ジェームズ・ボンド映画のファッションの魅力は、もちろん、スーツスタイルだけではない。ここでは、それらについて述べていこう。

スタイルと任務を全うするボンドの持ち物

英国きっての洒落者のフレミングも認める名品アタッシェケース

男は本来、鞄を持つのは無粋。そんな男の美学を熟知し尽くしたイアン・フレミングが原作のなかでボンドの秘密兵器として選んだのがスウェイン・アドニーのアタッシェケース。つまりこの鞄は英国きっての洒落者の認めた男の鞄の最高峰。ボンドのように颯爽と持ちこなしたい。(ヴァルカナイズ・ロンドン〈スウェイン・アドニー〉)※参考商品
男は本来、鞄を持つのは無粋。そんな男の美学を熟知し尽くしたイアン・フレミングが原作のなかでボンドの秘密兵器として選んだのがスウェイン・アドニーのアタッシェケース。つまりこの鞄は英国きっての洒落者の認めた男の鞄の最高峰。ボンドのように颯爽と持ちこなしたい。(ヴァルカナイズ・ロンドン〈スウェイン・アドニー〉)※参考商品

アタッシェケースは第2作の『ロシアより愛をこめて』で登場したボンド映画初の秘密兵器だ。原作(小説の邦題は『ロシアから愛をこめて』)でも同じく秘密情報部のQが用意した特殊装備として登場し、映画では原作の銃弾やナイフや金貨に加え、組み立て式の暗視スコープ付き狙撃ライフルと催涙ガスが加えられた。

原作では「スウェイン・アンド・エドニー製」と書かれている。同映画の公開により上質なレザーのアタッシェケースがステータスシンボルとなった。

かつての男の格好よさの象徴であったツバの短い中折れ帽

シャープなスーツでソフト帽をかぶったボンドは当時の男の憧れだった。しかし時代が変わり、ボンドもソフト帽をかぶらなくなり、オープニングアイコンの銃口からのぞいたボンドも無帽になった。だがだからこそ、ソフト帽の時代のボンドが格好よく思える。そういう男は多いのではなかろうか。ハット(ザジェネラルストア〈ジェームズ ロック〉※参考商品
シャープなスーツでソフト帽をかぶったボンドは当時の男の憧れだった。しかし時代が変わり、ボンドもソフト帽をかぶらなくなり、オープニングアイコンの銃口からのぞいたボンドも無帽になった。だがだからこそ、ソフト帽の時代のボンドが格好よく思える。そういう男は多いのではなかろうか。ハット(ザジェネラルストア〈ジェームズ ロック〉※参考商品

ソフト帽も当時の男たちを魅了したボンドスタイルだ。秘密情報部の上官のMと会う際に、秘書のマネー・ペニーのいる前室のドアの隙間からコートかけにソフト帽を投げる所作が洒落ていた。

ソフト帽はツバの小さな英国調。第1作からの有名なオープニングアイコンである、銃口からのぞいたボンドが銃を撃つ映像でも、初期のボンドはツバの小さなソフト帽をかぶっている。

英国の老舗の逸品ポロがボンドスタイルに最良

本文中でも述べているが、ボンドのポロシャツは原作では「シーアイランドコットンのシャツ」と書かれている。そして映画ではロングポイント襟の3ボタンである。となれば、そのままの素材とデザインであるのがジョンスメドレー。洒脱なボンドスタイルを気どるには最高の選択である。ポロシャツ(リーミルズ エージェンシー〈ジョン スメドレー〉)※参考商品
本文中でも述べているが、ボンドのポロシャツは原作では「シーアイランドコットンのシャツ」と書かれている。そして映画ではロングポイント襟の3ボタンである。となれば、そのままの素材とデザインであるのがジョンスメドレー。洒脱なボンドスタイルを気どるには最高の選択である。ポロシャツ(リーミルズ エージェンシー〈ジョン スメドレー〉)※参考商品

ポロシャツも第1作から登場するボンドの重要なファッションだ。小説ではたびたび「濃紺のシーアイランドコットンのシャツ」として書かれていて、映画ではロングポイント襟で3ボタンの英国スタイルの長そでにされた。その黒色は夜に敵地に忍び込むときのボンドのユニフォームにもなっている。

英国カントリースタイルにジャストマッチのスエードチャッカブーツ

茶のツイードに茶のウールスラックスの組み合わせ。ジャケットはいつものサイドベンツではなくセンターベントで、スラントポケット。ポケットチーフはなし。英国カントリースタイルの典型だ。そしてその足元には、茶スエードのチャッカブーツがぴったりなのである。(渡辺産業プレスルーム〈チャーチ〉)※参考商品
茶のツイードに茶のウールスラックスの組み合わせ。ジャケットはいつものサイドベンツではなくセンターベントで、スラントポケット。ポケットチーフはなし。英国カントリースタイルの典型だ。そしてその足元には、茶スエードのチャッカブーツがぴったりなのである。(渡辺産業プレスルーム〈チャーチ〉)※参考商品

茶のスエードのチャッカブーツは、古くからのボンド映画ファンには印象深いアイテムだろう。この靴は第3作の『ゴールドフィンガー』のゴルフ場のシーンで登場する。

原作には書かれていないが、映画のボンドの茶のツイードジャケットと茶のウールスラックスという英国カントリースタイルにぴったりだ。またラバーソールであるのも、このシーケンスに続くカーアクションでのボンドの巧みなドライビングにいっそうの真実味を与えている。

フレミングの原作を忠実に守ったボンド好みの靴

映画の中の靴を確認するのは難しいが、初期2作ではボンドはひも靴のよう。そして『ゴールドフィンガー』の有名なレーザー光線の処刑シーンの足元アップで、サイドエラスティックを確認できる。また続く『サンダーボール作戦』でも、黒ポロに黒スラックスの着こなしで同靴を確認できる。(ビームス ハウス 丸の内〈ジョージ クレバリー〉)※参考商品
映画の中の靴を確認するのは難しいが、初期2作ではボンドはひも靴のよう。そして『ゴールドフィンガー』の有名なレーザー光線の処刑シーンの足元アップで、サイドエラスティックを確認できる。また続く『サンダーボール作戦』でも、黒ポロに黒スラックスの着こなしで同靴を確認できる。(ビームス ハウス 丸の内〈ジョージ クレバリー〉)※参考商品

黒のサイドエラスティックシューズもボンドスタイルの象徴だ。いうまでもなく英国ではひも靴が正式だが、小説第3作の『ムーンレイカー』でモカシンが登場するなどボンドの靴ひも嫌いが仄めかされ、'63年出版の第10作『女王陛下の007』で「彼は靴ひもが大嫌いだった」と書かれた。

そのためか映画は当初はひも靴だったが、'64年公開の『ゴールドフィンガー』でサイドエラスティックの黒靴が選ばれた。それが前記のアンソニー・シンクレアの細身のスーツにシャープにマッチしたのだ。なお小説の『ロシアから愛をこめて』にはボンドのプロフィールとして「靴先に鋼鉄を仕込んだ靴を常用」と書かれている。

※2012年冬号取材時の情報です。
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