本記事では、アルマーニ グループの社長兼最高責任者兼デザイナー・ジョルジオ・アルマーニさんが、Preciousのためだけに語ってくれた、「グレージュ」に対するインタビューをご紹介します。
ジョルジオ・アルマーニさんが語る、「グレージュ」と「アルマーニ」
「グレージュは、『アルマーニ』のクリエイションの根本となる色。それは、身にまとうその人自身が『主人公』になれる色だから」
「グレージュ」―グレーとベージュのブレンド―は、私のカラーパレットのなかでも、とりわけ重要な位置を占めるカラーです。
自然でニュートラルなカラーを好む私にとって、グレージュは控えめでエレガントな存在。そして、上質なウールやカシミヤ、なめらかに体にフィットするビスコース、漆塗りのような光沢を放つとろりとしたシルクなど、極上の素材のもつ美しさを最も引き立ててくれる色でもあります。
それゆえ、グレージュは、「アルマーニ」のクリエイションの根本となる色といえます。
作品アーカイブがあるミラノの施設「アルマーニ/シーロス」の常設展示スペースを見ていただければ、長年のコレクションのなかでグレージュがいかに重要な存在なのか、おわかりいただけることでしょう。
また、グレージュは、極上の素材を引き立てるだけでなく、ほかのカラーと組み合わせやすいという利点があります。私は、明るい色、鮮やかな印象をもつ色と織り交ぜて使うことが多いですね。
例えば、オートクチュールの世界に初めて足を踏み入れた2005年、「アルマーニプルヴェ」のコレクションをパリで発表した際、探求したテーマは「グレージュと赤」でした。
繊細なグレージュと魅惑的な赤が互いにどう補完し合うのか。結果として、完璧な組み合わせだったわけですが、以降、暖色系・寒色系問わず、さまざまな鮮明なカラーを使いながら、グレージュを追求してきました。
今では、グレージュがほかの色と組み合わせやすいなんてあたりまえのことのように思われるかもしれませんが、グレージュというニュートラルなカラーが、いかによくほかのカラーを引き立てるのか。長年の経験を通して、改めて、その実力を実感しているところです。それくらい、グレージュは奥深い色なのです。
「グレージュは、研ぎ澄まされた『洗練』の究極形。日本の女性の真のエレガンスを引き出す色だと思います」
グレージュのもうひとつの利点は、あらゆる肌の色や髪の色と相性がよい点。日本人女性のなめらかな肌、艶やかな髪にもよく合うと思いますが、それ以上に、日本がもつ独特の「美」と、グレージュは非常に相性がいい。日本の美には、幾何学性や単純さ、優雅さといった、美の本質がすべて詰まっているように思います。
だからこそ、研ぎ澄まされた「洗練」の究極形ともいえるカラー、グレージュは、日本の女性の真のエレガンスを引き出す色なのではないでしょうか。
ただし、グレージュのこういった特質はあくまで副次的なもの。このカラーを選ぶ最大の理由ではありません。
「服は、それを着る者の上に立ってはならない。あくまでも、主役、主人公となるのは、身にまとうその人自身である」
これは、私の信念です。私のクリエイションが、着る人の個性を凌駕したり、イメージを偽らせたりすることを望んでいません。そうではなくて、身につける人の個性を引き出し、それを強化し、輝かせたいのです。
グレージュのもつ魅力は洗練とエレガンス
グレージュは、まさに、この信念を体現するカラーです。落ち着きと静けさ、洗練とエレガンス。すべてを併せもつ、これほど完璧な存在をほかに知りません。
グレージュを身にまとうことで、その人自身がフォーカスされ、真の美しさが表に現れてくる。着る人自身の魅力を余すことなく引き立ててくれる唯一無二の色。グレージュが、女性たちを美しく見せる理由は、そこにあると思っています。
さて、「アルマーニ」の美意識の軸といえば、エレガンスと洗練です。例えば、デビューコレクションで発表したアンストラクチャード・ジャケット。フォーマルすぎず、快適で、カーディガンのようなしなやかさと、シャツのような軽さを併せもったジャケットは、特に働く女性にとって画期的なものでした。
そして、このジャケットに初めて使った色が、まさにグレージュでした。颯爽と自信に満ち、自分らしく輝ける服。新時代のジャケットにふさわしいのは、洗練とエレガンスを体現するグレージュ。そう思ったのです。
現代においても、この冬、大人の女性がグレージュを着こなすなら、やはりジャケットだと思います。ゆったりとしたはき心地のトラウザーを合わせるのもいいですね。白や黒、ネイビー、グレーなどクラシックな色合いのシャツやニット、あるいはプリント生地のトップスなどとも相性抜群です。
ただしこれはあくまでも助言です。ワードローブは自分自身を表現する手段。年齢や流行にとらわれず、気軽に、あなたらしくグレージュを身につけてください。なによりも、ファッション自体を楽しんでほしいのです。
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- EDIT :
- 田中美保