実力のある者ほど、それを表面に現さないということをたとえて言うことわざ「能ある鷹は爪を隠す」。ことわざにはさまざまな含蓄があるものです。今回はこの「能ある鷹は爪を隠す」について、ビジネス会話や息抜きの雑談に活用できそうな豆知識をお届けします。
【目次】
- 天才のこと?「能ある鷹は爪を隠す」の基礎知識
- 「使い方」がわかる「例文」5選
- 同じ意味をもつ「類語」や「言い換え」表現
- 「能ある鷹は爪を隠す」と反対の意味は?
- 英語で言うと?「能ある鷹は爪を隠す」の英語版
【天才のこと?「能ある鷹は爪を隠す」の基礎知識】
■読み方
「能ある鷹は爪を隠す」は「のうあるたかはつめをかくす」と読みます。 このことわざを知らないと、「鷹」がちょっと難しいかもしれませんね。
■意味
「能ある鷹は爪を隠す」の意味は、「本当に実力がある人は、それをひけらかすようなことはしない」のたとえです。
■由来
「本当に実力がある人」をなぜ鷹にたとえるのでしょうか? 鋭い爪をもっているから? 鋭い目つきや凶器のような尖ったくちばしも、ただものならぬ雰囲気を醸しているから? 当たらずとも遠からず、このことわざは、鷹の習性に由来します。鷹は鋭い爪で獲物を捕まえますが、普段はその爪を足の内側に隠しているのです。そして獲物に近づいた瞬間にさっと爪を出し、身動きがとれないような力でがつっと刺し掴むのです。もし、鷹が常に鋭い爪を出していたら、獲物になるネズミなどの小動物も警戒し、捕獲が難しくなるはずです。厳しい自然環境に生きる野生の動物は、確実に獲物を捕獲して生き延び、種を継続させるための知恵を身に着けるのですね。
そんな賢い鷹の習性を用い、「実力のある者はそれを見せびらかしたりしない」という意味のことわざが生まれたのです。「能ある鷹は爪を隠す」ということわざは古くから使われていたようで、戦国時代から安土桃山時代に生きた武将、北条氏直(ほうじょううじなお)による『北条氏直時分諺留(ほうじょううじなおじぶんことわざとめ)』にもその記載があるのだそう。鷹は、戦国武将にとって身近な存在だったことも、このことわざ誕生のきっかけになったのだかもしれません。
【「使い方」がわかる「例文」5選】
■:「普段は口数が少なく大人しい印象だけど、プレゼンテーターとしての彼女のトークは絶妙だ。能ある鷹は爪を隠すと言うけれど、驚いたよ」
■:「その実力が確かなものでなければ、能ある鷹は爪を隠すとは言わない」
■:「いざというときに頼りになる人は、能ある鷹は爪を隠すタイプの人が多い」
■:「彼があんなに中国語を喋れるなんて、能ある鷹は爪を隠すとはこのことだね」
■:「能ある鷹は爪を隠すもの。たとえ実力があってもそれを鼻にかけるようでは尊敬はできないね」
【同じ意味をもつ「類語」や「言い換え」表現】
「能ある鷹は爪を隠す」には似たことわざがいくつもあります。
■上手の猫が爪を隠す(じょうずのねこがつめをかくす):実力のある者は容易に手腕を表さない、それをむやみにひけらかしたりしない、ということのたとえ。「鼠を捕る猫は爪を隠す」や「猟ある猫は爪を隠す」も同じです。
■大賢は愚なるが如し(たいけんはぐなるがごとし):非常に賢い人は知識を表面に見せないから、一見しただけでは愚かな人のように見える、という意味。「大智は愚の如し」も同じです。
【「能ある鷹は爪を隠す」と反対の意味は?】
■吠える犬は噛みつかぬ:吠えることで強く見せるのは、実力のなさを露呈しているようなもの。自信のなさを露呈したことわざです。「能無し犬の高吠え」や「泣く猫は鼠を捕らぬ」も同じ意味ですね。反対に「食いつく犬は吠えつかぬ」と言ったら、「能ある鷹は爪を隠す」と同義になります。
■浅瀬に仇波(あさせにあだなみ):思慮の浅い者ほど大騒ぎをすることのたとえ。
【英語で言うと?「能ある鷹は爪を隠す」の英語版】
実は、「能ある鷹は爪を隠す」という意味のことわざが英語圏にもあるのです![Still waters run deep.]がそれ。直訳すると「静かに流れる川は深い」です。これは、表面的に穏やかに見えるが、実は秘めた大きな力をもっている、ということ。内気で口数が少ない人について言うときにも使われます。また、[Cats hide their claws.]も、「上手の猫が爪を隠す」「能ある鷹は爪を隠す」と同義です。
***
「能ある鷹は爪を隠す」は、他人の評価に使うことわざです。「私って、能ある鷹は爪を隠す、だから…」なんて言ったり思っている人、使い方が間違っていますよ!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『ことわざを知る辞典』(小学館)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :