富裕層の移動手段が馬車から自動車へと変わりつつあった20世紀初頭、先進技術を積極的に取り入れ、匠の手しごとで新世紀のラグジュアリーを創造したのが、英国のロールス・ロイスです。その誇り高き開拓者精神によって形作られるハイエンドカーは、いずれも美しく、格調高く、静かで、パワフル。そんな名門ブランドが2020年代を生きる私たちに向けて発信するのが、最新モデル「カリナン・シリーズII」です。
日本での初公開に合わせて来日したロールス・ロイス・モーター・カーズのアジア太平洋リージョナル・ディレクター、アイリーン・ニッケインさんに、自動車をめぐる現代的なありかたや女性オーナードライバーの意識変化などを語っていただきました。
精神的に自立した女性でありたいと願っていた
アイリーン・ニッケインさん
ロールス・ロイス・モーター・カーズ アジア太平洋リージョナル・ディレクター
インドネシア出身。シンガポールのRMIT大学で経営学を専攻。卒業後はMINIジャパンにおけるブランド・コミュニケーション&プロダクト・マネジメントの責任者を皮切りに、BMWグループ・アジアで約15年間にわたり上級職を務める。2021年より現職。
大学でマーケティング専攻の学士号を取得したアイリーンさん。自動車業界でのビジネスを選んだ理由として、自身の性格に合っていることを挙げてくれました。
「私は外交的でものごとに対しはっきりものをいうタイプです。頭の中で考えるだけでなく、実際に行動を起こすことが大事だと考えていますし、若いときから精神的に自立した女性でありたいと願っていました。自動車ビジネスの世界は男性の割合が多く、それは決して悪いことではないと思っています。むしろそうした環境に身を置くことで、自分らしく自然にふるまえるのではないかと考えたのです。
そしてなによりも、私は運転することが大好き。“走る喜び”を謳うMINIやBMWでキャリアを重ねることができたのは、快活なライフスタイルを楽しむ私の性格に合っていたのでしょうね」
仕事を楽しむ女性が成功の証として選ぶ「カリナン」
レストランやホテルのエントランスに横づけしたサルーンからショーファー(運転手)が後席のドアを開け、イブニングドレスに身を包んだ女性をディナージャケットスタイルの男性がエスコートする――。これが、ロールス・ロイスのパブリックイメージではないでしょうか。フォーマルな場でゲストを引き立てる“格”は、英国の名門だけが成しえるものに違いありません。
一方で、近年は自身でロールス・ロイスのハンドルを握るオーナーの増加、そして女性ドライバーが顕著な傾向にあると、アイリーンさんは語ります。
「『カリナン』が初めて登場した2018年頃は、ご自身でハンドルを握るお客様は70%未満でしたが、現在ではほとんどがオーナードライバーで、運転手を利用するお客様は10%を下回っています。また、女性のオーナードライバーも増えています。それは成功を収める女性が増えていることと無関係ではないと思います。女性が活躍できる環境が整ってきたなかで、彼女たちが仕事を楽しみ、成功の証として『カリナン』で主張したいという意志を持っているからではないでしょうか。実際に、私は日本のお客様でそうした女性と何人もお会いしています。夫やパートナーに買ってもらって助手席に乗るのではなく、自分で手に入れてハンドルを握る。そんな女性は確実に増えているのです」
ビスポークで自分だけのストーリーを刻む悦び
ファッションの歴史において注文服が前提だったように、ロールス・ロイスも昔は基本となる車体に顧客の嗜好を反映した上屋を架装していました。そして、現在も充実したビスポークのメニューが用意されています。好みの内外装を合わせることができ、ライフスタイルに合うオプションも多彩。ショールームに展示される車両は見本であり(もちろんそれ自体を購入することも不可能ではありません)、購入者は自分だけの一台をイメージしながら、製作を依頼するのです。
「ビスポークとは自分らしく生きるための表現手段であり、ロールス・ロイスはあらゆるオーダーに応える技術と環境を整え、お客様のイメージを具現化するお手伝いをします」
具体的にはどんなアプローチができるのでしょうか?
「自動車はファッションとしても重要な意味を持っています。まずはハンドバッグをオーダーするのと同じ気持ちで色を選んでください。そして運転中に目に触れる部分、シートやインテリアのファブリックを繊細な刺しゅうでデザインしてはいかがでしょうか。オーダーを受けたのち、英国のファクトリーで熟練の職人が時間をかけて仕上げます。そうしてお客様だけのストーリーが刻まれた一台が完成し、仕事や旅でハンドルを握りながら想いを重ねていくのが、とても幸せな時間になると思います」
今回のお披露目の場に用意された「カリナン・シリーズII」の展示車両は、アイリーンさんが「流行に左右されず、季節も選ばないおすすめの色です」と話すとおり、今の時代に合ったミニマルな印象を与えます。外装に豪華な縞模様の茶色い大理石からインスピレーションを得たグレー・ブラウンの“エンペラドール・トリュフ”という新しい車体色で、来場したメディア関係者を魅了していました。
「私は以前、日本に住んでいたことがあります。はじめ、日本の皆さんは真面目で感情を表に出さないように見えました。でも、実際は創造性に富み、人生を楽しむ術を知っていることに気づきました。英国のファクトリーでは、私たちが予想もしなかった大胆な色使いで製作されている車両を目にしたことがあります。聞くと、日本のお客様がオーダーしたものでした。これからもっと日本の女性が、独創的で美しい仕様をオーダーしていただけることを期待しています」
移動する道具としての自動車なら選択肢は膨大にありますが、ロールス・ロイスには心をくすぐる歴史と伝統があり、それはキャリア女性にとってもまぶしく映ります。アイリーンさんの言葉を胸に、皆さんも珠玉の一台を仕立てて人生を楽しんでみませんか?
【Rolls-Royce Cullinan SⅡ】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:5,355×2,000(ドアミラー含まず)×1,835mm
車両重量:2,725kg
車両本体価格:¥46,454,040~(税込み)
※上記価格はスタート価格であり、カスタマイズによって変動します。
問い合わせ先
- TEXT :
- 櫻井 香さん ライフスタイルエディター
- PHOTO :
- 黒石あみ 車両写真提供/ロールス・ロイス・モーター・カーズ