普段よくお目にかかる「栗」といえば、中国栗や西洋のマロン。それらと比べて和栗は高級で上品な味わいがあるといわれているものの、どのような違いがあるのか気になりませんか? その和栗の魅力を知るために、今回は、和栗専門店「和栗や」を営む栗職人・竿代信也さんにお話を伺います。
■和栗の真の魅力とは?
栗といっても世界中を見渡すと、いくつか種類があります。その中でも、和栗はどのような特徴があるのでしょうか。栗職人の竿代信也さんは次のように教えます。
「世界には大きく分けて4種類の栗があります。アメリカ栗、ヨーロッパ栗、中国栗、日本栗(和栗)です。現在の和栗は『シバグリ(山栗)』という在来種を元に作り出された栽培種で、その数は100種類以上にものぼります。それぞれ味も香りも食感も異なりますが、洋栗や中国栗と比べて最も異なる特徴は、『粒が大きく、渋皮がむきづらく、香りが強い』という点です。そこから生まれる和栗の一番の魅力は、ホクホクとした食感と繊細で上品な香りではないでしょうか」
■和栗は甘味が少ない?
「粒が大きく、渋皮がむきづらく、香りが強い」の他に、和栗には「甘味が少ない」という話があります。それは本当なのでしょうか?
「栗の主成分は澱粉(でんぷん)質です。糖度で表すとメロンより高い平均20度はあるのですが、澱粉はそのまま食べても甘みとして感じることはほぼありません。そこで低温(氷温)で貯蔵、熟成させます。すると澱粉が糖化し、甘さは3倍程に感じることができるようになります。
世界の栗の糖度はわかりませんが、熟成した日本の栗は驚くほどの甘さがあるので、甘みが少ないというのは、きっと穫れたての栗をそのまま食した場合のお話かと思います。
逆に穫れたての栗は、甘みは少なくても香りがとても強いので、若干の加糖をするだけで、 “香りが強くて、甘みもある” 理想の栗の味に近づけることができます」
■和栗の味わいが引き立つ食べ方
和栗の香りや甘み、ホクホク感などの魅力を知ると、ぜひ味わいたくなってきます。では、和栗の味わいが最も引き立つ食べ方にはどんな方法があるのでしょうか。
「自然な甘みを味わいたい場合は、先ほどもお伝えした低温(氷温)で熟成し、栗本来の甘みを引き出します。温度管理がされた冷蔵庫なら最低3週間は寝かせる必要があります。家庭用冷蔵庫では乾燥しないように新聞紙などで栗を殻ごと包み、チルド室で約2週間ほど寝かせるのがおすすめです。2週間では完全に甘みを引き出すことはできませんが、家庭用では長くても1~2週間が限界かと思います。そうして熟成させた栗は、ゆで栗、蒸し栗、栗ごはん、焼き栗などで栗そのものの味を感じるため、味付けせずシンプルにいただくのがおすすめです。
穫れたての栗は香りを生かして、甘露煮にしたり甘みを少し加えペースト状にして栗きんとんやモンブランなどのお菓子の原料としたりするのがおすすめです」
■一度は食べてみたい希少な品種、「いわまの栗」の「人丸」
和栗本来の甘味や香りを、まずはシンプルな方法で味わってみたいもの。竿代さんは、8年前に「和栗や」を起業するきっかけにもなったという茨城県笠間「いわまの栗」を栽培されているといいます。果たしてどんな和栗なのでしょうか。
「『いわまの栗』とは、栽培面積日本一を誇る茨城県笠間市岩間地方で栽培している栗の総称。そのなかでも弊社が栽培しているのは『人丸(ひとまる)』という栗です。日本一の産地でも栽培している農家さんがほとんどいない、大変希少な品種。香りと味が強く、色が鮮やかなのが特徴です」
「人丸」は収穫量が限られているため、味わうことができるのは和栗や東京店のイートインで提供されている秋の期間限定「プレミアムモンブランHITOMARU」としてだけだそう(今シーズンは2017年12月3日までの提供)。
その他、和栗やでは人丸以外の『いわまの栗』を使ったさまざまな和栗スイーツが味わうことができます。他の栗とは違う和栗の魅力を、ぜひ実際に感じて、味わってみてください。
問い合わせ先
- 和栗や東京店 TEL:03-5834-2243
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- EDIT&WRITING :
- 石原亜香利