつ」?

12月20日です。

■「何を記念した日」?

「デパート開業の日」は、1904(明治37)年の12月20日に、東京・日本橋の三井呉服店が「三越呉服店」に改称し、日本で初めてデパート形式の営業を開始したことにちなんだ記念日です。

1904年12月20日、三越呉服店は全国の顧客・取引先へ「デパートメントストア宣言」を記載したご挨拶状を発送し、翌1905(明治38)年の年頭1月2日に全国の主要新聞紙上で発表。ここから日本におけるデパート(百貨店)の歴史が始まりました。そして、この宣言が送付された12月20日が「デパート開業の日」とされています。ただし、三越伊勢丹ホールディングスの公式ホームページには「デパート開業の日」という記載はありません。そのため、誰がこの記念日を制定したのかは不明です。

2024年には「デパートメントストア宣言120周年」を迎え、日本橋三越本店では様々な企画やイベントが行われました。


【日本の百貨店の始まりと発展の歴史など…ビジネストークが盛り上がる雑学】

■そもそも「デパート」って何?

「デパート」は「デパートメントストア[department store]」を略したいわゆるカタカナ語で、「百貨店」と訳されました。「百(多くの)貨(商品)を扱う店」という字の通り、衣食住全般にわたる多種類の商品を陳列し、主として対面販売を行う、大規模な小売店を意味しています。

三越呉服店が1904年に「デパートメントストア宣言」を行った当時、日本の買い物は、魚は鮮魚店、衣料品は呉服店というように、商品ごとに専門店を訪れるスタイルが一般的でした。なかでも衣料品を扱う呉服店では、畳に座り、店員が品物をひとつひとつ見せる「座売り」と呼ばれる販売方法が主流でした。こうした時代に、欧米式の陳列販売を取り入れ、幅広い商品を扱う営業形態へ転換したことは、革新的な出来事だったのです。

■「三越」のスタートは「呉服店」だった

「三越」の原点は、1673(延宝元)年に三井高利が創業した「越後屋」に遡ります。時の将軍は徳川家綱です。この屋号は、高利の祖父の時代まで「越後守」を名乗る武士であったことに由来します。当時の人々からは「越後さんの店」と呼ばれていました。

その後、三井家の姓を取った「三井呉服店」となり、1904年に、「三」と「越」を取って「三越呉服店」となり、「三越」に。1683年には、「店前現銀無掛値」(たなさきげんきんかけねなし)というスローガンを掲げ、当時としては画期的な正札販売を実現し、当時富裕層だけのものだった呉服を、広く一般市民のものにしました。

1950年から今日に至るまで使用されている紅白の包装紙は「華ひらく」という名前がついてます。当初はクリスマス用の包装紙として使われていました。デザインは洋画家・猪熊弦一郎氏。好評を博したため、翌年の中元から、常時使用するようになりました。この包装紙に使われている英字のMitsukoshiのロゴは、当時宣伝部に在籍していた漫画家のやなせたかしさんによるものです。

■老舗デパートといえば…?

ほとんどの有名デパートは、江戸〜明治期に呉服商として創業したのち、扱う商品を増やし、定価販売・多種商品取り扱いという近代百貨店の形に進化しています。有名デパートの創立年、創業地をご紹介しましょう。

松坂屋(Matsuzakaya)    
1611年名古屋で呉服店として創業。明治期〜大正期に百貨店化。日本最古級の歴史をもつ。

三越(Mitsukoshi)    
1673年に越後屋として創業。1904年に百貨店として「三越百貨店」に改称。「近代百貨店の先駆け」とされる。2008年に、三越伊勢丹ホールディングス設立。

大丸(Daimaru)    
1717年に京都の伏見で古着商「大文字屋」として創業。 明治期に近代化・多角化を果たす。現・大丸松坂屋百貨店傘下。

高島屋(Takashimaya)    
呉服商として1831年に京都にて古着木綿商として創業。 明治〜大正期に百貨店化 。

松屋(Matsuya)    
1869年に東京・銀座にて創業。同時期に百貨店的業態に発展。現在の「松屋銀座」は旗艦店として、銀座のランドマーク的存在となっている。

阪急百貨店(ankyu)    
阪急阪神百貨店グループ創業は1907年。前身は阪神電鉄。百貨店は1929年に梅田本店として開業。 鉄道会社が展開したターミナルデパートのアイコン。

■日本で初めてエレベーターを設置したデパートは?

三越です。明治末期の三越本店に設置されたもので、当時は「昇降機」と呼ばれました。

■日本で初めて「食堂」をつくったデパートは?

三越本店で、1907(明治40)年のことでした。当時、「特別食堂」として開業し、現在のデパート食堂文化の起源とされています。欧米型のショーウィンドーを導入し、街の景観を変えるような新風を巻き起こしたのも、三越でした!

