久々のストレートプレイに挑む!市川猿之助が『藪原検校』で稀代の悪党に

劇場_1
PARCO劇場オープニング・シリーズ『藪原検校』

大ヒットドラマ『半沢直樹』の悪役、伊佐山泰二部長役を存在感たっぷりに怪演し、大反響を巻き起こした、歌舞伎俳優の市川猿之助。「詫びろ」(←口パク)「詫びろ!」「詫びろ詫びろ詫びろ詫びろ詫びろ、詫びろ半沢!」の“詫びろ”大連発や、実に憎々し気な「お前の負けぇーー!!」などの名ゼリフは、お笑い芸人の物真似ネタにもなるなど、一躍流行語となりました。

2012年に四代目市川猿之助を襲名、立役から女形まで幅広く演じる才気走った演技力と踊りの巧さで知られ、大人気漫画を歌舞伎化したスーパー歌舞伎(監)『ワンピース』の演出、そして主人公ルフィ役での演技も広く話題となるなど活躍中ですが、伊佐山部長役で見せた、濃ゆく、ときにかわゆくすらあるワルの表現に改めて魅せられた方も多いはず。

その猿之助が、PARCO劇場オープニング・シリーズ『藪原検校』で久々のストレートプレイに主演します。

ちなみに、市川亀治郎を名乗っていた時代、旧PARCO劇場にて上演された『狭き門より入れ』で現代劇に初出演したという縁あり。

今回挑戦する、井上ひさしの手による戯曲は、旧PARCO劇場(当時の名称は西武劇場)が1973年に開場した際にオープニング記念の一作として、木村光一の演出で初演された作品。

海外でも上演されるなど人気を博し、近年では、古田新太主演の蜷川幸雄演出版、野村萬斎主演の栗山民也演出版なども上演されている傑作戯曲で、藪原検校は、落語や講談、歌舞伎作品でも取り上げられてきたキャラクターです。

座頭殺しの父と醜女の母のもと、父のゆがんだ性格と母の醜さを受け継ぎ、盲目に生まれついた主人公、杉の市。金の力を利用しての立身出世を目指し、師匠の妻も寝取る欲の深さを見せ、殺しもいとわず「藪原検校」へとのし上がっていきます。

そんな彼の激烈な生き様を通じて、社会の矛盾やタブーが描き出されていくのが作品の鋭いところ。

濃厚な艶笑シーンあり、下ネタ含みの早物語を語るシーンあり、陰惨な殺しのシーンありと、主人公の才覚と大悪党ぶりが堪能できる趣向となっていて、歌舞伎の舞台でも何役もの早替わりで魅せる猿之助ならではといった、悪の魅力の発揮が大いに期待できそう。

劇場_2
市川猿之助さん、松雪泰子さん、三宅 健さん、川平慈英さん

演出を手がけるのは、猿之助と共にスーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』を手がけ、木ノ下歌舞伎『勧進帳』なども話題を呼んでいる杉原邦生。

杉の市と対照的に描かれる塙保己市ほか数役の演じ分けに三宅 健が挑戦、杉の市の愛人お市を松雪泰子、物語の語り部盲太夫を川平慈英がつとめるなど、個性豊かな豪華共演陣も楽しみな限りです。

Information

  • PARCO劇場オープニング・シリーズ『藪原検校』
  • 父譲りの曲がった根性と母譲りの醜さ。盲目の杉の市は、有り難くもない天賦のためか、盗み、殺しなど悪の限りを尽くした道を突き進む…。
  •  
  • 場所/PARCO劇場、ほか愛知・石川・京都公演もあり
  • 公演期間/2021年2月10日(水)〜3月7日(日)
  • TEL:03-3477-5858(パルコステージ)
WRITING :
藤本真由(舞台評論家)
EDIT :
宮田典子(HATSU)、喜多容子(Precious)