日本で一番販売されているクルマが、軽自動車です。価格や維持費、燃費性能にいたるまで経済的で、小さな車体は細い道でも走りやすく駐車場で悩むことも少ないことから、地域によっては家族で複数所有しているケースも。そして、軽自動車が生活の足として支持されている一方で、所有欲をそそり、憧れのクルマとして高い人気を誇るのがラグジュアリー・ミニバン。広くて上質な空間を多人数で共有できることと、存在感のあるスタイルが人気の秘訣といえるでしょう。
実はこのラグジュアリー・ミニバンの選択肢はとても少なく、長きにわたって人気ナンバーワンの座にあるのが、トヨタ アルファード(および姉妹車のヴェルファイア)。今年モデルチェンジした新型をチェックしながら、愛される理由を探っていきます。
アルファードが無二の存在である理由
クルマに詳しくない方でも、アルファードの名は聞いたことがあるはず。車体が大きく目立つことから、街で見かけることの多い印象のあるクルマです。車体のつくりは、いわゆる「ミニバン」。バンとは商用車のことで、箱型の車体の前方ぎりぎりに乗車空間を設け、後ろはほぼ荷室用に設計されています。荷物を運ぶためのクルマなので快適性はあまり考慮されておらず、荷室は鉄板がむきだしになっていたり、エンジン音や振動が強めに感じられるほか、乗り心地も固め(荷物をたくさん積んだ状態でしっかりと走れる足腰を基準としているため)。
まさに「ザ・仕事グルマ」というべきバンですが、“室内空間が広い”という長所を荷物ではなく乗員のために生かしてつくられたのが、ミニバンなのです。
日本で販売されるミニバンの多くは3列7~8人乗りで、側面のドアは前後スライド式。多人数乗車ができて乗り降りがしやすいことから、ファミリーカーとして絶大な人気を誇っています。なかでもラグジュアリー・ミニバンはエグゼクティブが乗ることを想定した見栄えと贅沢ななつくりで、フォーマルな場にも乗っていける品格を備えています。
ラグジュアリーな資質を備えたクルマづくりで知られるのはドイツ車ですが、欧州では高速道路を200km/h以上で快適に走れる性能が求められるため(“ビジネスパーソン・エクスプレス”という概念)、箱型ボディで空気抵抗が大きく、重心も高いミニバンタイプのラグジュアリーカーはほとんどつくられていません。アルファードは世界的にも貴重なラグジュアリー・ミニバンなのです。
まるでファーストクラス! 「エグゼクティブラウンジ」
今年6月に新型アルファードが発売されるやオーダーが殺到し、納車にかなりの時間がかかることになりました。自動車を構成する部品である半導体の世界的な供給不足やコロナ禍の影響で、需要に対して供給が追い付かないことが理由ですが、人気モデルの登場とあって市場はヒートアップ。車両登録をしたばかりの、新車同然の中古車(“新古車”という表現は完全な誤りで、車両登録された時点ですべての自動車は中古車扱いになります)が、販売業者の集まるオークションで2000万円という高値を付けたことで話題となりました。ちなみに最上級グレードの新車価格は850万~872万円です。
それほどの注目モデルだけに、新型の出来栄えは確かなもの。一番の魅力である2列目の左右独立シートは、体全体を作りこむ極上の座り心地。最上級グレードの「エグゼクティブラウンジ」ではシート表皮が柔らかい肌触りのプレミアムナッパレザーとなり、足元まで支えるオットマンやアームレストにもヒーターが付くなど、快適機能が満載です。
スライドドアやシェードなどの開閉、室内照明のカラー変更(全64色)などを調節するスイッチ類は天井部分に集約され、それを挟んだ2本のライン状の天井照明が夜間でも手元を優しく照らします。日中は左右個別にシェードを開閉できるガラスルーフが開放感を格上げし、シートの角度を変えてオットマンを展開させれば、ファーストクラスもかくやの贅沢な移動時間が満喫できる仕組みです。
運転が楽しくてエスコートもしやすい
新型アルファードの乗り心地は、ほどよく揺れを抑えた安楽志向。車体が縦に長いミニバンは重心が高いため、カーブで横に振られる傾向にありますが、ほどよく引き締まった足腰がそれを抑えています。また、車体を構成する骨格が最新世代にアップデートしたおかげで、走行中の無粋な振動も気になりません。長時間の乗車でも気持ちよく過ごせます。
特等席は断然2列目! といいたいところですが、1列目の快適ぶりも相当なもの。目線が高く、広いガラスから前方がよく見えることを求める方には最適だし、運転席もしっとりとしたハンドルの切れ味や、視認性重視のシンプルで格調高い前面パネル周辺の設えが気分を高め、運転する楽しみを提供してくれます。
普段はたたんで荷室として使うことの多い3列目も頭上や足元の空間をしっかりと確保し、シートサイズも大人の体格に対応したつくり。どの席に座っても感じられる心地良さは従来型譲りなので、それがアルファードの人気を支える一因となっていたことは間違いありませんが、新型ではそうしたおもてなしの工夫が目に見えてブラッシュアップされています。
Preciousカラーも選べる!
ボディカラーは定番のホワイトとブラックに加え、新色のプレシャスレオブロンドが加わりました。「エグゼクティブラウンジ」グレードなら内装もベージュにすることができ、まさにPreciousな1台に!
最後におすすめのグレードについて。最上級の「エグゼクティブラウンジ」(ハイブリッド車のみの設定)なら満足できること確実。その次の「Z」はガソリンエンジン車とハイブリッド車から選べますが、おすすめは後者。モーターの力強いアシストと静粛性は、ラグジュアリーなアルファードのキャラクターに合っています。今からオーダーしても納車にはそれなりの時間がかかりますが、それまでじっくりとクルマに合うコーディネートと、おもてなしの心に満ちた旅の宿を考えながら、楽しく過ごしましょう。
【TOYOTA ALPHARD Z E-Four】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,995×1,850×1,935mm
車両重量:2,160kg
乗車定員:7名
車両本体価格:¥6,420,000
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- TEXT :
- 櫻井 香さん ライフスタイルエディター
- EDIT&WRITING :
- 櫻井 香