日々、移ろうもの、変わらないもの。私だけの物語を綴っていけたら。それこそが、私だけのラグジュアリー

島田彩夏さん
島田 彩夏さん
アナウンサー
(しまだ あやか)上智大学外国語学部ロシア語学科卒業後1998年にフジテレビ入社。入局以来、数多くの報道・情報番組に携わる。現在、『FNN Live News days』(月~金曜午前11時30分~11時55分)のメインキャスターを務める。5歳と4歳になるふたりの男児の母であり、児童虐待問題などを精力的に取材。

「報道の現場、特に生放送では、秒単位の判断を求められる場面が珍しくありません。それなのに、プライベートで愛用している私の時計は、1日に6分も遅れる(笑)。それを『かわいいな、愛しいな』と思えることが、実はとてもラグジュアリーなことなのでは、と感じています」

フジテレビ入社以来、ほぼ20年にわたり、アナウンサーとして報道に携わってきた島田彩夏さん。落ち着いた語り口とまっすぐな眼差しに、誠実な人柄がにじむ。とはいえ、美しいたたずまいとは裏腹に、意外にも「女子力低め」、なのだとか。

島田彩夏さん
腕時計は夫からの誕生日プレゼント。「10年以上、何度も修理して使っていますが、実用性ゼロなところもかわいくて」。カメオ風ブローチは30代のころ、アンティークバザーで購入。「当時はフェイクをつけるのが少し恥ずかしかった。でも今は、そんなこと『どうでもいい』(笑)。年齢を重ねるごとに、人の気持ちは変わるもの。10年後、どんな心境になっているのか、楽しみです」

「本番前のメイクは7分ですませ、家では実用性重視のスタイルで(笑)、やんちゃ盛りな息子たちの世話に奔走しています。疲れ果てて顔も洗わず、廊下で眠る私を夫が見つけ、驚かれることも。それだけに、家事にひと区切りつけた後、ふーっと息をついて本棚を眺め、『何を読もうかな』と思いを巡らす時間は、私にとってかけがえのない素敵な時間です。」

「アクセサリーや時計、器やグラスなど、アンティークを集めるのが好きなのですが、時折、ゆっくりとワインを飲みながら、『100年も前の時代に、どんな人がこのグラスでワインを飲んでいたのかな』などと夢想します。私が、この時代に同じグラスを手にワインを飲む、偶然の不思議さ。時空を超えて、人の営みが交差するのを感じる瞬間です」

ゆとりを楽しむ自分でありたい

リアルライフが慌ただしいからこそ、ゆとりを楽しむ自分でありたい。こう頭ではわかっていても、厳しい現実にため息をつき、下を向いてしまうこともある。

かつて島田さんご自身が迷いのなかにあったとき、「助けてくれた」言葉があったという。

「河合隼雄さんの言葉なのですが、『人生は、自分で綴るひとつの物語。自分だけの一冊の本』。……私の中にすとん、と入ってきた言葉でした。

自分だけの物語なら、人と一緒では意味がない。刻々と変わっていく自分や環境、一方で変わらないこと……すべてが自分の物語であり、人生なんだな、と。

こう思えば、焦る必要はないし、何かアクシデントがあっても、『今はそういうチャプターなのかも。次のページを開けば、違う場面が待っているから』と思えるようになりました

ここ数年は、アナウンサーとして課せられた仕事以外に、ご自身がライフワークとする「児童虐待」の問題について、取材・勉強する時間が増えてきたという。

「以前の私は、神社にお詣りしたとき、『仕事がうまくいきますように』など、自分のことを祈ることが多かった。でもここ数年は、『家族が健康でありますように。辛い思いをしている子供たちが少しでも救われますように』と、祈れるようになりました。

40代半ばを迎えて、私が『自分のためだけ』に生きる段階は、もう過ぎて、今は次のチャプターにいるのかもしれません。人のため、社会のために自分の時間を使えるようになったのは、私自身の成長の証。幸せだな、ありがたいな、と思います。

これからも日々の物語を少しずつ、私なりに綴っていけたなら。それこそがラグジュアリーな人生なのかもしれません」

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TEXT :
Precious.jp編集部 
BY :
『Precious4月号』小学館、2020年
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