『Precious』10月号で提唱する「ジェントル・エレガンス」とは、Preciousが核としてきた「エレガント」をより「今の私たちが求めるもの」にアップデートしたもの。優しさ、凜とした心意気、ひとさじの明るい個性…それはファッションでありスタイルであり、生き方にも通じていきます。そんな「ジェントル・エレガンス」へと繋がるアイテムとコラムをご紹介。

今回は、この秋アップデートしたい格上げアイテムとして、「PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)」の時計「Histoires de Parfums(イストワール ドゥ パルファン)」​の香水をご紹介します。

そして服飾史家・著述家の中野香織さんに、「優雅なジェントルウーマン宣言」をテーマとしたスペシャルコラムをご寄稿いただきました。

ジェンダーを超えたもの選びの風通しのよさに心を向けて

これまでのエレガンスに、もう少し凛として包容力のある女らしさを求めたい今、より自分にフィットするアイテムは、メンズやユニセックスなコレクションにあるかもしれません。

例えば、洋服以上に、私らしさに親密な時計や香水…。普遍的な美しさに引き寄せられ、しっくりくるものは、心の窓を開けた先で、出合えることも増えています。

時計_1,高級時計_1,香水_1
時計『ゴールデン・エリプス』¥3,916,000(パテック フィリップ )、香水『イストワール ドゥ パルファン 1899 オードパルファン』¥15,400(アールオー〈イストワール ドゥ パルファン〉)

楕円形のケースが優美な時計は、ロングセラーとして愛されているパテック フィリップのメンズコレクション。さりげない華やぎが心地いいユニセックスな香水と共に、自由な気分でまといたい。


 Column │優雅なジェントルウーマン宣言~服飾史家・著述家 中野香織さん

中野 香織さん
服飾史家、著述家、昭和女子大学客員教授
(なかの かおり)イギリス文化、ファッション史、その延長にあるラグジュアリー領域全般で研究・著述・講演。講演ではテーマに合ったコスプレで臨むという徹底したサービス精神を発揮。新聞、雑誌、ウェブなど9媒体で連載中のほか、企業数社のアドバイザーを務める。著書に『「イノベーター」で読むアパレル全史』『モードとエロスと資本』ほか多数。中野香織さん公式HP Twitter: kaorimode1

「エレガンスとは、抵抗である」。ココ・シャネルも、イヴ・サンローランも、1960年代米『ヴォーグ』誌のカリスマ編集長ダイアナ・ヴリーランドもそう言った。社会の偏見と闘い、古い常識を覆して新しい時代への扉を開き、永遠の骨太なエレガンスの模範例を続々と世に示した不動のスタイルアイコン3人が、口をそろえて言うのである。「エレガンスとは、抵抗である」と。

エレガンスは、巻き髪だったり華奢なハイヒールだったりお嬢様ことばだったりという表層とは、あまり深い関係はない。たまにそんな表現が出てくることもあろうかと思うが、エレガンスには、なによりも抵抗する姿勢が芯にあることが最低必要条件なのである。

何に抵抗するのか? 

大勢が流されている漠然とした時代の空気に、である。「みんな」と同じようにふるまっていれば間違いはない。大きな流れに乗っておけば安心。こうした小心ぶりを基盤としてぼんやりと時代に振り回されている限り、エレガンスへの道は開かれない。

エレガンス(elegance)ということばの源には、「注意して選び抜くこと」という意味がある。選挙(election) と同じ根から派生している。注意して選び抜いた服装、ふるまい、ことばが、あたかも生まれつきそのようであったかのように優しく差し出される時、結果として「優雅」な印象が生まれる。

人は放っておくと、安易なほう、ラクなほうに流れがちである。かねてより進んでいたカジュアル化の波に、新型コロナが追い打ちをかけ、社交の機会を絶たれた期間にリラックスを通り越して弛緩した装いやふるまいに慣れ始めていなかっただろうか。

この安易な流れに抵抗し、「少し面倒」な装いを今こそ選び抜いて着てみたい。とはいえ、新型コロナや天災などで傷ついている人も少なくない時代、緊張度が高く自己主張の強い装いは、かえって攻撃的に映ることがある。抵抗することと、エゴを主張することは、まったく次元が異なる話である。

時代の空気になじんで安易なほうへと流されがちな自分自身に静かに抵抗し、周囲を励まし包みこむような包容力を感じさせるアイテムを注意深く選び、とはいえ、そんな奮闘はかけらも見せずに優しいことばと共に人に接する。こうした意志あるふるまいの連鎖が社会を変える力になることがある。そんな責任まで考えた装いができることが、本物のジェントルウーマンのエレガンスというものではないだろうか。


※掲載した商品の価格は、すべて税込みです。

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PHOTO :
熊澤 透
STYLIST :
三好 彩
COOPERATION :
Minotti AOYAMA
EDIT&WRITING :
長瀬裕起子、古里典子(Precious)