ヴァン クリーフ&アーペルが『ロミオ&ジュリエット』をテーマにした新作コレクションを発表

バンジャマン・ミルピエは、ニューヨーク・シティ・バレエ団でダンサーとして名を馳せたのち、現在は振付師、映画監督として活躍しています。映画『ブラック・スワン』(2010年)の振り付けをしたことでダンス・ファン以外にも広く知られるようになり、この映画がきっかけで主演のナタリー・ポートマンと結婚しました。

彼はまた、さまざまな分野から人材を集めてパフォーマンスを通じてダンスの境界線を押し広げることを目的とした革新的なダンスカンパニー、L.A.ダンス プロジェクトを創設。ヴァン クリーフ&アーペルはL.A.ダンス プロジェクトを支援しています。

ヴァン クリーフ&アーペル新作発表の会場には、『ロミオ&ジュリエット』の世界が広がっていました。

ドローイングも大切な役割を果たしています。アーティストは、ロレンツォ・マトッティ。ヴァン クリーフ&アーペルからの依頼でストーリーをドローイングで表現しました。

ヴェローナの貴族の館のようなイメージの会場。
ヴェローナの貴族の館のようなイメージの会場。
マトッティのドローイングが会場やカタログを飾っていました。
マトッティのドローイングが会場やカタログを飾っていました。

カラージェムに意味が込められていた、物語を表現する100以上のピース

新作コレクション『ロミオ&ジュリエット』は100以上のピースからなります。物語のシーンがジュエリーで表現されるというラグジュアリーな夢の世界です。

カラージェムにはそれぞれ意味が込められています。ロミオのモンタギュー家とジュリエットのキャピュレット家を赤と青で、さらに赤と青が融合したモーヴ色をふたりの永遠の愛の色、グリーンを希望として表現しています。

このコレクションを象徴するクリップ。ホワイトゴールド、ローズゴールド、イエローゴールド、ルビー、サファイアなど多種のジェムを使い、写実的にロミオとジュリエットを表現。
このコレクションを象徴するクリップ。ホワイトゴールド、ローズゴールド、イエローゴールド、ルビー、サファイアなど多種のジェムを使い、写実的にロミオとジュリエットを表現。
「夜通しざくろの木で啼いている 信じて あなた あれはナイチンゲールの声よ」というジュリエットの科白から、ざくろモチーフをローズゴールド、ガーネット、サファイア、ダイヤモンドなどで解釈した「グレナータ」クリップ。
「夜通しざくろの木で啼いている 信じて あなた あれはナイチンゲールの声よ」というジュリエットの科白から、ざくろモチーフをローズゴールド、ガーネット、サファイア、ダイヤモンドなどで解釈した「グレナータ」クリップ。
ゴージャスな4連の「テサラ」ネックレス。赤いルビーがキャピュレット家を表します。
ゴージャスな4連の「テサラ」ネックレス。赤いルビーがキャピュレット家を表します。
合計100カラットを超えるペアシェイプのアクアマリンが印象的なブレスレット「フィオーレ」。ヴェローナの街の泉へのオマージュ。
合計100カラットを超えるペアシェイプのアクアマリンが印象的なブレスレット「フィオーレ」。ヴェローナの街の泉へのオマージュ。

いくつかのピースにはファンを喜ばせる隠れた細工が施されています。例えば、「バルコーネ」の裏側にロミオとジュリエットの姿が! クリップをつける人だけの秘密というわけです。

「バルコーネ」の表はホワイトゴールド、エメラルド、ダイヤモンドなどを使った閉まった扉のモチーフ。
「バルコーネ」の表はホワイトゴールド、エメラルド、ダイヤモンドなどを使った閉まった扉のモチーフ。
裏側は手をにぎり合うロミオとジュリエットの姿が隠されています。
裏側は手をにぎり合うロミオとジュリエットの姿が隠されています。
クリップ「ナイト オア ディ」の表はラピスラズリ、サファイアルビーによる夜を思わせるカラリングでロゼッタモチーフ。
クリップ「ナイト オア ディ」の表はラピスラズリ、サファイアルビーによる夜を思わせるカラリングでロゼッタモチーフ。
裏にはさえずるナイチンゲールとヒバリがつけられています。
裏にはさえずるナイチンゲールとヒバリがつけられています。

振付師・映画監督のバンジャマン・ミルピエさんにインタビュー

この日、アメリカからフランスに戻ったばかりでジェットラグであるにもかかわらず、ミルピエさんが会場でインタビューに臨んでくださいました。

アメリカから駆けつけたバンジャマン・ミルピエさん。2019年4月には、「KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭」のため来日していました。
アメリカから駆けつけたバンジャマン・ミルピエさん。2019年4月には、「KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭」のため来日していました。

彼は現代版『ロミオ&ジュリエット』を振り付けしている最中で、2020年5月に完成予定です。

「『ロミオ&ジュリエット』は視覚的にとても美しい物語だ。僕はいつも最初にイメージが頭に浮かび、それをもとにして作品をつくっていくんです」

ミルピエさんが『ロミオ&ジュリエット』に取り組んでいるとヴァン クリーフ&アーペルCEOのニコラ・ボス氏に話したところ、それがヒントとなって今回のハイジュエリーコレクションが誕生しました。

ヴァン クリーフ&アーペルは2003年にもシェイクスピア作品をテーマにしており、またシェイクスピア作品からインスパイアしようと考えていたところだったそうです。

彼の新作『ロミオ&ジュリエット』は従来のバレエという枠を超えたものになりそうです。

「新しい視点で捉えています。舞台のパフォーマンスと映画が融合していて、物語を体験させるというものです。舞台の瞬間と映画の瞬間の凝集を試みています」

新しい表現方法のダンスですが、写真撮影、映画製作もすでに手がけている彼にとっては自然な流れ。

「舞台も写真も映画も近いジャンルですし、自分の世界観をつくるためにそうした手段を使っているということであって、僕にとっては首尾一貫しているんです」

芸術活動をするのは彼にとって息を吸うのと同じで、至極ナチュラルなことだというミルピエさん。彼はアーティストなのであり、振付師、映画監督など、細かくセグメントをするのはナンセンスというものです。

ミルピエさんとヴァン クリーフ&アーペルはそのアーティスティックな感性で共通点があるといえるでしょう。ミルピエさんはダンス、ヴァン クリーフ&アーペルはジュエリーと、領域は違えども、ともにファンタジーを現実の形につくり上げているのです。

伝統のバレエをベースにしつつ、まったく革新的な作品をクリエートする彼の新作『ロミオ&ジュリエット』が今から待ち遠しいです。

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この記事の執筆者
某女性誌編集者を経て2003年に渡仏。東京とパリを行き来しながら、食、旅、デザイン、モード、ビューティなどの広い分野を手掛ける。趣味は“料理”と“健康”と“ワイン”。2013年南仏プロヴァンスのシャンブル・ドットのインテリアと暮らし方を取り上げた『憧れのプロヴァンス流インテリアスタイル』(講談社刊)の著者として、2016年から年1回、英語版東京シティガイドブック『Tokyo Now』(igrecca inc.刊)を主幹として上梓。