クルマえらびにモード(流行)があるとしたら、いま最強のコンビネーションは、SUVとスポーティな性能だろうか。アウディジャパンが2020年12月に発売した「アウディRS Q3スポーツバック」は、スタイリッシュでいて、高性能と利便性を両立させた、なかなかえがたいキャラクターをもった1台だ。
普通のQ3とは明らかに違う
2020年3月にようやく試乗できた、RS Q3スポーツバック。400馬力の2,480cc 5気筒エンジンを搭載して、ひとことでいって速い。もうひとつ、このクルマの大きな特徴にあげたいのが、デザイン性の高さだ。ドアを開けると、赤を効果的に使った内装の魅力に、一発でとりこになってしまった。
そもそも、ベースになったQ3スポーツバックは、2020年7月にフルモデルチェンジを受けた新世代が日本でも発売された。機能性を重視したQ3に対して、テールゲートを強く寝かせたスタイルをもっている。アウディが伝統的にスポーツバックと呼ぶ4ドアファストバックなる車型で、軽快感がより強い。実際に2つのモデルとも、乗ったときの印象もよかった。
もちろん、RS Q3は、まったく別世界の乗りものだ。エアダム一体型の大型バンパーと、255/40R20と幅広で大径のタイヤを収めるため張り出したフェンダーなど、一目で“違っている”ことがわかる。294kW(400ps)の最高出力を5850rpmから7000rpmのあいだで発生する設定だけあって、直列5気筒エンジンは、回せば回すほど、というかんじで、ぐんぐんと速度を上げていく。そこがすばらしく気持ちよい。
スポーツを愛するのも紳士である
最大トルクは480Nmとこちらも強大。1950rpmから5850rpmのあいだでこのトルクがずっと維持されるので、けっこう高い速度域でも、アクセルを軽く踏めば力強く加速していく。どちらかというと、3000rpmより上のエンジン回転数をキープしていたほうが、このクルマのスポーティなキャラクターをフルに味わえる。
もうひとつ、驚いたことがある。内装の仕様だ。ダッシュボード、ドアの内張り、シート、さらにセイフティベルトの縁取りと、要所要所に赤の挿し色が、効果的に入っている。けっしてどぎつさはない。他では見つからない特別な雰囲気が演出されているのだ。
「RSデザインパッケージ」というオプションの「エクテンデッドレッド」という仕様である。「Sスポーツシート」も含めて50万円を少し超えてしまうものの、特別感もRSモデルの大きな魅力のひとつと思っているひとは、ぜひ検討するといいと思う。
紳士の乗りものにしては、ちょっと目立ちすぎかもしれない。しかし、スポーツを愛するのも紳士である。ふたつの世界を楽しんでこそ、人生を生きる喜びがあるというもの。863万円のアウディRS Q3スポーツバックは、休日にスポーツを楽しむように、ドライブで精神を解放してくれるクルマである。
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- 小川フミオ ライフスタイルジャーナリスト