今、私たちがあたりまえのように身につけているジャージー、ボーダー、パンツスタイル、そして黒という色さえも、マドモアゼル シャネルが真っ先に取り入れ、女性たちに解放したもの──私見ですが、彼女こそ20世紀初頭に活躍した元祖「働くいい女」だと思います。
想像するに、仕事をこよなく愛し、プライドをもち、だからこそだれに媚びることなく、しなやかに自分を生ききった女性。マドモアゼルが生みだしたものが現代の働く女性を惹きつけるのは、至極当然なことでしょう。
ご多分に漏れず、私もそのひとりですが、シャネルとの最初の出合いは大学時代。思い思いに卒業旅行に出かけた仲間たちと「パリのカフェ『Les Deux Magots』で待ち合わせね」と、背伸びして落ち合ったとき、ひとりが真っ赤な口紅で現れたのです。シャネルの今はなき名品『ルージュ エクストレム』でした。確か04番だったと思うのですが、まねしてゲットして帰ったことは言うまでもありません。
以来、シャネルの赤はいい女の証とインプットされ、数年後にまた出合ったのが、『ヴェルニ ルージュ ヌワール』でした。その名のとおり、黒と見まがう赤。女性にしか身につけられない色でありながら、だれにも媚びていない赤。そのコンセプトは鮮烈で、当時、ユニフォームのように着ていた黒に、短く切りそろえた爪とこのネイルが、働くいい女を目ざす私の矜恃となったのです。
それから20年、20代後半だった私も40代後半となり、少しでも大人に見せたくて肩ひじ張っていたころに比べ、ちょっぴり成長したようです。その証拠に『ルージュ ヌワール』、今年は黒ではなく、グレーの着こなしに合わせようと思っています。強くタフないい女から、しなやかで包容力のあるいい女になりたくて──。
■『ルージュ ヌワール』。誕生20周年を記念して限定発売されるネイルは、キャップのロゴが赤く染められて…。ネイルと好相性なアイシャドーやマスカラ、リップなども限定発売されるから、ますますこの色を好きになってしまいそう。
問い合わせ先
- シャネル(香水・化粧品) TEL : 0120-525-519
- TEXT :
- 吉川 純 ファッションディレクター
- BY :
- 『Domani11月号』小学館、2015年
- クレジット :
- 撮影/中田裕史 文/吉川 純