アストンマーティンのラインアップの中でも、特に知られた存在であるのが、かつての経営者の名からとったDBシリーズだ。その最新世代である「DB11」は今や希少なV12エンジンを搭載するが、このたびV8エンジン搭載モデルが追加された。もちろん、シリンダー数が減ったからといって、味わいが薄まることはなく、むしろ軽快感が強まった印象だ。本誌冬号でリポートした記事に未使用写真を加え、その魅力を改めてご紹介しよう。

 アストンマーティンは、1913年にロンドンで創業した、イギリスが誇るスーパー・スポーツカーブランド。

  今日までの104年間に製造されたアストンマーティンの総数は、わずかに約8万台。これは、今日の大手自動車会社なら3日もあれば製造してしまう数でフェラーリなど、限られたライバルメーカーと比してもその希少性は際立っている。最も有名な1台を挙げるなら、『DB5』(1963-1965)の右に出るクルマはないだろう。マニアでなくても、ジェームズ・ボンドの駆るボンド・カーとしての勇姿を、ご記憶の方も多いはずだ。『DB5』は、コネリー・ボンド時代の映画『ゴールド・フィンガー』『サンダーボール作戦』などでその勇姿を拝めるが、現行のダニエル・クレイグが演じるシリーズでも、印象的な役割を与えられて『スカイフォール』『スペクター』などに登場する。

 現在、日本で購入可能なアストンマーティンは、ボディ別で概ね4車種。その中でDBの文字列を引き継ぐ最新の『DB11』はツインターボV8とV12の、ふたつのエンジンから選ぶことができる。本誌204ページで紹介した『ヴァンキッシュS』は究極のスーパーGTを名乗るが、『DB11』は名品の正統を受け継ぎ、ひと目でDBシリーズとわかる特徴的なフロントグリルを持つ、スタイリッシュでスポーティな一台だ。「12気筒エンジン」を主力ラインナップに持つアストンマーティンゆえに、当初、V8モデルはどうなのか、という気持ちで試乗に臨んだが、そんな不安は即座に消し飛ぶほど、スポーティな走りにうってつけ。回頭性のよいフロントノーズがワインディングを美しくトレースして、飽くことを知らない。身につけるものすべてにこだわりを持つ紳士、美しいものに囲まれる悦びを知る男の魂を揺さぶり、甘美なる報酬を与えてくれる筈だ。

Aston Martin DB11
アストンマーティン『DB11』

今回は各国のプレスが集う国際試乗会として、スペインのバルセロナ郊外で行われた。それぞれがハンドルを握り、約300kmの工程を走破する
今回は各国のプレスが集う国際試乗会として、スペインのバルセロナ郊外で行われた。それぞれがハンドルを握り、約300kmの工程を走破する
V12よりもコンパクトなV8を前輪の車軸よりも後方、つまり車体中心に近づけて搭載。軽い鼻先は気のせいではないのだ。
V12よりもコンパクトなV8を前輪の車軸よりも後方、つまり車体中心に近づけて搭載。軽い鼻先は気のせいではないのだ。
サスペンションのストロークは短いが、いたってしなやかで、石畳の上でも底打ちするようなことはなかった。ピュアスポーツカーとは異なる、GTらしい懐の深い味付けは、ロングドライブに最適だ。
サスペンションのストロークは短いが、いたってしなやかで、石畳の上でも底打ちするようなことはなかった。ピュアスポーツカーとは異なる、GTらしい懐の深い味付けは、ロングドライブに最適だ。
●ボディサイズ:全長4,739×全幅1,950×全高1,290㎜
●車両重量:1,705㎏
●エンジン:V型8気筒ツインターボ
●総排気量:3,982cc
●最高出力:510PS/6,000rpm
●最大トルク:675Nm/2,000rpm
●トランスミッション:8速AT
●価格:¥20,313,796(アストンマーティンジャパン)
●ボディサイズ:全長4,739×全幅1,950×全高1,290㎜
●車両重量:1,705㎏
●エンジン:V型8気筒ツインターボ
●総排気量:3,982cc
●最高出力:510PS/6,000rpm
●最大トルク:675Nm/2,000rpm
●トランスミッション:8速AT
●価格:¥20,313,796(アストンマーティンジャパン)
  • メルセデス・AMGから供給を受けたV8ツインターボエンジンのカットモデル。無論、独自セッティングだ。
  • スーパーカーとしてはそれほどタイトではなく、十分にラグジュアリーなフィーリングを持つコックピット。後方視界もそれほど悪くないが、ロングノーズに慣れるまでは少々注意が必要
※掲載した商品の価格は、すべて税抜きです。
<出典>
MEN'S Precious冬号「世界紳士の絶対名品」
2017年12月6日発売 ¥1,200(税込)

 

この記事の執筆者
名品の魅力を伝える「モノ語りマガジン」を手がける編集者集団です。メンズ・ラグジュアリーのモノ・コト・知識情報、服装のHow toや選ぶべきクルマ、味わうべき美食などの情報を提供します。
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