今、もっとも旬な男の“現在地”に迫る新連載「この人の『現在地』」。

『Precious』3月号では、数々の話題のドラマに出演し、一昨年のラブコメディドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』でも注目を集めた、赤楚衛二さんにスペシャルインタビュー。

端正な装いに秘めた熱い思いを聞きたい!と、その素顔に迫りました。

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ジャケット¥149,600・シャツ¥66,000・パンツ¥95,700・靴¥141,900(ドリス ヴァン ノッテン) ※本誌未公開カット
赤楚衛二さん
(あかそ えいじ)1994年、愛知県出身。2017年『仮面ライダービルド』に出演。話題のドラマに『彼女はキレイだった』(’21)、『SUPER RICH』(’21)、映画に『思い、思われ、ふり、ふられ』(’20)など。Season1の主演を務める最新作『WOWOWオリジナルドラマ ヒル』(全2シーズン各6話)が、’22年3月4日(金)23:00より放送・配信予定。人気ドラマの映画化『チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(東宝系)が、4月8日(金)に公開を控える。

役者とはとても名乗れない。ずっと負い目があった

端正な顔立ちだけではなく、話す声音もきれいな人だ。そして落ち着いた話し方をする。デビューは6年前だが、一昨年、ラブコメディドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』で、同性から恋心を寄せられた青年の心情を、丁寧に繊細に演じて大きく注目された。

「なんとか認めていただけるようになって、うれしいです。でもデビューしたものの、ずっとイバラの道でした」

俳優の赤楚衛二さん
※本誌未公開カット

19歳の時、アパレルブランドのオーディションを受け、グランプリを受賞した。

「今の事務所に声をかけていただいて。この仕事にあこがれは抱いていましたけど、しっかりした決意のないまま、勢いで上京したんです。無知の強さってあるじゃないですか。怖いもの知らずで飛び込んでみようっていう」 

来る日も来る日もオーディションに向かう日々。受けた作品は100をゆうに越えた。

「同じ事務所に、受けるたびに決まる先輩俳優がいて。比べられるし、かたや自分はなんで落ちてばかりなんだと。あまりに落ち続けると、自己肯定感というものが、なくなっていくんですよ。本当にこれで食べていけるようになるのかって……不安だらけで、かなり苦しかったです」

インタビュー_2,ドラマ_2
赤楚衛二さん

仕事が思うように決まらない日々、アルバイトで生活を賄った。「派遣でケータリングの仕事をしたり、バーや居酒屋で働いたりしました。とてもじゃないけれど、役者だなんて胸を張って言えない毎日。負い目でした」

だが、生来の負けん気の強さが赤楚を支えてきた。

「どこかで、負けてたまるかっていう貪欲さは持っていて。オーディションに行っても、この役を演じたいというより、この役を勝ち取ってやる、絶対に自分を認めさせてやる!って。いま振り返れば、よい向き合い方ではないけれど、それも若さというか、今ではああいう時期を経験してよかったと思えるんです」

俳優の赤楚衛二さん
※本誌未公開カット

幼少期。「人を楽しませることが好きな子供」だった。

「お猿さんみたいな感じの子(笑)。ふざけたり、おちゃらけたり、とにかく騒がしくって」と語る彼に、愛らしさの片鱗はあれど、今の繊細な表現力の源泉は見当たらない。だが、月に一度「家族全員が揃って、家で映画を観ていた」という時間が、豊かな感性を育てたようだ。

「王道の『ターミネーター』とか、ヒューマンな『フォレスト・ガンプ』、ホラーなら『エクソシスト』とか……たくさんの作品を観ました。非現実の世界に飛び込める感覚。あの特別なワクワク感は忘れられない……」

俳優の赤楚衛二さん
学生時代、ほしいものはあったけれどなんでも与えられるわけではない。両親の教育は今の僕に活きていると思う。

父親が現在、大学の学長職だと聞けば、教育的で恵まれた育ちを想像させるが、家庭環境はいたって普通だったと本人はいう。

「小学校まではアパートで暮らしていて、自分の部屋もなかったですし。中学は私立に行きましたけど、お小遣いが月に500円だったんですよ。友達とゲーム・センターに行くと、皆がお札を持っていることに衝撃を受けました。1か月間、同級生がゲームをしているのを横から見ているなんていうこともあった」

そして「欲しいものもありましたけど、なんでも与えられるわけではない。ああいう育てられ方をしてよかった、と心から思えるんです」と微笑んだ。

社会に問いかけるような作品に少しずつ出ていきたい

「父は厳しい人ですが、進路については寛容でした。僕が大学在学中、学びたいことは大学にはなくて、好きな芝居という道に進みたいです、と話したとき、『皆、悩みつつ生きがいを見つけていく。早いうちにそれを見つけられたのはよかった』と。まったく反対されなくて意外でしたけど、背中を押してもらいました」

そうして飛び込んだ世界。かくいう『イバラの道』が少しずつ開けてきたという彼が、新たに取り組んだ作品が『WOWOWオリジナルドラマ ヒル』(Season1主演)である。他人に寄生する者たち、その格差社会の闇を描く復讐サスペンスだ。

「人間って、社会という秩序に守られて生きているわけですけど、何らかの理由で追いやられて、世の中の片隅で生きざるをえない人たちがいる。僕の演じた四宮勇気(役名)も、突然、そんな環境に放り出されるんです。ひとり疎外される恐怖や怒り、悲しみ……。これまでとは違った目線で社会を見られて、学びにもなりました」

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赤楚衛二さん

社会派の作品が好きだという。

「俳優は、さまざまな人の感情を演じるもの。これまではエンターテインメントに振り切ったものが多かったのですが、これからは、社会に問いかけるような作品も、やらせていただけるようになりたいです」

取材の最後に、人生でもっとも大切にしていること、を尋ねてみた。

「そうですね……。『対・人』として、いつどんな時、どんな人とでも真剣に向き合っていたいということです。俳優だからどうのということではなく、いつもひとりの人間として、生きていたい」

向ける目は、どこまでも純粋だ。

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どんな時、どんな人とでも向き合うこと。肩書きではなく、ひとりの人間として生きていたい。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

ドリス ヴァン ノッテン

TEL:03-6820-8104

PHOTO :
秦 淳司(Cyaan)
STYLIST :
壽村太一
HAIR MAKE :
増田加奈
WRITING :
水田静子
EDIT :
小林桐子(Precious)