バカンス気分を盛り上げてくれる、名作映画3選
映画ライターとして多くの映画に触れている坂口さゆりさんが、バカンス気分を盛り上げてくれる名作映画をご紹介します。
海外旅行をすることもままならない今、夏らしい太陽の日差しが降り注ぐ美しい景色を映画で味わうのも一興。そこで、今月おすすめするのは、『グラン・ブルー』『サイドウェイ』『プロヴァンスの贈りもの』の3作品。どれも夏の気分が盛り上がること必至です。
1本で世界各地の旅気分も味わえる『グラン・ブルー』
ワイン談議と人生が重なり合う『サイドウェイ』
仕事や人生の価値観が一変する主人公を描く『プロヴァンスの贈りもの』
【今月のテーマ】太陽の日差しと美しい景色で、バカンス気分を盛り上げたい!
新型コロナウイルス感染症を防ぐための移動自粛も解除されましたが、この夏は残念ながら夏休みを海外で過ごす、というわけにはいきそうにありません。映画館も各地で再開し出したものの、新作映画のスケジュール調整は続いています。
そこで今月は、リゾート気分を味わえる映画を旧作から選んでみました。
海を堪能したいなら、たとえば『グラン・ブルー』。
1988年公開ともう30年以上も前の映画ですが、この海の青さ、深さ、そして静けさを愛する映画ファンは多いのでは。かつてシチリア旅行を計画した時、真っ先に浮かんだ場所がタオルミナでした。理由はひとつ。この映画で、主人公ジャックと幼なじみでライバルのエンゾが、崖っぷちにあるレストランで食べていた「海の幸のスパゲティ」を食べたかったから(多分そういう旅行者は私だけではないでしょう……)。
とっても楽しみにして着いてみれば、超ショック。実は、私が訪れたのは2月。季節外れで利用ができなかったのでした。自身のリサーチ不足を嘆きながらも、エンゾが「シチリアは世界でいちばん美しい島」と言った絶景は堪能。タオルミナでは月の輝く夜に、ジャックがイルカと泳ぐシーンがまた、見ているだけで癒やされるんですよね。
本作はフリーダイビングの大会に出場する男たちの話であるため、各国の海やニューヨーク、ペルーなども登場。1本で世界各地の旅気分も味わえます。
30代はイタリア各地を巡り、食を堪能していた私が今、憧れる旅がワイナリー巡りです。『サイドウェイ』ならカリフォルニアワインを満喫できます。
夕陽が輝くなかで男女4人がグラスを傾けるシーンは、かけ値なしの美しさ。本作は景色やワインを楽しめる一方、主人公マイルスと彼の思い人マヤとの間で交わされるワイン談議も印象深いんです。
「ピークを迎え、ゆっくり坂を降り始めたワインの味わいも捨てがたい」。そんなマヤの言葉に、自ずと自分自身の人生を重ねてしまいます。
南仏の葡萄畑なら『プロヴァンスの贈りもの』もおすすめです。
この地は、ロンドンで荒稼ぎをするトレーダーの価値観を一変させます。私にとって、新型コロナウイルス感染症による自粛生活は、決して悪いことばかりではありませんでした。
金の亡者のようなマックス(ラッセル・クロウ)が、「ゴッホの絵を買っても、金庫に入れっぱなしで見ることのない人生に、意味はあるのか?」と考えるように、私もますます自分にあった働き方を考えるようになりました。
楽しく仕事をして、愛する人たちとおいしいワインと食事を楽しむ。そんな素朴な喜びこそ人生を豊かにするのではーー。
ワインと人生の妙味を味わえるのは、映画の旅ならでは、と言えますよね。これまで観てきた旧作も、久しぶりに観ると新たな発見もできるはず。そんな楽しみもぜひ味わってみてください。
- TEXT :
- 坂口さゆりさん ライター
- BY :
- 『Precious8月号』小学館、2020年
- PHOTO :
- ©1988 GAUMONT、©2004 Twentieth Century Fox Film Corporation.、©2006 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
- WRITING :
- 坂口さゆり(映画ライター)
- EDIT :
- 宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)