以前、メンズプレシャス2018年秋号で特集を組んだ「チャールズ皇太子、その完璧なる装い」。そのなかでチャールズスタイルのひとつとして取り上げたのが、スーツの袖に入れたクリースだった。本来ならパンツデザインに入る「折り目」であるが、それをチャールズ皇太子は袖に入れている。英国の伝統の正統な継承者であり、厳格なルールに則った装いであるはずだが、現代のメンズファッションに照らし合わせると、あのクリースの意味がわからない……。そこで、英国の服飾事情に詳しいジャーナリストの長谷川喜美さんに、チャールズ皇太子がなぜ、パンツの脚の部分に付けられる「折り目」を袖に入れているのか教えてもらった。
英国紳士ならではの正装
「一見、私たち日本人にとってはミステリーのようですが、服飾のルールを知る英国人にとって、この答えは歴然としています。念のため、プリンス・オブ・ウェールズ(チャールズ皇太子)の御用達テーラーである、「アンダーソン&シェパード」のダニー・ホールさんに理由を尋ねてみました。同テーラーで30年以上の経験を持つヘッドカッターの答えはこうです。『兵役の経験のある方は、袖にクリースを入れるのがしきたりなのです』。服飾のルールにおいて、正装の最高位は軍服とされています。こうした理由から、現在も英国陸海空軍の最高位、元帥を務めているチャールズ皇太子のスーツの袖には、クリースが欠かせないのです」
完璧なるイングリッシュドレープを描くスーツ。その袖にすっと入るクリースの謎。それは解決した。チャールズ皇太子が軍人でもあることに由来していたのだ。服装術は見習うべきところが多々あるものの、袖のクリースだけは真似てはいけない。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2020年秋号より
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