【目次】
- 「針供養」って何?超シンプル解説
- いつやるの?12月8日・2月8日の秘密
- 自宅でもできる!正しい針供養のやり方
- 針供養の日に食べたい幸せごはん
- 針供養のトリビア
- 心と暮らしが豊かになる道具供養のススメ
【「針供養」って何?超シンプル解説】
「針供養(はりくよう)」とは、2月8日と12月8日の両日、もしくはどちらかの日に、「お針さま」を供養する行事です。針仕事をする女性を労い、裁縫の上達を祈る行事でもあります。
「お針さま」とは、日ごろの針仕事で折れたり曲がったりして、使えなくなった縫い針のこと。そして「供養」とは、仏や死者の霊に食物・灯明・香・花などを供え、読経などで、とむらうことを意味していますよ。
【いつやるの?12月8日・2月8日の秘密】
針供養は、地方や地域によって、2月8日、または12月8日に行われます。このふたつの日は、古くから「事八日(ことようか)」と呼ばれ、季節の節目となる大切な日とされてきました。「事八日」は、ものごとを納める「事納め」と、ものごとを始める「事始め」の両方の意味をもち、「事」が何を指すかで、12月と2月の意味が変わってくるのです。
・正月を中心に据えると……年神様を迎える準備を始める12月8日を「事始め」、2月8日を「事納め」とする
・農業が盛んな地域では……田の神様を迎える2月8日が「事始め」、12月8日を「事納め」とする
一般に、関西地方では12月8日に、関東地方では2月8日に、「事始め」として「針供養」を行う地域が多いようですが、2月8日と12月8日、両方の日程で針供養を行う地域もあります。「事八日」は「慎みをもって過ごす日(物忌みの日)」とされ、「仕事を休んで道具を休ませる」という習慣がありました。針供養もそのひとつとして、裁縫の手を休め針を供養する文化として定着したのです。
【自宅でもできる! “正しい”針供養のやり方】
「針供養」とは、針仕事を休んで古い針を供養するイベントです。寺社に参詣できない場合は、自宅でも行えます。ごく大雑把に言えば、「仕事を休んで道具に感謝する日」ですから、肩肘張らずに行うのがいいですね!
■基本のステップ
前提として、自宅で針供養を行う場合も「事八日」である12月8日もしくは、2月8日に行います。
1)お豆腐、またはこんにゃく、もちなど、「柔らかいもの」を用意する。白い紙(半紙など)もあるといい
2)用意した「柔らかいもの」をお皿に乗せる
3)使えなくなった針を、感謝の気持ちを込めてお豆腐などに刺す
4)仏壇などがあればそこに置き、「今までありがとう」「お疲れ様」と、心の中で唱える。
供養を終えたら、最後に針を処分するのですが、実はここがいちばん、大切なポイントです!
・可能であれば、針供養を行っているお寺や神社に納める(これが最も丁寧です)
・お清めの塩を振ってから、自分が住む地域の自治体のゴミ出しルール(不燃ごみ等)に従って出す。
その際、紙に包んで「針」と明記するなど、必ず自治体のルールを守りましょう。
【針供養の日に食べたい“幸せごはん”】
地域によっては、針供養が行われる「事八日」には、「お事汁(おことじる)」を食べる習慣もあります。
■「お事汁」って?
「事八日」の無病息災を願って食べる「お事汁」は、野菜たっぷりの味噌汁です。ごぼう、にんじん、里芋、大根、こんにゃく、小豆と、6種類の具材を入れるので「六質汁」とも言われます。 具だくさんで栄養豊富なうえに寒い季節に体の芯から温まるため、心と体に効くと考えられたのです。
小豆: 赤い小豆には「魔除け」の力があると信じられていました
根菜: 寒い時期に体を温め、無病息災を願う知恵が詰まっています
味噌汁が、暮らしの節目である「事八日」に用いられているのは、味噌汁が日本の食文化に根ざした象徴であるからだと言われています。地域によって入れる具材は異なりますので、冷蔵庫の中にある野菜を使って、オリジナルの「お事汁」をつくってみてもいいですね。あまり堅く考えず、カジュアルにいきましょう!
【針供養のトリビア】
■「針供養」の「由来」は?
「針供養」の起源は諸説ありますが、中国の農耕祭礼である「社日(しゃにち/土地神の祭日)に針線(針仕事)を止む」という古い慣わしが、9世紀頃に日本に伝わったことが由来ともいわれています。
日本での針供養は、平安時代(9世紀後半)に清和天皇によって、京都西京区の法輪寺に針を納める堂が建立されたことに始まるようです。各地への普及は、和歌山市加太 (かだ) の淡島神社の淡島願人 (がんにん) が広めたとも、江戸時代後期から明治時代にかけて、裁縫学校などで技能の上達を祈って行われたのが定着した、ともいわれています。
■「針供養」の総本山は? 淡島明神ってどんな神様?
