関西を拠点に、国内外で活躍する女性たちの生き方を綴る連載「~京都、大阪、神戸~ 彼女たちの三都物語」。京都・祇園でギャラリー「昂-KYOTO-」を営む永松仁美さんにお話をうかがっています。仕事を始めて9年がすぎ、仕事や自分自身に対する想いとは? インタビュー最終回です。

「格」を意識することで、自分自身も見えてくる

「私がこういう世界で仕事をさせてもらっていて感じるのが、”格を合わせること”がいかに大事か。例えば、バカラのグラスにプラスチックのコースターはどこかぎこちないし。シンプルな白いお皿ひとつとっても、量産品と手仕事のものはどこか違うし。着物や数寄屋建築など、日本はもともと格を重んじる世界。格とは値段だけの話でなく、時代や素材、デザイン、ワザなどいろんなことから成り立っています。格を意識してモノを見ると、これなら私にも背伸びして買えるとか、私にはまだちょっと早いかなとか、自分自身を知ることにもなります」

自分のバックグラウンドは、自分でつくる

永松さんと娘さんが一緒に行ったヨーロッパ旅行(永松さん提供)

「京都という町に生まれると、どうしても『どこどこお嬢さん、〇〇ちゃんのママ』というくくりで、良くも悪くも話がスムーズに通用する利便さのなかで育ちました。店を始めたころもそうでした。ただ自分の店を持った以上、どこの誰でもなく、永松仁美という人間でいなければならない意味を考え直す、いい機会となりました。もちろん、親のつながりや子のつながりで広がった世界も大切です。京都という街は特につながりで成り立っているので、ありがたいことはいっぱいありました。

また、店を始めたときの夢のひとつに、自分で働いて貯めたお金で娘をヨーロッパ連れていきたいと思っていて。5年前に夢が叶って連れて行くことができて。そのときはうれしかったですね。彼女はまだ小学校5年生だったんですが、蚤の市に連れていったり、これだけは食べといたらいいと思うものを食べさせたり、イヤイヤながら彼女は従っていて。まったく一緒なんですよ、私が子供の時に親に連れていかれたヨーロッパ旅行と! 私も(幼少時、父に連れていってもらったパリ旅行が)今となったら貴重な経験をさせてもらったなぁと思っているからこそ、彼女も子供ながらに感じることがあったらいいと思っています」

背伸びせず、自分のできる範囲で自分らしく生きる

永松さんの「今」と「歴史」が詰まった愛用のポーチや名刺入れたち

「手を広げず、自分でできる範囲のことをやる。これは4坪の店をはじめた時からいまだに変わっていませんね。店やイベントなどのコーディネートをする際も、ばっくりとプロデュースだけして、人任せには絶対したくないです。これからどうしていきたいかってよく聞かれるんですが、今の仕事がすごく楽しいので、今のままがいいです。というか、楽しいけども、ほんと毎日、必死なんです。現状維持って意外と難しいと思います」

 

幼い時から培われた審美眼に加え、骨董やアンティークに対するさらなる知識を養い、現代作家との親交も深め、さまざまな仕事に挑戦する永松さん。有名骨董店の長女として生まれ、3人のお子さんの母である永松さんが○○の娘さんでも○○のママでもない”自分”を確立していく姿は参考になります。今もいろいろなプロジェクトを進行中という永松さんの活躍から、目が離せません。

PROFILE
永松仁美(ながまつ ひとみ)さん
1972年、京都・古門前の骨董店の長女として生まれる。ヨーロッパのアンティークと現代作家の器を取り扱う「昂-KYOTO-」を営むほか、店舗のコーディネートや百貨店でのイベント開催、エッセイ本も出版している。 http://koukyoto.com
この記事の執筆者
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PHOTO :
香西ジュン
WRITING :
天野準子