日本で一番販売されているクルマが、軽自動車です。価格や維持費、燃費性能にいたるまで経済的で、小さな車体は細い道でも走りやすく駐車場で悩むことも少ないことから、地域によっては家族で複数所有しているケースも。そして、軽自動車が生活の足として支持されている一方で、所有欲をそそり、憧れのクルマとして高い人気を誇るのがラグジュアリー・ミニバン。広くて上質な空間を多人数で共有できることと、存在感のあるスタイルが人気の秘訣といえるでしょう。

実はこのラグジュアリー・ミニバンの選択肢はとても少なく、長きにわたって人気ナンバーワンの座にあるのが、トヨタ アルファード(および姉妹車のヴェルファイア)。今年モデルチェンジした新型をチェックしながら、愛される理由を探っていきます。

アルファードが無二の存在である理由

箱型のボディを流麗に見せるデザイン処理を施した新型アルファード。写真の車両は上から二番目のグレード(以下、同)。
箱型のボディを流麗に見せるデザイン処理を施した新型アルファード。写真の車両は上から二番目のグレード(以下、同)。

クルマに詳しくない方でも、アルファードの名は聞いたことがあるはず。車体が大きく目立つことから、街で見かけることの多い印象のあるクルマです。車体のつくりは、いわゆる「ミニバン」。バンとは商用車のことで、箱型の車体の前方ぎりぎりに乗車空間を設け、後ろはほぼ荷室用に設計されています。荷物を運ぶためのクルマなので快適性はあまり考慮されておらず、荷室は鉄板がむきだしになっていたり、エンジン音や振動が強めに感じられるほか、乗り心地も固め(荷物をたくさん積んだ状態でしっかりと走れる足腰を基準としているため)。

まさに「ザ・仕事グルマ」というべきバンですが、“室内空間が広い”という長所を荷物ではなく乗員のために生かしてつくられたのが、ミニバンなのです。

屋根の高さは2m弱。体をかがめなくても乗り降りできるのが魅力! 過去10年くらい前から設計された機械式駐車場なら、ぎりぎり収まるサイズ。
屋根の高さは2m弱。体をかがめなくても乗り降りできるのが魅力! 過去10年くらい前から設計された機械式駐車場なら、ぎりぎり収まるサイズ。

日本で販売されるミニバンの多くは3列7~8人乗りで、側面のドアは前後スライド式。多人数乗車ができて乗り降りがしやすいことから、ファミリーカーとして絶大な人気を誇っています。なかでもラグジュアリー・ミニバンはエグゼクティブが乗ることを想定した見栄えと贅沢ななつくりで、フォーマルな場にも乗っていける品格を備えています。

ラグジュアリーな資質を備えたクルマづくりで知られるのはドイツ車ですが、欧州では高速道路を200km/h以上で快適に走れる性能が求められるため(“ビジネスパーソン・エクスプレス”という概念)、箱型ボディで空気抵抗が大きく、重心も高いミニバンタイプのラグジュアリーカーはほとんどつくられていません。アルファードは世界的にも貴重なラグジュアリー・ミニバンなのです。

まるでファーストクラス! 「エグゼクティブラウンジ」

座っているときに角度や高さを調整するときはゆっくりと、空席時に3列目へ乗り降りするために動かすときは素早くという具合に、ユーザー目線で電動調整の速度を変えているのもポイント。※この写真と下の写真は「エグセクティブラウンジ」のものではありません  
座っているときに角度や高さを調整するときはゆっくりと、空席時に3列目へ乗り降りするために動かすときは素早くという具合に、ユーザー目線で電動調整の速度を変えているのもポイント。※この写真と下の写真は「エグセクティブラウンジ」のものではありません  
シートの背もたれを倒し、十分に足を伸ばせる状態。ただし、安全上の理由から、走行中にここまで倒すのはNG。
シートの背もたれを倒し、十分に足を伸ばせる状態。ただし、安全上の理由から、走行中にここまで倒すのはNG。

今年6月に新型アルファードが発売されるやオーダーが殺到し、納車にかなりの時間がかかることになりました。自動車を構成する部品である半導体の世界的な供給不足やコロナ禍の影響で、需要に対して供給が追い付かないことが理由ですが、人気モデルの登場とあって市場はヒートアップ。車両登録をしたばかりの、新車同然の中古車(“新古車”という表現は完全な誤りで、車両登録された時点ですべての自動車は中古車扱いになります)が、販売業者の集まるオークションで2000万円という高値を付けたことで話題となりました。ちなみに最上級グレードの新車価格は850万~872万円です。

それほどの注目モデルだけに、新型の出来栄えは確かなもの。一番の魅力である2列目の左右独立シートは、体全体を作りこむ極上の座り心地。最上級グレードの「エグゼクティブラウンジ」ではシート表皮が柔らかい肌触りのプレミアムナッパレザーとなり、足元まで支えるオットマンやアームレストにもヒーターが付くなど、快適機能が満載です。

「エグセクティブラウンジ」のシート。肌ざわりからしてラグジュアリー!(C)TOYOTA
「エグセクティブラウンジ」のシート。肌ざわりからしてラグジュアリー!(C)TOYOTA
従来は点在していた各種スイッチ類やエアコン吹き出し口などの機能を天井の中央に集約。左右にはガラスルーフを装備。(C)TOYOTA
従来は点在していた各種スイッチ類やエアコン吹き出し口などの機能を天井の中央に集約。左右にはガラスルーフを装備。(C)TOYOTA

