「お金で買えない価値がある」というフレーズとともに印象的だった「プライスレス」という言葉。クレジットカード会社のテレビCMで耳にしてからすでに四半世紀が経ちました。今回は日常会話でも使われるようになった「プライスレス」について、正しい使い方や言い換えなども含め、しっかり確認していきましょう。
【目次】
【「プライスレス」とはどんなもの?】
■「プライスレス」の意味
1997年からMasterCard(マスターカード)の広告で使われるようになったのが、「お金で買えない価値がある。買えるものはマスターカードで」というコピーと共に登場した「プライスレス」というキャッチコピーです。VISAと並ぶ世界的なクレジットカード会社が打ち出したこの「プライスレス」は、「お金では買えない価値」や、「値段が付かないほどの価値」を意味します。
■どんなものが「プライスレス」?
家族や友人たちと過ごす時間や貴重な体験、そこにある笑顔や温かさ、かけがえのない愛情、人生を変えるような出来事や転機となった言葉…いずれもその価値には値段がつけられないので「プライスレス」ですね。「プライスレス」とは誰かが決めるものではなく、“自分にとってのプライスレス”が存在するはず。他人にとっては価値のないものでも、自分には「プライスレス」ということもあるでしょう。値段がついている商品でもその金額に収まらない価値を見出せば、その人にとっては「プライスレス」。子どもが描く家族の絵だったり、頑張った自分へのご褒美旅行もしかり!
【「プライスレス」は英語?和製英語?】
新たな価値観ともいえる「プライスレス」ですが、これは英語で〔priceless〕と綴る形容詞で、れっきとした英語です。〔priceless〕には「とても高価な」「お金では買えない」「値がつけられないほど貴重な」「非常に貴重な」といった意味があり、〔She was a priceless help to him〕で「彼女は、彼にとってには計り知れないほどの力になった」と翻訳できます。
日本では「price(値段)」+「less(無)」から「プライスレス」の意味を「無料」と誤解することもあったよう。20世紀末はITバブル盛んな時期で、ある意味「お金さえあれば何でもできる」と勘違いする風潮もありました。そんな時代に「お金では買えない個人的価値」という新しい価値観を見出すきっかけになったのが、この「プライスレス」というキャッチコピーだったのです。
【間違ったら恥ずかしい!「使い方」がわかる「例文」5選】
すっかり浸透した感のある「プライスレス」なだけに、誤用は恥ずかしいですね。ビジネスやプライベートで“いい感じ”に使える例を挙げておきましょう。
■1:「先輩の営業力は成果以上の、プライスレスです!」
■2:「この部署で仕事を学んだ3年間は、私にとってプライスレスな経験でした」
■3:「子どもからの贈り物は、どんなものだろうとプライスレスだ」
■4:「誰にとっても健康でいることはプライスレスといえるだろう」
■5:「高校の3年間、ずっとつくり続けてくれたお母さんのお弁当はプライスレス」
【日本語で言うと?「類語」「言い換え」に「反対語」も!】
■類語・言い換え表現
・かけがえのない ・貴重な ・唯一無二の ・とっておきの ・お金で買えない ・たったひとつの
■反対語
・価値がない ・つまらない ・どうでもよい ・めずらしくない
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今回の「プライスレス」のように、企業や商品を広く認知させ、価値を高めるためにつけられる“キャッチコピー”には名作がたくさんあります。ニトリの「お、ねだん以上。」、ロッテの「お口の恋人」、タワーレコードの「NO MUSIC, NO LIFE.」、西武百貨店の「おいしい生活」──言葉はその意味以上の価値を生むこともあるのです。“大人の語彙力”を磨いて、人の心に響く会話や文章をつくりたいものですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社)/『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)/『情報・知識imidas』(集英社) :