世界的アーティスト・鹿児島 睦の個展が癒される!

本誌11月号の特集「『器』こそ、日常のアート」でもご紹介した、アーティストの鹿児島 睦(まこと)さん。陶芸作品を中心に、テキスタイル、版画など、多ジャンルにわたっての活躍が目覚ましいですが、初の大規模展覧会「鹿児島睦  まいにち」展が、東京で開催されています(来年には静岡、福岡へ巡回もあり)。

  • (画像ともに「鹿児島睦 まいにち」展 PLAY! MUSEUM 会場写真 撮影:植本一子)

作品はもちろん、展示方法もユニーク!

動物や植物をモチーフにした、かわいくて朗らかな器が、鹿児島さんの代表作ですが、この展覧会では、約200点の新作を発表。作品がすばらしいのはもちろん、キュレーションのあり方にも注目です。以前から「器は使うものであり、見るものである」と語る鹿児島さん。その精神を体現するかのように、「あさごはん」「ひるごはん」「ばんごはん」をテーマに、それぞれのブースごとに、作品のテイストも、空間も、違う雰囲気で並べられているのです。

  • 画像ともに「鹿児島睦 まいにち」展 PLAY! MUSEUM 会場写真 撮影:植本一子

さらにファッションやインテリア、フードなど、さまざまなジャンルとのコラボレーションプロダクトを「さんぽ」「おやすみなさい」といった、日常でのシチュエーションとして紹介。鹿児島さんの作品が、アートという領域を越え、いかに人々の暮らしと密接なものとして生まれているかが理解できる、多角的な構成となっています。

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「鹿児島睦 まいにち」展 PLAY! MUSEUM 会場写真 撮影:植本一子

作家・梨木香歩さんが物語を書き下ろし

そして、もうひとつの見どころが、作家・梨木香歩さんとの共同制作。この展覧会のために依頼された梨木さんが、鹿児島さんの器に着想を得て、物語『蛇の棲む水たまり』を書き下ろした、絵本のようなブースです。

驚くことに、制作過程は、展覧会のためにすでに完成していた器を、梨木さんが物語となるよう選び、並べたということ。しかしながら完成されたものを見てみると、あたかもこの物語に合わせたかのように、鹿児島さんの器に登場する生き物が、瑞々しく映し出されています。

物語を読んだ鹿児島さん自身も深く感動し、ラストシーンにふさわしい一枚を、新しく制作されたとか。展覧会では、物語の中心となる森の中の蛇のように並んだ展示ケースをめぐりながら、綴られた言葉と器を鑑賞することができます。

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「鹿児島睦 まいにち」展 PLAY! MUSEUM 会場写真 撮影:植本一子

細部までのこだわりが、見ている者を飽きさせない

最後に、非常にマニアックな楽しみ方をご提案。今回の展覧会において制作された什器にも注目です。器が並ぶテーブルの天面の仕上げ素材や、プロダクト展示のブースを仕切る波板は、鹿児島さんの実際のアトリエにあるものと、同じ素材を使用しているのだそう。つまり鹿児島さんのいる環境に近い空間で、作品を鑑賞することができるのです。

ほかにも、マスキングテープで貼られた作品解説や、鹿児島さんの制作の着想源になっているという私物展示など、細部に至るまで「日常になじむアート」を、軽やかに演出。今の時代を感じさせる、作品展示の枠を超えたプレゼンテーションに、アート鑑賞をしながらも心が和み、ついつい長居してしまいそうです。

鹿児島睦さんのアトリエ 撮影:田附勝
鹿児島睦さんのアトリエ 撮影:田附勝
鹿児島 睦さん
陶芸家・アーティスト
(かごしま まこと)1967年福岡県生まれ。美術大学卒業後、インテリア会社に勤務しディスプレイやマネージメントを担当。2002年より福岡市内にある自身のアトリエにて陶器やファブリック、版画などを中心に制作。日本国内のみならず、L.A.、台北、ロンドンなどで個展を開催、近年では世界中にファンが広がっている。作品制作のほか、国内外のブランドへ図案の提供も行っており、陶器にとどまらずファブリックやペーパーなどさまざまなプロダクトを発表。また、国際的なアートプロジェクトへの参加や、空間への壁画制作など、活動の幅は多岐に渡る。

展覧会詳細

  • 「鹿児島睦 まいにち」展
  • TEL:042-518-9625
  • 会期:開催中〜2024年1月8日(月・祝)
  • 休館日:原則無休 ※年末年始の2023年12月31日(日)〜2024年1月2日(火)を除く
  • 開館時間:10時〜17時(土日祝は〜18時/最終入場は閉館の30分前まで)
  • 会場:PLAY! MUSEUM(東京・立川)
  • 住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟2F
  • 巡回情報:2024年2月24日(土)〜4月14日(日)佐野美術館(静岡・三島)、2024年4月24日(水)〜6月23日(日)福岡県立美術館(福岡)
  • 主催:開催館
  • 企画製作:西日本新聞イベントサービス、ブルーシープ

この記事の執筆者
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画像提供:PLAY!
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湯口かおり
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