針供養で特に有名なのが和歌山市の加太(かだ)にある淡嶋神社です。祭神である「少彦名命(すくなひこなのみこと)」は、医薬の神様で、特に女性の病気回復や安産・子授けなどに霊験あらたかといわれています。また、裁縫の道を初めて伝えた神様とされ、毎年2月8日には「針祭(針供養)」が行われています。淡嶋神社は俗に淡島明神 (みょうじん)、淡島様とも呼ばれていますよ。
■なぜ「道具」を供養するの?
日本には古くから「付喪神(つくもがみ)」という考え方があります。百年を超えて使われた器物(道具)には精霊が宿り、人に害を加えるという俗信から生まれたもので、「付喪神」はその精霊や妖怪化した存在。九十九神と表記されることもあります。
「道具も100年使えば魂が宿る」「大切に使われたものには神様が宿る」と考えられていたのですね!
今でこそ、針は百円ショップでも手に入るものですが、針が手作業でつくられていた時代、縫い針はとても高価なものでした。江戸時代の庶民は着物を新調することはほとんどなく、古着を繰り返しリメイクし、最後は雑巾になった布がボロボロになるまで、可能な限り再利用していました。裁縫道具は、嫁入り道具のひとつでもありました。そのため、縫い針は生活に欠かせない、とても身近で大切な道具だったのです。「お世話になった針を供養したい」という気持ちになったのも、当時の人たちにとっては自然なことだったのではないでしょうか。
■どこの寺社でも針供養行事をやってる?
「針供養」はすべての寺社で行われる行事ではありません。たとえば東京で針供養を行っているのは、浅草寺(台東区)、正受院(新宿区)、富岡八幡宮(江東区)、森巖寺(世田谷区)など。大阪では、大阪天満宮、太平寺で行われています。事前に郵送で受け付けてくれる寺社もあるようです。必ず事前に公式ホームページなどで確認してくださいね。
■「針供養」には、なぜこんにゃくや豆腐が使われる?
使い古した針に「お疲れさまでした」「ありがとうございました」という感謝の気持ちをこめて、最後くらいは針が安らげるように、柔らかいこんにゃくや豆腐に刺して「休んでほしい」という気持ちがこもっているのではと言われています。
■郵送でもお願いできる?
寺社によっては、針供養の日程にあわせて古針を郵送すれば、供養してもらえるところもあります。
初穂料の送金が必要となることや、針供養の日程により、郵送期限が決まっていることもあるため、必ず事前に正確な情報を調べてから郵送することをおすすめします。
また、裁縫道具を取り扱うお店や和裁教室などでは、時期に関係なく、使い古した針の回収を行っているところもあります。回収された針を「針供養を行う神社、または寺院で供養してもらっている」というところもあるので、確認してみるのもひとつの方法です。
【心と暮らしが豊かになる“道具供養”のススメ】
現代では、裁縫を日常的にする人は減ってしまいましたが、「針供養」のコアなコンセプトは、「自分の仕事を支えてくれたパートナー(道具)への感謝を表す」こと。「針」を私たちの生活に当てはめてみると、使い古したペンや、使えなくなったキーボード、型が古くなってしまったPCやスマホ、切れ味の落ちたハサミや包丁に感謝する「道具供養」ととらえることもできますね!
「使えなくなったらゴミ箱へポイッ!」ではなく、紙で丁寧に包んで感謝のひと言を添えて処分するだけでも、心の在りようが変わります。
「物を捨てる」という作業といえば「断捨離」をイメージしますが、「断捨離」は「物への執着を捨てる」ことによるスッキリ感が得られるものですが、「道具供養」は「共に歩んでくれた道具への労りと感謝を示す」行為。単なる「廃棄」とは異なる、前向きな充足感が得られるのではないでしょうか。
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「針供養」とは、使い込んで傷んでしまった針を供養する行事です。「針」という道具を単なるゴミとして捨てるのではなく、「お疲れさま」と感謝して労る、日本人らしい感性が表れた優しい風習ですね。これからは、スマホやPCを処分する際には、データを消去した後に画面をきれいに拭いて、「お世話になりました。ありがとう」と心で唱えてみてはいかがでしょう。これが今を生きる私たちらしい「針供養」のスタイルかもしれません。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料: 『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /花葬儀「針供養とは?意味や行う日、神社・自宅での供養方法をわかりやすく解説」(https://www.hana-sougi.com/blog/harikuyo/) /浅草寺「針供養会」(https://www.senso-ji.jp/annual_event/06.html) /農林水産省「わが家の行事食」(https://www.maff.go.jp/kyusyu/syokuryou/syokubunka/attach/pdf/net-27.pdf) /味の素株式会社「2月8日の「事八日」には 6種の具材で“お事汁”」(https://www.ajinomoto.co.jp/hondashi/misoshiru/ouen_okotojiru/index.html) /淡嶋神社(http://www.kada.jp/awashima/) :

















