2009年のエミー賞14部門、ゴールデングローブ賞3部門ノミネートのTV映画『INTO THE STORM』は、第二次世界大戦中のウィンストン・チャーチルを描いた人間ドラマである。1940年からの5年間、地球の命運を握っていたともいえるこの古狸の私生活がたっぷりでてくるところがぼくは気に入っている。

敵も呑むが酒も呑む。チャーチルの優雅なる賭け

英国を勝利に導いた偉大なる指導者

『INTO THE STORM』。2009年、アメリカのケーブルテレビHBO製作のテレビドラマ。第二次世界大戦下のチャーチル像を描いたエミー賞受賞作品。ブレンダン・グリーソンがチャーチルを熱演。残念ながら日本語版の販売はなく、アマゾン等でゲットするしかない。

チャーチルといえば葉巻に蝶ネクタイ、ホンブルグハットにステッキという、英国紳士的なスタイルで知られている。天性の演説家であり、歴史家、ノーベル賞作家にして風景画家と文句のつけようがない才能の持ち主なのだが、ぼくの目につくのは、この男の非英国的なワガママぶりなのである。

たとえばその恐るべき酒の呑み方。首相番執事達の証言を集めると、ダウニング街10番地での彼のドリンキング・ライフはかようなものだ。

朝食後すぐにウイスキーのソーダ割り、昼飯にはシャンパン、午後またウイスキー、夜はシャンパン、ワイン、ポルト、コニャックというフルコースで、血中アルコールが途切れるということがない。あ、そうそう、これに、キューバンシガーを8本から10本。2時間の昼寝まで挟むのだ。

サイレンスーツと命名されたターンブル&アッサー特注のオーバーオールに身を包み、南仏でも憚られるような享楽生活を空襲下のロンドンで送っていたのである。スパイ報告でそれを知ったヒトラーは、ざけんなよとぶちきれたのであった。

おもしろい。おもしろいではないですか。ひとつ間違えれば国を危うくするという瀬戸際にあっても、自分
のスタイルは断固貫く、という巨大な自意識。しかしチャーチルの場合、ヒトラードイツを壊滅することでおのれのワガママを世間に納得せしめたのである。

伊達男のことを書けと言われて、ぱっとチャーチルの顔が浮かんだのは、ぼくが伊達と思うような男には、象徴的な意味で、チャーチルのように「よく言うし、よくやる」タイプという共通点があるからである。どんなカッコよさもカッコいい人生にはかなわない。アクションはファッションを凌駕がするのだ。

Sir Winston Churchill
(サー・ウインストン・レナード・スペンサー・チャーチル)
1874年生まれ。1940年から45年、第二次世界大戦下のイギリスを率いた第61代、第63代首相。イギリスを勝利に導いたリーダーとして現在も絶大な人気を誇る。ノーベル文学賞を受賞していることは意外と知られていない。写真:Universal Images Group/アフロ

※2010年春号取材時の情報です。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2010年春号シネマの中の伊達男たちより
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WRITING :
林 信朗
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