スライドドアやシェードなどの開閉、室内照明のカラー変更(全64色)などを調節するスイッチ類は天井部分に集約され、それを挟んだ2本のライン状の天井照明が夜間でも手元を優しく照らします。日中は左右個別にシェードを開閉できるガラスルーフが開放感を格上げし、シートの角度を変えてオットマンを展開させれば、ファーストクラスもかくやの贅沢な移動時間が満喫できる仕組みです。

運転が楽しくてエスコートもしやすい

始動ボタンの位置はモニターの右上隣(丸いボタン)。初めは戸惑うものの、ほかの操作も含めて慣れてしまえばとても使いやすい設計。
始動ボタンの位置はモニターの右上隣(丸いボタン)。初めは戸惑うものの、ほかの操作も含めて慣れてしまえばとても使いやすい設計。
モニターに周囲のカメラ画像を映し出す機能や障害物への接近警報も装備し、運転に不慣れなドライバーにも配慮。
モニターに周囲のカメラ画像を映し出す機能や障害物への接近警報も装備し、運転に不慣れなドライバーにも配慮。

新型アルファードの乗り心地は、ほどよく揺れを抑えた安楽志向。車体が縦に長いミニバンは重心が高いため、カーブで横に振られる傾向にありますが、ほどよく引き締まった足腰がそれを抑えています。また、車体を構成する骨格が最新世代にアップデートしたおかげで、走行中の無粋な振動も気になりません。長時間の乗車でも気持ちよく過ごせます。

特等席は断然2列目! といいたいところですが、1列目の快適ぶりも相当なもの。目線が高く、広いガラスから前方がよく見えることを求める方には最適だし、運転席もしっとりとしたハンドルの切れ味や、視認性重視のシンプルで格調高い前面パネル周辺の設えが気分を高め、運転する楽しみを提供してくれます。

普段はたたんで荷室として使うことの多い3列目も頭上や足元の空間をしっかりと確保し、シートサイズも大人の体格に対応したつくり。どの席に座っても感じられる心地良さは従来型譲りなので、それがアルファードの人気を支える一因となっていたことは間違いありませんが、新型ではそうしたおもてなしの工夫が目に見えてブラッシュアップされています。

1列目シートの背面やドアの柱部分に大型のアシストグリップを装備。子供からシニアまで、あらゆる世代・体格の人が快適に乗り降りできるようサポート。
1列目シートの背面やドアの柱部分に大型のアシストグリップを装備。子供からシニアまで、あらゆる世代・体格の人が快適に乗り降りできるようサポート。
スライドドアを開けると電動でせりだすステップを左右に装備。地面からの高さが低くなり(220㎜)、スカートでもスマートに乗り降りできる!
スライドドアを開けると電動でせりだすステップを左右に装備。地面からの高さが低くなり(220㎜)、スカートでもスマートに乗り降りできる!

Preciousカラーも選べる!

こちらが新色のプレシャスレオブロンド。車体が大きいぶん、色が及ぼす印象は大。明るめのブロンドで気分も華やかに!(C)TOYOTA
こちらが新色のプレシャスレオブロンド。車体が大きいぶん、色が及ぼす印象は大。明るめのブロンドで気分も華やかに!(C)TOYOTA

ボディカラーは定番のホワイトとブラックに加え、新色のプレシャスレオブロンドが加わりました。「エグゼクティブラウンジ」グレードなら内装もベージュにすることができ、まさにPreciousな1台に! 

最後におすすめのグレードについて。最上級の「エグゼクティブラウンジ」(ハイブリッド車のみの設定)なら満足できること確実。その次の「Z」はガソリンエンジン車とハイブリッド車から選べますが、おすすめは後者。モーターの力強いアシストと静粛性は、ラグジュアリーなアルファードのキャラクターに合っています。今からオーダーしても納車にはそれなりの時間がかかりますが、それまでじっくりとクルマに合うコーディネートと、おもてなしの心に満ちた旅の宿を考えながら、楽しく過ごしましょう。

内装もベージュを選ぶと品格がさらにアップ(「エグセクティブラウンジ」のみの設定)。黒い内装ばかりのクルマが多いなか、こんな選択肢もあるアルファードは、まさに日本を代表するラグジュアリーカー!(C)TOYOTA
内装もベージュを選ぶと品格がさらにアップ(「エグセクティブラウンジ」のみの設定)。黒い内装ばかりのクルマが多いなか、こんな選択肢もあるアルファードは、まさに日本を代表するラグジュアリーカー!(C)TOYOTA

【TOYOTA  ALPHARD  Z  E-Four】

ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,995×1,850×1,935mm
車両重量:2,160kg
乗車定員:7名
車両本体価格:¥6,420,000

問い合わせ先

トヨタ自動車

TEL:0800-700-7700

この記事の執筆者
総合誌編集部を経て独立。ライフスタイル全般の企画・編集・執筆を手がける。ファッションのひとつとして自動車に関心を持ち、移動の手段にとどまらない趣味、自己表現のひとつとして提案している。
EDIT&WRITING :
櫻井 香