連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介している連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、絵画や彫刻など多彩なジャンルで作品を発表しているアーティストのエリカ・エルマンさんに注目。

出産、育児、離婚を経て、50代でアーティストデビューし、さらに「エナジー・トレーナー」という資格を取得し、人生の岐路に立つ女性に向けたワークショップも開催しているエリカさんの活動について、お話しをうかがいました。

エリカ・エルマンさん
アーティスト、エナジー・トレーナー
(Erika Ehrman)日本人の母とドイツ系ユダヤ人の父のもと、N.Y.のアッパーイーストサイドに生まれ育つ。大学卒業後はCMディレクターとして活躍。ふたりの子供をもうけた後、一時休職。コロナ禍でのパンデミックの時期に絵を描き始め、本格的なアーティスト活動をスタート。’22年に初個展を開催。絵画、彫刻など多彩な分野で作品を発表している。

【New York】人生の岐路で手にした絵筆に救われアーティストとして新たな道を邁進

エリカ
アーティスト、エナジー・トレーナーのエリカ・エルマンさん

50代になってからアーティストとしてデビューしたエリカさん。絵画や彫刻など多彩なジャンルで表現を行うなか、代表作として知られるのが、顔を白い面で覆ったような人物が登場する「UN-SEEN」という作品群だ。

「私の母は日本人で、1960年代に単身N.Y.に渡り、ファッションデザイナーとして活躍した人でした。亡くなった後に、彼女の若い頃の写真を見てインスピレーションを受け、作品の素材にしたんです。母の謎めいた人生をたどって、私自身のルーツやアイデンティティを探すことが重要だった。人物の顔を白くしたのは、観る人がそこに自分の思う顔をはめ込むことができると考えたからです」

両親が営んだブランドを引き継ぐ選択肢もあったエリカさんだったが、大学卒業後はCM制作の世界へ。プロデューサーとして30年以上のキャリアを築いた。転機は、ふたり目の息子の誕生。彼に重いアレルギーと持病があったため、しばらく仕事を離れることに。

「子育てが一段落して復職してみれば、CMの世界はフィルムからデジタルへ大変革が起きた後。取り残された気持ちになりました」

新しい道をと、母親が残したレーベルでのビジネスに挑戦するも難航。離婚も重なった。

「出口が見えない毎日のなかで、ふと、息子が使っていた絵筆を手に取り、絵を描き始めたんです。すると、心の中がどんどん整理されていった。ちょうどコロナ禍での巣籠りも重なって、絵を描くことに夢中になりました」

'22年に開催した初の個展では作品が完売。

「アジア系アメリカ人であり、女性であり、母親であることが、私の作品に成熟と魅力を添えているのだと自分自身でも感じています」

エリカさんは「エナジー・トレーナー」という資格をもっていて、人生の岐路に立つ女性に向けたワークショップも開催している。

「私自身、絵筆を取ったことで、迷いから再び立ち上がることができた。そのきっかけをつくる手助けができればと願っています」

◇エリカ・エルマンさんに質問

Q.朝起きていちばんにやることは?
毎日、目が覚めたらまず日記を書くことを習慣にしています。書くことで頭が整理されて、一日がスムーズに始まるような気がします。
Q.人から言われてうれしいほめ言葉は?
「あなたの作品を理解できる」という共感の言葉が、今はなによりもうれしく感じます。
Q.急にお休みがとれたらどう過ごす?
旅に出ます。
Q.仕事以外で新しく始めたいことは?
料理が大好きなので、きちんと極めてみたいと思っています。
Q.10年後の自分は何をやっている?
たぶん、N.Y.以外のところ、どこか自分にとって新しい場所に住んでいると思います。
Q.自分を動物にたとえると?
気高い猫、でしょうか。

PHOTO :
Masahiro Noguchi
EDIT&WRITING :
剣持亜弥、喜多容子・木村 晶(Precious)
取材 :
Junko Takaku