秋冬物を発表する1月のピッティでは、アウターの傾向は見逃せない。アウターは、秋冬スタイルの主役を飾るうえ、トレンドを左右する重要なアイテムに成り得るからだ。このところ、レザーを中心に、ムートン素材のモッズコートやピーコートなどが人気となった。

 今回、素材に着目すれば、前回にも増して「サステナブル」をキーワードにした、再生素材のアウターが目立っていた。“ヘルノ”や“ポール&シャーク”は、リサイクルダウンやエコウール、あるいはペットボトルを使った再生素材を用い、アウターのコレクションを充実させた。

 しかしここでは、「サステナブル」は一旦脇に置き、他のふたつのブランドを取り上げる。

2021年秋冬のアウターは、このふたつのブランドに注目!

エンメティ

エンメティ

 まず、イタリアの“エンメティ”。フィレンツェから程近い、エンポリに本社を構えアウターをメインに展開する、日本で抜群の人気のブランドである。

 フード付きのコート「ウィルソン」は、そで部分にスペイン産のムートンを使い、身頃部分は、イタリア・オルメテックス社のコットン×ポリエステル素材を用いる。異素材によるコントラストで、インパクトのあるスタイルをつくる。シャープなシルエットを崩さずに、程よくゆったりとした着用感は驚きだ。

 中綿は、ダウン90%×フェザー10%を使用。大きなポケットを配し、男らしくもエレガントな表情を演出する。スーツの上に羽織り、都会的なミラネーゼ風に着るのもよし、インナーにローゲージのニットを合わせ、品のいいカジュアルな着こなしにも最適なアウターである。

ラルディーニ

ラルディーニの新レーベル「ラルディーニ バイ ヨウスケアイザワ」
ラルディーニの新レーベル「ラルディーニ バイ ヨウスケアイザワ」

 もう一着は、イタリアの“ラルディーニ”の新企画。“ホワイトマウンテニアリング”のデザイナー、相澤陽介氏とコラボレートした新レーベル「ラルディーニ バイ ヨウスケアイザワ」を発表した。全8点のアウターを展開し、そのなかからブルゾンに注目した。

 立体的なパターンを得意とする相澤氏がイメージしたのは、洒落たライダース。腕を前に出しやすいライダース特有のパターンをアレンジし、アンティアクアウールというはっ水性に優れたウール素材を使用する。ブラックで統一した精悍なスタイルもまたいい。

 “ラルディーニ”の次世代を担う、アレッシオ・ラルディーニ氏と進めてきた新レーベルの全8点の中には、両氏の趣味を生かしたデザインもある。釣りが好きなアレッシオ氏の要望から生まれた、フィッシングジャケットはかなりモダンだ。新レーベルは今後も継続。早くも次シーズンの展開を期待する日本人バイヤーも多い。

 さりげなく時代感を意識したアウターで、粋なスタイルを楽しみたい。

気になる2020-21年秋冬のファッション傾向は?

矢部克已の第97回ピッティ・ウォモまとめ公開中!

この記事の執筆者
ヴィットリオ矢部のニックネームを持つ本誌エグゼクティブファッションエディター矢部克已。ファション、グルメ、アートなどすべてに精通する当代きってのイタリア快楽主義者。イタリア在住の経験を生かし、現地の工房やテーラー取材をはじめ、大学でイタリアファッションの講師を勤めるなど活躍は多岐にわたる。 “ヴィスコンティ”のペンを愛用。Twitterでは毎年開催されるピッティ・ウォモのレポートを配信。合わせてチェックされたし!
Twitter へのリンク