デザイナー 中村三加子さん×スタイリスト 犬走比佐乃さん「美しいブラウスこそ、大人のためにある!」

テレビドラマ『SUITS/スーツ』では、弁護士役の鈴木保奈美さんのブラウススタイルが大好評。スタイリングを手がける犬走比佐乃さんと、ブラウスづくりに定評のあるデザイナー、中村三加子さんによるブラウス談義に耳を傾けてみましょう。

中村 三加子さん
デザイナー
(なかむら みかこ)山岳画家の祖父と友禅作家の父のもと、アートに触れて育つ。テキスタイルデザインやブランド企画を手がけた後、2004年にオートクチュール、セミオーダーを中心にした「MIKAKO NAKAMURA」を、2008年には「M・fil」を発表。南青山サロンでは自身が海外で買い付けた小物なども楽しめる。
犬走 比佐乃さん
スタイリスト
(いぬばしり ひさの)本誌を代表する人気スタイリスト。ファッションショーの制作に携わり、1990年代より数々のトレンディドラマで主演女優のスタイリングを手がけ、女優たちからの信頼も厚い。本誌では自身のスタイルを反映した好感度の高いキャリアスタイルが人気を集め、セミナーやトークショーでも活躍。

ふんわりと優雅なブラウスに、タイトスカートで凛とした美しさを

――いよいよシーズン2が始まるテレビドラマ『SUITS/スーツ』ですが、シーズン1放送以来、弁護士・幸村チカのブラウス姿に影響されて、鈴木保奈美さんになりたい人が続出中だとか?

犬走 アメリカ版はもっと力強く、硬い印象なのですが、保奈美さんには、知的だけど女らしく、エレガントなイメージをブラウスで表現しました。凛としたタイトスカートに華やかなブラウスを合わせるという…。記号のように形を決めると、スタイルが生まれるのです。

中村 確かに、ブラウスは着こなししだいですね。タイトスカートなら上がふんわりフェミニンでもすっきりして見えるけれど、フレアスカートだと難しい。ブラウスにボリュームがある今、下はパンツでもシャープでないと。

犬走 昔と違います。タイトスカートのウエスト位置は高め。ブラウスにも分量感があります。

中村 ご自身は、よくテーラードジャケットに合わせていますね。

犬走 ジャケットは堅く見えるけど、中がブラウスだと華やかになりますから。もちろん一枚でも様になるし、ボウブラウスならジュエリーいらずの華やかさです。

中村 うちではノーカラージャケットが多く、シャツ襟は合わないので、ブラウスを提案しています。上質なシルクのブラウスはドレープや艶で着映える。ブラウスは大人の女性のためのもの。シャツも素敵だけど、エレガントな気分になれるのはやっぱりブラウスです。

――色や柄はどうでしょう?

中村 お客様が好きなのはドット。永遠に好きですね。色はネイビーが人気。シックであか抜けた印象になります。黒のブラウスにはオケージョン的な印象もありますから。

犬走 私も水玉とネイビーが好き。『スーツ』では、だれかと敵対するときには強い色を選びます。赤とかきれい色でインパクトを。シビアな状況では、渋めにネイビーやベージュで落ち着かせています。

――幸村チカの影響か、ニュースキャスターのスタイルも変わりました。ブラウスにシフトして…。

犬走 ニュース番組もそうですが、会食などは上半身の世界だから、ボウブラウスがおすすめ。ただし、ボウは高めにキュッと結ばないと老けて見えます。

中村 ブラウスって実はつくるのに手がかかるのです。生地がやわらかいので美しく縫うのが難しい。上手な職人さんでないと。

犬走 つくりの違いはすぐわかりますね。だからこそ美しいブラウスを着ると、しぐさも優雅になる。

中村 今、トップスはウエストインする時代。勇気がいるけど、ブラウスはニットほど体のラインを拾わないところも、おすすめです。

犬走 タイトスカートやシャープなパンツも、ウエスト周りは少しゆるめがきれいにはけるから、ブラウジングすれば大丈夫です!

■1:ロイヤルファミリーは水玉ブラウスがお好き!

