今さら聞けない機械式腕時計用語、トゥールビヨンって何？

ムーンフェイズ、パーペチュアルカレンダー、レトログラード、トゥールビヨン。機械式腕時計に興味があれば一度は聞いたことのある専門用語だが、内容を正確に説明するのはなかなか難しいもの。ここでは、機械式時計をより深く知るためのキーワードを４つ紹介したい。フランク ミュラーやジャガー・ルクルトをはじめとした最高級の機械式時計だからこそ、複雑機構の価値がより高まるのである。学べば学ぶほど奥深い機械式時計の世界。オタクになれとは言わないが、多少の基礎知識を持っていたほうが、機械式時計をより楽しむことができる。知っているようで知らないコンプリケーション用語を解説しよう。

月の満ち欠けを教えてくれるムーンフェイズ

「ムーンフェイズ」（月齢）を表示するのがこの機構の役割だ。月齢は、潮の満ち引きと関係が深いため、古いにしえの船乗りたちにとって月齢を読み解くことは、航海の安全を意味した。月は地球を29日12時間44分３秒で一周する。そのため、ムーンフェイズには、24時間計とは異なる動きをする独立したメカニズムが必要。ロマンティックなデザインも人気の理由だ。

個性的デザインが、さらに華やかに
フランク ミュラー『ヴァンガード ムーンフェイズ』

ラグまで一体化したケースのダイナミックさが魅力のヴァンガード。美しい流線型のトノウ型ケースにビザン数字。ブランドのアイデンティティをふんだんに盛り込みつつ、ムーンフェイズのクラシカルかつ繊細な雰囲気がダイヤルに華やかさをプラスする。●自動巻き　●18Kピンクゴールド×クロコダイル＋ラバーストラップ　●ケースサイズ／42.3×32㎜　価格未定（お問い合わせ　フランク ミュラー ウォッチランド東京）※発売時期未定

月の満ち欠けに 宇宙のロマンを感じる
ジャガー・ルクルト 『マスター・ ウルトラスリム・ムーン』

現代において、ムーンフェイズを実用的に使うという人は少ないだろう。だが、デザイン的な美しさは、他の複雑機構に勝るとも劣らない。時計を知り尽くしたジャガー・ルクルトらしい気品あふれる一本は、シンプルな文字盤にムーンフェイズを配置すると、格別のロマンを感じさせるということを教えてくれる。●自動巻き　●18Kホワイトゴールドケース×アリゲーターストラップ　●ケース径／39㎜　¥2,050,000（お問い合わせ　ジャガー・ルクルト）

４年に１度のうるう年も自動的に調整する
パーペチュアルカレンダー

コンプリケーションの中でも高い技術を要するパーペチュアルカレンダー（永久カレンダー）。その名のとおり、一度時間をあわせれば、各月の日数の違いや４年に１度のうるう年も間違えることなく正しく表示する。デジタルならあたりまえのことだが、それを歯車を組み合わせて実現するには、とてつもなく高度な技術が必要なことは理解できるだろう。

実用的で手が届くハイコンプリケ－ション
IWC『ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー・クロノグラフ』

４つのサブダイヤルに８本の針とひとつの窓で、年月日、曜日、時間を表示し、さらにクロノグラフとムーンフェイズも搭載。文字盤にあふれる情報を丁寧に整理し、さらに立体感のあるデザインにしたことで、高い視認性を確保。これだけ上質なハイコンプリケ－ションが500万円以下。アクセシブルな価格設定が素晴しい。●自動巻き　●ステンレススティールケース×アリゲーターストラップ　●ケース径／43㎜　¥3,380,000（お問い合わせ　ＩＷＣ）　ジャケット￥247,000・シャツ￥54,000・タイ￥23,000・チーフ￥6,000（お問い合わせ　コロネット〈ブリューワー〉）

扇型に動いた針が 跳ねるように戻る
レトログラード

扇形に針が進み、表示盤の最後まで行くと針が跳ねるようにもとに戻る機構。秒針や分針、日付などさまざまな表示に用いられる。見ているだけで楽しく、動きにおける装飾的な意味合いの強い機構だが、跳ねた針をいかに素早くかつ、小さい衝撃でもとの位置に戻せるかなどの課題がある。故障につながる可能性も高く、搭載するには高い技術力が必要だ。

