スナップでひもとく!知性と品格の「シャツ・アイデンティティ」

シャツは、シンプルで実用性が高いアイテム。一見モードとは無縁ですが、それゆえに時代を超えて、洗練された人の心をとらえ続けてきました。ファッション史に残る「シャツ」の象徴的なスナップと今、真似したくなる最旬のスタイルを、厳選して解説します!

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◇Catherine Deneuve カトリーヌ・ドヌーヴ(写真左)

1975年の映画『うず潮』のカトリーヌ・ドヌーヴが着ていたのは、ストライプのチュニック丈のシャツワンピース。この時代は「イヴ・サンローラン」のシルクシャツを愛用していた。

◇Lauren Bacall ローレン・バコール(写真中央)

1948年の映画『キー・ラーゴ』のローレン・バコール。「クリスチャン・ディオール」のニュールックの影響か、ウエストを細く絞ったスカートに合わせる柔らかな着方が流行した。

◇Marlene Dietrich マレーネ・ディートリッヒ(写真右)

男装の麗人として一躍有名になったマレーネ。1940年代にはこんなに自然な感じで、シャツ&パンツスタイルを着こなしている。キャサリン・ヘプバーンのカジュアルさと比べて、マレーネのシャツは一貫してエレガントだった。


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◇Diana, Princess of Wales 前ウェールズ公妃ダイアナ(写真左)

地雷除去などボランティア活動に勤しんだ晩年のダイアナ妃。紛争地帯ではボタンダウンシャツにチノパン、ドライビングシューズという活動的なスタイル。1997年ルワンダにて。

◇Diane Keaton ダイアン・キートン(写真右)

1977年の映画『アニー・ホール』では、私服も含めて自らが衣装を選び、マレーネ以来のメンズ服の金字塔に。そのゆるっと気負いのないニューヨーク・トラッドは、後のノームコアにつながる空気を感じさせて。


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◇Carolyn Bessette - Kennedy キャロリン・ベセット=ケネディ(写真左)

1999年、ホイットニー美術館のガラパーティのドレスコードは ”Brite and beautiful Black tie”。キャロリンは「ヨウジヤマモト」のシンプルな白シャツの胸元を深く開け、マーメイドなラッフルスカートを合わせた。これを超えるミニマルエレガントなドレスアップ例はいまだない。

◇Charlie's Angels チャーリーズ・エンジェル(写真右)

1976年に始まったテレビシリーズ『チャーリーズ・エンジェル』。探偵という役柄、シャツの着用率が高く、こんな3ピースを合わせることも。サーファーとニュートラの間をいく、爽やかなL.A.スタイルがブームに。


男性が着るより美しい! 凛とした魅力を託すシャツの変遷

シャツが印象的な往年の女優といえば、ここに挙げた以外にも、キャサリン・ヘプバーン、オードリー・ヘプバーン、ブリジット・バルドーと枚挙にいとまがない。現在のような「襟の付いたシャツ」の流行の始まりが、ハリウッド映画の黄金期と重なったこともあって、その後も時代を象徴する女性たちがシャツを自分らしくまとい、ファッション史を彩ってきた。

では、シャツの美点とは何か?それはまず、清潔感と知性と品格に集約される。

そして背景に記号的に映し出される意味が「男性的である」ということ。さらにいえば「男性が着るより美しく、官能的に見える」ということだ。これも大きな魅力である。

男性の服を着ることは、マドモアゼル・シャネルも提案していたけれど、1930年の映画『モロッコ』で、スモーキングスーツを着て"男装の麗人"をセクシーに演じたマレーネ・ディートリッヒのインパクトは大きい。

1960年代末から始まったウーマン・リブも、シャツがあらゆるスタイルでフォーカスされる一因となった。その一方で、サンローランがシャツをしなやかにドレスアップさせたことも、エレガンスの幅を広げる布石になっているのだ。

そしてなにより、シャツがこれほどまでにタイムレスで、多様な個性に順応できるのは、やはりシャツがシンプルで、ベーシックであるからにほかならない。

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PHOTO :
宇佐美政郁(CASK)
EDIT :
藤田由美、喜多容子(Precious)
写真提供 :
Getty Images