夏号の特集「男だからこそ美しい 洗練ゴールドの名品時計」では、日常のシーンを鮮やかに彩る名品時計の着こなしスタイルを披露した。ここでは、掲載された7本のゴールド時計の詳細を徹底レポート。第6回は、A.ランゲ&ゾーネの『ランゲ1』だ。
雑誌メンズプレシャス夏号で紹介した名品時計の詳細をレポート!
自らのフラッグシップコレクションを、「アイコンウォッチ」と語るブランドはとても多い。しかし、実はメンズウォッチに関しては、「アイコンウォッチ」というものはとても限られている。
そもそも「アイコンウォッチ」の定義自体が曖昧ではあるが、ひと目見ただけで、どのブランドのどの時計か識別できるものと定義すると、ケースフォルムのバリエーションがレディースほど多くないメンズウォッチで、瞬時に「それ」と判別できるアイコニックな顔つきの時計をデザインすることは容易ではないからだろう。
そのようななか、紛うことなき「アイコンウォッチ」と、誰もが認めざるを得ないのが、A.ランゲ&ゾーネの『ランゲ1』だ。
1845年に創業し、ドイツが誇る高級時計メーカーとして名を轟かせたものの、第二次世界大戦の影響で長い間休眠せざるを得なかった悲劇のブランドが、東西ドイツの統合により、50年あまりの長い眠りから覚醒。見事に蘇ったのは1990年のことだった。その際、ブランド再興のファーストコレクションとして誕生したのが、『ランゲ1』である。
質実剛健なジャーマンデザインの美学が、その隅々に行きわたる
オフセンターのダイヤル、そしてアウトサイズデイトーー 『ランゲ1』を『ランゲ1』たらしめる特徴的なこのデザインの「異形の美」は、瞬く間に世界中の時計愛好家たちの心を捉えた。以来、26年の歳月が経ったが、この大胆で突出した個性をもつダイヤルデザインは基本的に変わることなく現在まで至り、A.ランゲ&ゾーネの時計製造のフィロソフィーを体現する「アイコンウォッチ」として輝き続けている。
現在では、ムーンフェイズやタイムゾーン、トゥールビヨン・パーペチュアル カレンダーといった複雑機構搭載のモデルを含め、全部で9モデルの展開となっているが、この時計の非凡なデザインをストレートに堪能できるのは、やはりすべてのモデルのベースとなっているこの『ランゲ1』だろう。ケース素材は、ホワイトゴールド、イエローゴールド、ピンクゴールドの3種類。
ケース素材や搭載する機構が変わっても、揺るぎない存在感を放つ『ランゲ1』
A.ランゲ&ゾーネの、ウォッチメイキングに対する真摯な姿勢から、ある意味ストイックなイメージのあるブランドだけに、色のついたゴールドよりもホワイトゴールドやプラチナの印象が強いという人も多いかもしれない。とびきりシャープに、そしてモダンに映る、その表情も確かに魅力的だ。しかし一方で、ピンクゴールドやイエローゴールドの「華」や「艶」によって見せる柔和な表情も、この稀有な時計にはとてもマッチするのだ。
創業者、フェルディナント・アドルフ・ランゲが、ドイツのザクセンに時計産業を興して、175年。その間、どんな困難も乗り越えてきたA.ランゲ&ゾーネというブランドを象徴する『ランゲ1』は、これからどんな物語を紡いでいくだろうか。
問い合わせ先
- TEXT :
- 岡村佳代 ウォッチ&ジュエリージャーナリスト
- PHOTO :
- 水田 学(NOSTY)
- STYLIST :
- 菊池陽之介
- MODEL :
- Dylan VT