使い勝手まで考え抜いた老舗ブランドの複雑時計
ヴァシュロン・コンスタンタン
『パトリモニー・ムーンフェイズ＆ レトログラード・デイト』

ミニマルなデザインの中に、ヴァシュロン・コンスタンタンらしい技術が凝縮されている。ムーンフェイズとレトログラード日付表示というふたつのコンプリケーションを搭載。リューズひとつで時刻を含めた３つの表示をすべて調整できるというのもかなりハイレベルな機構だ。●自動巻き　●18Kホワイトゴールドケース×アリゲーターストラップ　●ケース径／42.5㎜　¥4,400,000（お問い合わせ　ヴァシュロン・コンスタンタン）※今夏発売予定

重力の差を克服しより正確に時を刻む
トゥールビヨン

ブレゲの創始者、アブラアム=ルイ・ブレゲの発明とされるトゥールビヨンは、時計の姿勢差による重力の違いを克服し、より精度を高めるための機構。その製作は繊細で難度が高いため、トゥールビヨンモデルは必然的に高額となる。現在は、ダブルトゥールビヨンやフライングトゥールビヨンなど、より精度を高めるための発展形も生まれている。

すべてを詰め込んだ複雑機構の集大成
A.ランゲ＆ゾーネ『トゥールボグラフ・パーペチュ アル プール・ル・メリット』

超複雑時計のコレクション『プール・ル・メリット』シリーズの第５作。トゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、スプリットセコンド・クロノグラフを搭載し、ムーブメントの動力機構に繊細なチェーンフュジー（鎖引き）を採用。最高峰ブランドが自らの最高レベルの技術を注ぎ込んだ渾身の一本。●手巻き　●プラチナケース×手縫いアリゲーターベルト　●ケース径／43㎜　参考価格€480,000（お問い合わせ　A.ランゲ＆ゾーネ）※世界限定50本

超複雑機構でも美しさを追求する
ブレゲ『マリーン エクアシオン マルシャント 5887』

装飾も美しい均時差表示と永久カレンダー、トゥールビヨンの超複雑時計。ゴールドの太陽モチーフを配した針で真太陽時を表示し、ふたつの窓は、月とうるう年表示（１－２時位置）、曜日（10－11時位置）を示す。日付は中央のレトログラードで表示するなど、さまざまな表示は見ていて飽きることがない。●自動巻き　●プラチナ950ケース×アリゲーターストラップ　●ケース径／43.9㎜　予価¥24,940,000（お問い合わせ　ブレゲ ブティック銀座）※今夏以降発売予定

遊び心だけではない本格トゥールビヨン
ルイ・ヴィトン『エスカル スピン・タイム ブルー センター トゥールビヨン』

12個の回転するキューブによる時刻表示は、ルイ・ヴィトンらしい遊び心の表れ。V字型のブリッジの下に収められているのは、フライングトゥールビヨン。１分で１回転するその精緻な動きは、遊び心だけではないこの時計の本格派としての矜持を伝えてくれる。●自動巻き　●チタニウム＋プラチナケース×アリゲーターストラップ　●ケース径／41㎜　¥14,200,000（ルイ・ヴィトンクライアントサービス）※９月発売予定

クラシックカーのような美しさと力強さ
ラルフ ローレン『RL オートモーティブ トゥールビヨン』

ラルフ・ローレン氏は、この時計の着想を愛車の1938年型ブガッティ『タイプ57SC アトランティッククーペ』から得た。ブラックを基調にし、木製のベゼルは自動車のステアリングをイメージしたという。トゥールビヨンモデルでもそのパワフルかつエレガントな魅力はまったく失われていない。●自動巻き　●ブラックステンレススティールケース×アリゲーターストラップ　●ケース径／44.8㎜　¥6,730,000（お問い合わせ　ラルフ ローレン）

誰かに話したくなる、機械式時計用語はいかがでしたか？ 腕時計談義に花を添えるうんちくの数々。購入の際はここで得たうんちくを披露しスマートな時計ライフをお送りください。

※価格はすべて税抜きです。※価格は2017年秋号掲載時の情報です。