牧師の平良愛香(たいら あいか)さんによる、『あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる』。日本で初めてゲイを公表したうえで牧師となった平良さんの半生記を通し、セクシャル・マイノリティーへの差別や生き方についても考えさせられる作品です。
本にするのは怖かった。でも、差別に沈黙するのは加担することと同じ
『あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる』という、示唆に富んだタイトル。沖縄の牧師の家に生まれ、小学校6年生のときの近所で働いていたお兄さんへの初恋を経て、自分が同性に興味があり、それはほかの人とは違うようだと気づいた中学時代。キリスト教の教えのなかで「同性愛者の自分が生きていること自体が罪だ」と苦しんだ高校時代。そして、本当の自分を知ってほしい、自分らしく生きたい、と、勇気を振り絞って友人に、兄弟に、両親に、さらに教会でカミングアウトしていくくだりは、何度読んでもじんとします。
「“私の自慢の息子はゲイです”と書いたTシャツを着るうちの母の話にですか?(笑)セクシャル・マイノリティー、障害、人権、沖縄…。“自分には直接関係ないし、デリケートな問題だから触れないほうがいい”という態度が、本当はいちばん怖いんです。差別が潜在化してしまうから。それよりも、“知らなくて傷つけたらごめん。嫌なことは嫌と教えてね”と言える関係であることが大切なんです。世の中のしくみにNOと言わないことは、そこにある差別に加担しているのと同じこと」と、平良さん。
100人いれば100通りの性があるし、主義主張もある。みんなが納得できる正解を探すのはとても難しい。
「でも僕は、“難しいですよね…”で言葉を結びません。考え、提案し続けなくては」 と、平良さんは語ります。
取材をした日は、抜けるような青空の気持ちのよい日で、平良さんは撮影途中、小さくコードハープを奏でながら賛美歌を歌ってくれました。ガラス窓の向こうに広がる東京の街。神様もゲイも、ここにいる。
『あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる』
日本で初めてゲイであることを公表したうえで牧師になった著者の、ときに苦しく、ときにほほえましい半生記に加え、セクシャル・マイノリティーや人権に関する知識と現状についてまとめた「性と差別にまつわる特別講義」を収録。
- PHOTO :
- 丸山涼子
- EDIT&WRITING :
- 宮田典子・剣持亜弥(HATSU)
- RECONSTRUCT :
- 難波寛彦