2019年11月のジャパンプレミア以降「ポルシェ魂の宿るフルEV」なるものに恋焦がれてきたが、4月半ば、ついに「タイカン ターボ」で出かける機会を得た。遠く、北軽井沢へ。
かのポルシェがつくったEVのフィーリングをタイカンするとともに、オーナーとなったら必ず出かける郊外リゾートへ、今、フルEVで行くと実際どうなの?を体感してきた。 2回にわたってレポートする。
ターボと銘打つ高出力スポーツカーにして、ご近所に優しいEVサウンド
朝6時。閑静な住宅街にクルマ担当ダンディ編集Sが「タイカン ターボ」に乗って、颯爽と、かつ静かに登場する。
「911 ターボ S カブリオレ」で同じ場所を走った時は、シュボボボボ...ボバボ...ボボと唸り声をあげていたが、それとは全く別物。高速道路では心弾むスポーツカーのエグゾーストサウンドも、風致地区にある我が家、時間帯によってはご近所に心苦しいノイズとなってしまうが、「タイカン」はその点におけるストレスはない。さすがフルEV。屋内にいた家人はクルマの到着に気づかなかったほどだ。
もちろん音もなく近づいて、道ゆく人を驚かせてしまうこともない。静穏性の中にも、運転感覚とマッチした走行音のチューニングがバランスよく整えられている。
そんなに静かなクルマじゃ走った気がしない!というあなたには、ど迫力の走行サウンドを楽しませてくれる「ポルシェ エレクトリック スポーツ サウンド」というオプションもあるのでどうかご安心を。
往年のファンも悦ぶ、初代「911」をソースにしたシックなインテリア
まず乗り込んだのは助手席。
ダッシュボード上のアナログ時計を除いて計器類は全てデジタルだが、全体の佇まいはフューチャリスティックというよりシックな印象だ。近未来的なコクピットを想像していたが、むしろレトロな香りさえ漂う。
ジャパンプレミアでの解説によると、デザインチームが出発点として選んだのは初代「911」なのだそう。世の電動化を憂う往年のポルシェファンにとっても、落ち着く雰囲気なのではないだろうか。
目新しいのは助手席の目の前に位置するパッセンジャー用ディスプレイ(オプション装備)で、これがとても便利だった。走行中の目的地変更など、ドライバーに変わって助手席のパートナーがスマホで調べ、伝え見せることは多いが、タッチスクリーンを直接操作してディスプレイ表示させれば、調べる方も見る方もアクションを減らせてスムーズだ。それぞれのディスプレイが独立して作動するから、ドライバーの道標を中断させることもない。
思えば、ツインボウルの洗面台もトイレが2つある家もずっと以前からあり、私たちはその快適さを知っていたのに、なんで今までツインナビがなかったんだろう。
ポルシェ魂の真髄は乗り心地より操舵性
率直にいうと、助手席の乗り心地についてはいまひとつ高揚しきれなかった。「カイエン」のようなラグジュアリーサルーン的空間と比較すれば、着座姿勢からしてコンフォート感に違いがあって当然なのだが、「911 ターボ S カブリオレ」と比べてもダイレクトに硬めの振動が体に伝わり、ドライバーの技量次第では車酔いに至ることもある気がする。
けれど、ひとたびステアリングを譲ってもらうと、「あ、やっぱりポルシェはこっちだ」と瞬く間に理解した。主役はあくまでドライバー。ドライバーのための電動化されたスポーツカーなのだ、と。
高速の本線合流も意のままに伸びやかに加速してくれる。この気持ちよさ、EVでも確かにポルシェだ。結構な巨体だが高速道路上の上り坂でもパワー不足は感じない。カーブもブレない。
高速を降りた後、北軽井沢まで幾度と繰り返すワインディングをいつにも増して安定して走り抜けることができたのは、低重心設計によるところが大きいだろう。「バッテリーが車体の下に搭載されているので重心が911よりも低く、全面的に敷いてあるためウエイトバランスも理想的」というボディバランスのメリットを体感することができた。
※後編は5月8日配信予定です。
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- TEXT :
- 林 公美子 ライター