「全能の神」

「――十力の金剛石はきらめくときもあります。かすかににごることもあります。ほのかにうすびかりする日もあります。あるときは洞穴のようにまっくらです」

宮澤賢治の童話『十力の金剛石』には、ある王国の森の花々が、待ち焦がれる存在としてダイヤモンド(金剛石)が描かれている。正体を明かせば、それは露のことなのだが、仏のみが許されている衆しゅ生じょうを救うための十の力を持つ全能の、かつ有機的な存在として登場させたことは、いかにも宮澤賢治らしい見方である。なぜなら鉱物は生きているからだ。

古代ギリシャでは、ダイヤモンドは「神々の涙」と信じられていた。そもそも、ダイヤモンドという言葉からして、無敵、不滅を表すギリシャ語の「アダマス」が、ラテン語に翻訳されて「ディアマス」になったのである。

古代ギリシャ人もまた、ダイヤモンドの中に全能の神が息づくのを見ていたのだろう。

古代のインドは、世界で唯一のダイヤモンド産出国だった。ゴーダーヴァリ川とクリシュナ川下流の「ゴルコンダ」という王国の漂砂鉱床に、のちに伝説的なダイヤモンドジュエリーとなるホープだのコー・イ・ヌールだのが原石で転がっていたかと思うと感慨深い。それらはさぞ大粒で透明だったことだろう。強き者の流す涙のように。

最強にして繊細なその輝きこそ、わたしたちがダイヤモンドに惹きつけられてやまない理由だ。強さの中に揺れる青い炎のような神秘の力を、受け取らずにはいられないから。

文・光野 桃
作家・エッセイスト
1994年に『おしゃれの視線』でデビュー。ファッション、からだ、自然をとおして女性が本来の自分を取り戻すための人生哲学を描く。近著に『自由を着る』(KADOKAWA)、『感じるからだ』(だいわ文庫)など。
光野 桃オフィシャルサイト

神秘的な輝きで魅せる気高きエメラルドカット

神秘的な輝きで魅せる気高きエメラルドカット
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※掲載した商品はすべて税抜です。掲載した情報は2017年3月7日時点のものです。

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戸田嘉昭・唐澤光也(パイルドライバー)