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左.©︎The Mega Agency/AFLO 右.©︎Abaca/AFLO

公務では個性的な色柄をまとうことができないロイヤルファミリー。「上品なインパクトを狙うには、好感度が高く、上品なシックカラーの水玉ブラウスは理想的」と犬走さん。センスのよさで知られるふたりは配色のバランスが絶妙で、オンスタイルの参考になります。

■2:犬走比佐乃さんが指南!「今どき」に見えるシックなボウの巻き方

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ブラウス¥105,000(キートン)

ボウは巻き方しだいで違う表情に。モードっぽくするなら長く垂らすこともありますが、大人の女性にはだらしなく、老けて見えることも。犬走さんのおすすめは首元で短めにキュッと結ぶこと。ポイントが上に来ることで、顔周りが華やかに。

■A:横顔美人を演出できる!ふんわり斜め片結び

斜めの位置でふんわり広げて片結び。センターで蝶結びするよりシックでこなれた印象に。特にまとめ髪には最適です。

■B:片側だけ二重に巻いて知的なセンター重ね

ボウ1本だけ二重に巻き、長く残ったほうを下から輪に通して折るように垂らします。前立ての合わせもきれいに隠せます。

■C:剣先のニュアンスで魅せる辛口シンプル二重巻き

ボウを二重に巻いて、コンパクトに前で交差させるだけ。自然に長短がつくので、あとは広げ方でニュアンスを。

■3:エレガンスを体現する、往年の美人女優の二大ボウブラウス対決

映画好きのふたりがボウブラウスのお手本にとすすめるのは、パリモードのアイコンとしてエレガンスを体現してきたふたりのフランス女優。アヌーク・エメはスーツに格調高く。カトリーヌ・ドヌーブは豊かなブロンドヘアでゴージャスに。ともに王道的な装い方が様になります。

「シャネル」のツイードスーツに合わせたアヌーク・エメの洗練

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©Ullstein Bild/AFLO

「サンローラン」をドレスのようにまとうカトリーヌ・ドヌーブの華麗

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左.©BOTTI/STILLS/Gamma/AFLO 右.©Picture Alliance/AFLO

■4:「MIKAKO NAKAMURA」の定番ネイビーブラウスが愛される理由

「MIKAKO NAKAMURA」で顧客の要望に応えてつくられたシルクサテンのボウブラウスが秀逸。上質素材はもちろん、自在なアレンジがきくようボウも着丈も長め。華奢な手首を強調するつくりなど、デザイナー・中村三加子さんのこだわりが詰まった一枚です。

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写真のネイビーのほかに、シーズン色やプリントが加わることも。ブラウス¥110,000(ミカコ ナカムラ 南青山サロン〈MIKAKO NAKAMURA〉)

POINT①…二重巻きできる長めのボウタイ
POINT②…インにもアウトにも着られる程よい長め丈

細やかなギャザーから優雅なドレーブがブラウス_6
薄すぎず厚すぎないシルクはハリとしなやかさのバランスが絶妙で、ギャザーから生まれるドレープが美しく、体の線も拾いにくい。
ボタンひとつのカフは折り返して肌魅せ!ブラウス_7
ふんわりとしたブラウスから細い手首が見えることにこだわり、幅広のカフは折り返しがきれいに決まるように、ボタンがひとつだけ。

※掲載した商品は、すべて税抜です。

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この記事の執筆者
TEXT :
犬走比佐乃さん スタイリスト
BY :
『Precious5月号』小学館、2020年
富士見高等学校から文化女子大学短期大学部被服専攻科を卒業し、SUNデザイン研究所に入社。主にファッションショーのスタイリストとして“ケンゾー”“サンローラン”“ディオール”等のショーの制作に携わる。1985年、SUNデザイン研究所より独立し、フリーランスのスタイリストとしてファッション全般の広告、雑誌関係の仕事を中心に、セミナー、トークショー等でも活動している。 好きなもの:クラシック、ピアノ音楽、キャンディークラッシュ、フラメンコ、ウエイトトレーニング、ハワイ、白シャツ、ヨーグルト、コーヒー豆、ネイビー、白い花、カメオ、オットマン付きのひとりがけの椅子、NHKプレミアム
PHOTO :
佐藤 彩
EDIT&WRITING :
藤田由美、遠藤智子・古里典子(Precious)