私生活よりも、作品中で役を演じているときこそ『生きている』という実感がもてる(横浜流星さん)

俳優の横浜流星さん
 
横浜流星さん
俳優
(よこはま・りゅうせい)1996年、神奈川県出身。2011年俳優デビュー。1月16日より、日曜劇場『DCU』(TBS系/日曜日21時~)がスタート(出演/阿部 寛、中村アン、山崎育三郎、市川実日子ほか)。’22年は1月13日(木)よりNetflix全世界同時独占配信『新聞記者』、2月11日(祝・金)より主演映画『嘘喰い』の全国ロードショーを控えるほか、映画『流浪の月』、主演映画『アキラとあきら』が公開予定。

一度、自分で決めたことは負けずに貫きたかった

俳優の横浜流星さん
ジャケット¥429,000・メッシュシャツ¥107,800・Tシャツ¥100,100・パンツ¥126,500(クリスチャン ディオール<ディオール>)、その他/私物

そこに立っているだけで、美しい存在感を放つ。今、話題作に欠かせない俳優となった横浜流星。どこか翳りのある青年を繊細に演じ、観る人の心に語りかけてくる。そう伝えると、「ああ、ありがとうございます!」と謙虚な笑みを浮かべた。

その彼が現在、全力で挑んでいるのが、ドラマ『DCU』(TBS系)である。海や河川における水中の未解決事件に立ち向かう、潜水特殊捜査隊(架空の組織)の天才潜水士。

「『日曜劇場』はずっとあこがれでしたし、これまでになかった形の題材に、強く惹かれました。隊長役の阿部寛さんとご一緒できることも光栄で、俳優としての在り方を、一心に学ばせていただいています」

喜びは、本作が海外の制作会社との共同製作で、世界配信を見据えた展望にもある。

「日本発のエンターテインメントが世界に広がっていく流れにあって、挑戦的な作品。参加できて幸せですし、やりがいがあります」

しかし撮影前、横浜には決定的な課題があったという。以前、サーファー役を演じた際の練習で、高波にのまれて溺れかけ、恐怖心が強く残った。

「今回、スキューバ・ダイビングの資格を習得するのに必死で……。水中から見上げるきれいな光や、魚の群れに癒やされながら、なんとか克服できたと思います。でも、いざ撮影に入ると、僕のなかにあるトラウマが役と重なる面もあって、これはむしろ生かせるな、と」

俳優の横浜流星さん
 

転んでも、ただでは起きない人らしい。10年前にデビューし、まもなく『戦隊ヒーローもの』の良役を得るが、その後の紆余曲折も、乗り越えてきた強さがあった。

「戦隊ものが終わって、ピタッと仕事がなくなったんです。オーディションに行っても落ち続けて、同世代で活躍している人を見ると、羨ましくて悔しかった。そのうち、『どうせまた落ちるな』と思うようになって……自分を見失っていきました」

しかし投げ出さなかったのは、「小学一年生から習っていた極真空手のお陰です」と話す。中学2年生で世界チャンピオンにまで昇りつめた。

「弱くて泣き虫で、ボコボコにされていたけれど、一度、自分でやると決めたことは貫きたかったんです。幼いながらもプライドがあったんでしょうね。空手をやっていなかったら、きっとどっかで折れていた。今に見ていろよ!と思えたし、結局、自分は自分だと思えるようになっていきました。『継続は力なり』という言葉、好きなんです。やめずに続けていれば、絶対に何かが自分の身に返ってくると、信じています」

外見の雰囲気とは違う。かなりの硬派だ。

「きっと父の影響もあると思います。大工をやっていて、職人気質(かたぎ)なんです。寡黙な人で、そんな背中を見て育ちました。僕の作品を観て、ひと言だけ『よかった』と言ってくれるタイプ。性格的に嘘はつけないから、本当によかったときだけ(笑)。僕も、いつかああいう親になりたいと思っています」

芝居を心から楽しめた瞬間、周囲の雑音が消えた

俳優の横浜流星さん
 

焦りを抱える一方、演技のワークショップなどで自らを磨き続け、20歳になる少し前、映画『青の帰り道』のオーディションで藤井道人監督に見出された。今、横浜が「戦友です」と語る藤井は、横浜演ずる、生きづらさを抱えた青年の怒りや純粋さを、瑞々しく引き出した。

「あれこれ考えずに、今その瞬間を役として生きればいい、と学んで、楽になった。周りの雑音が一切気にならなくなって、変われたな、と思えた作品でした」

やがて年上の教師に恋する『初めて恋をした日に読む話』で、ブレイク。今度は自身を取り巻く周囲の環境が一変し、恐怖を感じたという。

「ここから振り落とされてはいけない。人として役者として、しっかり地に足をつけて生きていこうと、改めて決意したときです」

そして、ドラマ・映画と常に出演作の公開を多数控える人気俳優となった。

この場所から振り落とされてはいけない。しっかり地に足をつけて生きていかなければ、と覚悟しています

俳優の横浜流星さん
 

「僕は、なぜか親のいない家庭で育った役などが多いんです。よくある日常を過ごしてきていない人物……なぜでしょうね」と、愁いを帯びた目で笑う。真摯に受け答えをする強いまなざしと、優しく微笑んだときの差が激しい。自身の内側に、熱情と静けさとを抱えもっている人のようだ。

「器用に見られがちだけど、本当はすごく不器用なんだと思います。だから、撮影中はずっと作品、役だけに時間を費やして、友達と会うこともなくなる。私生活では自分を抑えてしまう部分があるみたいで、心が動きづらいというのか……役を演じて身を削っているときこそが、『生きている』実感をもてる。ようやく名前を知っていただけて、役がもらえるようになった今、ここからが本番だ、という気持ちでいます」

役者デビューから10年目、横浜は新たな地平に立ち、再び駆け始めた。


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クリスチャン ディオール

TEL:0120-02-1947

PHOTO :
生田昌士(hannah)
STYLIST :
伊藤省吾(sitor) 
HAIR MAKE :
永瀬多壱
WRITING :
水田静子
EDIT&WRITING :
小林桐子(Precious)