時をデザインするトップジュエラー「カルティエ」が描く、ジュエリーウォッチの革新|『クッサンドゥカルティエ』と共に刻む、極上の未来
2年ぶりに満を持して発表された最新ジュエリーウォッチ『クッサン ドゥ カルティエ』。初披露となるトライアングルセッティングなど、先進的な宝飾技法やアイディアが詰まった話題豊富なコレクションです。
「カルティエ」のタイムピース クリエイション ディレクター、マリー=ロール・セレードが『Precious』に明かした創作秘話を交えて、「カルティエ」のエレガンスの真髄に最接近します!
視覚と触覚を心地よく刺激するクッションシェイプ
イブニングシーンで視線を独占するバイカラーモデルは、ブラックスピネルを逆さに留めた限定品。ローマンインデックスが知的なムードを授けるゴールドとダイヤモンドのモデルは、デイリーユースに最適。
Coussin de Cartier Watch|新たな伝説の始まり|取材・文 本間恵子(ジュエリー&ウォッチ専門 ジャーナリスト)
今年、ウォッチシーンにセンセーションが巻き起こった。ここ数年の多くのスイスブランドは、既存のモデルのバリエーションを出すばかりで、まったく新しいコンセプトのニューモデルの発表はほとんどなかったからだ。ヴェールを脱いだ最新作『クッサン ドゥ カルティエ』は、丸みのある立体的なクッションシェイプ。こんな形のウォッチは、メゾンの過去にもあったのだろうか。
「いいえ、ありません。まったく新しいシェイプです」と教えてくれたのは「カルティエ」のタイムピース クリエイション ディレクター、マリー=ロール・セレード。
「クッサンとはフランス語でクッションという意味で、枕という意味もあります。ですから、まるで頭を枕の上にのせたような心地よさ、官能性をこのウォッチから感じていただけると思います」とセレード。
『パンテール』や『ベニュワール』などの名作とはまた違った、メゾンの新しいシグネチャーウォッチ。ダイヤモンドがグラデーションを描きながら周囲を螺旋状に取り巻き、リュウズにもダイヤモンドが輝いている。指で触れてみると、驚くほど感触はなめらか。立て爪で留めるのではなく、トライアングル形の小さな爪でダイヤモンドを留めているためだ。
「この新しい技術を、私たちは『トライアングル セッティング』と呼んでいます。ダイヤモンドひと粒ひと粒がウォッチケースと完全に一体化するので、触った感じがなめらかですし、見た目も美しいのです。黒いジェムストーンはブラックスピネル。上下逆さまに留めているのですが、キュレット(宝石の下部の尖った部分)を少し丸めた特別なカットを用い、尖りすぎないソフトな触り心地になるようにしました」
デザインの美しさだけでなく、触れたときの感触も楽しめる『クッサン ドゥ カルティエ』。ミニマルに洗練されたコンテンポラリーな造形なのに、その表情はどこか優しく、懐かしい。ローマ数字をあしらった文字盤、ビーズ装飾で飾ったリュウズといった伝統的なデザインコードは、これが「カルティエ」のものだとすぐにわからせてくれる。
「まったく新しいコレクションではありますが、細部にはメゾンのライトモチーフ(芸術の根底をなす思想)が息づいているからです。これまで見たことのないようなものをクリエイトしようとしても、私たちつくり手は、無意識のうちにメゾンが継承するヘリテージともいえる過去に影響されてしまいます。いつも過去と現在を行き来しているわけですね」
手首に『クッサン ドゥ カルティエ』をのせてみると、日本人の華奢な腕にも似合う程よいサイズ。まぶしい輝きを放ちながらも、時間が読み取りやすい。しばらく身につけていると、この最新作が女性のためだけにデザインされたものだということが肌に伝わってくる。
「レディスウォッチは女性に訴えかける何かをもっているべき。審美性、創造性や非凡さがはっきりと表れていることが大事なのです。それに『カルティエ』にとって、ジュエリーとウォッチの間に境界線はありません。私たちはそのウォッチがどんなものであろうとも、ジュエラーの仕事としてデザインしているからです」
どの角度から見ても美しい完璧なシルエット
丸みのあるクッションシェイプのケースを、取り巻くようにセットされたダイヤモンドの縁取り。時間の螺旋性を表現するような美しい流線に乗って、絶妙に大きさを変えたダイヤモンドが輝きを放つ。
華やかなパーティドレスはもちろん、カジュアルなシャツスタイルにも、ちょっとロックなテイストの着こなしにも『クッサン ドゥ カルティエ』は似合う、と言うセレード。「カルティエ」はやはり、ウォッチメゾンである前にジュエラーなのだ。
過去と現在を行き来して生まれた『クッサン ドゥ カルティエ』は、時流やファッショントレンドに左右されることなく、エターナルに愛せる美しさを備えたタイムピース。現在から未来へと受け継がれ、やがて名作として羨望の眼差しを集めることになるに違いない。
※文中の表記は、WG=ホワイトゴールド、PG=ピンクゴールドを表します。
問い合わせ先
- PHOTO :
- 大原敏政(aosora)
- EDIT&WRITING :
- 下村葉月、安村 徹(Precious)
- 取材・文 :
- 本間恵子