以前、メンズプレシャス2018年秋号で特集を組んだ「チャールズ皇太子、その完璧なる装い」。そのなかでチャールズスタイルのひとつとして取り上げたのが、スーツの袖に入れたクリースだった。本来ならパンツデザインに入る「折り目」であるが、それをチャールズ皇太子は袖に入れている。英国の伝統の正統な継承者であり、厳格なルールに則った装いであるはずだが、現代のメンズファッションに照らし合わせると、あのクリースの意味がわからない……。そこで、英国の服飾事情に詳しいジャーナリストの長谷川喜美さんに、チャールズ皇太子がなぜ、パンツの脚の部分に付けられる「折り目」を袖に入れているのか教えてもらった。

英国紳士ならではの正装

チャールズ皇太子/1948年にエディンバラ公フィリップとエリザベス王女の長男として誕生。エリザベス2世が1952年に女王に即位して以来、長年王位継承順位第1位でありつづける。その装いは英国紳士の理想像であり、常に注目の的となっている。
チャールズ皇太子/1948年にエディンバラ公フィリップとエリザベス王女の長男として誕生。エリザベス2世が1952年に女王に即位して以来、長年王位継承順位第1位でありつづける。その装いは英国紳士の理想像であり、常に注目の的となっている。写真:Getty Images

「一見、私たち日本人にとってはミステリーのようですが、服飾のルールを知る英国人にとって、この答えは歴然としています。念のため、プリンス・オブ・ウェールズ(チャールズ皇太子)の御用達テーラーである、「アンダーソン&シェパード」のダニー・ホールさんに理由を尋ねてみました。同テーラーで30年以上の経験を持つヘッドカッターの答えはこうです。『兵役の経験のある方は、袖にクリースを入れるのがしきたりなのです』。服飾のルールにおいて、正装の最高位は軍服とされています。こうした理由から、現在も英国陸海空軍の最高位、元帥を務めているチャールズ皇太子のスーツの袖には、クリースが欠かせないのです」

チャールズ皇太子/写真:Getty Images

完璧なるイングリッシュドレープを描くスーツ。その袖にすっと入るクリースの謎。それは解決した。チャールズ皇太子が軍人でもあることに由来していたのだ。服装術は見習うべきところが多々あるものの、袖のクリースだけは真似てはいけない。

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MEN'S Precious編集部 
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MEN'S Precious2020年秋号より
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