■日本初のターミナルデパートは?

阪急百貨店です。1929年に、日本で初めて「駅直結」の百貨店として誕生。鉄道会社が手掛けるデパートの先駆けです。

■「デパ地下」っていつからあるの?

ご存知「デパ地下」とは、「デパートの地下食品売場」を略した言葉です。この「地下食品売場」が誕生したのは、戦後〜高度成長期以降(1950年代~1970年代)とされています。この時期、都市住民の生活スタイルが変わり、「日常の食材・お惣菜・グルメ需要」が高まったことが背景にあるといわれています。百貨店の新館や新設フロアの増築とともに地下食品売場が増え、惣菜・弁当・高級食材・洋菓子など、多彩な商品が並ぶようになりました。

「デパ地下」という言葉が普及したのは、1990年代後半から。東京都渋谷の東急百貨店東横店地階食品フロアが改装され、2000(平成12)年に誕生した「東急フードショー」が雑誌などに取り上げられたことが一般に広まるきっかけになったといわれています。

東急百貨店東横店は渋谷駅周辺の大規模再開発のため、2020年3月31日に百貨店としての営業を終了しましたが、地下1階の食品売場の一部は「東急フードショーエッジ」として営業を継続しています。

■食品売り場はなぜ地下につくられた?

地階に食品売場が設けられる理由はいくつかあります。
・冷蔵施設、水道、ガスなどの配管設置面での合理性
・においや水が漏れても他のフロアに影響しにくい
・地下駐車場から頻繁に行われる、商品の搬出入が容易なこと

また、多くの買い物客は上層階で買い物をし、帰りぎわに食品売り場を訪れるため、出口に近い地階のほうが便がよかったのですね。地下鉄などからの入店客や、食料品目当ての来店客にとっても、上層階にあるよりも地階のほうが、利便性は高そうです! 

■かつてデパートの屋上には「遊園地」があった!

かつてデパートの屋上にあった遊園地は、昭和の子どもにとっては「街でいちばん身近な遊園地」でした。ミニ観覧車・豆汽車・ゲームコーナー・動物コーナーなどがあり、家族連れの集客装置として大きな役割を果たしました。起源は100年以上前までさかのぼり、1903年に東京・日本橋の白木屋に木馬やシーソーが置かれたことが始まりとされています。

屋上遊園地が最も多くつくられたのは、1950年代〜1970年代前半。戦後の高度経済成長期に、全国の百貨店がこぞって屋上に遊園地をつくり始めたのです。当時は子ども向け娯楽施設が都市中心部に少なかったため、家族連れの集客に非常に効果的でした。通常、屋上は「使われていない空間」のため、遊具の設置が比較的容易だったとことも、遊園地設置の理由のひとつ。最盛期には全国の多くのデパートに屋上遊園地がありました。

現在では、少子化やテーマパークの登場、レジャーの多様化、安全面の基準の厳格化などの理由により、ほとんどの屋上遊園地は姿を消してしまいました。朝日新聞の調査では、2023年の時点で営業を続けている屋上遊園地は、松坂屋高槻店など、4店舗のみです。

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日本に初めてのデパートが誕生してから、すでに120年以上――。昭和の時代まで、デパートは「街のレジャー施設」として、最先端のファッションや文化、トレンドを発信する場として、多くの人に親しまれてきました。

今では、ラグジュアリーブランドの路面店やオンラインショッピングが身近になったことで、買い物のスタイルは多様化しましたが、選び抜かれた商品や一流のサービスを一度に体験できる場所として、デパートの価値はますます際立っています。

たとえば、複数のブランドを比較しながらゆっくり買い物ができるフロア構成や、信頼できる接客、季節感のある美しいディスプレイ。歩き疲れたらティーラウンジでひと息、ランチやディナーを楽しんだり、帰りにデパ地下で上質な惣菜やスイーツを選んだり――。“時間の質”まで満たしてくれるのは、デパートならではの魅力です。

今も昔も、ライフスタイルにこだわる大人世代にとって、デパートは心強い味方。日々忙しく働くなかでも、ふと立ち寄るだけで、暮らしに心地よい刺激と余白をもたらしてくれます。

※高島屋の【高】は「はしごだか」が正式表記です。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社)/三越伊勢丹ホールディングス「三越のあゆみ」(https://www.imhds.co.jp/corporate/business/history/history-mitsukoshi.html) /PRTIMES「株式会社三越伊勢丹ホールディングス」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002708.000008372.html) /繊研新聞社「今日は何の日?】12月20日 デパート開業の日」(https://senken.co.jp/posts/anniversary-1220) /朝日新聞「消えゆくデパートの屋上遊園地」(https://www.asahi.com/articles/ASRC25R9CRBTPTIL001.html) :