【目次】

「北方領土の日」とは? なぜ2月7日なの?】

今回は「北方領土の日」にちなみ、北方領土について簡潔に解説していきます。

■まず…「北方領土」とは?

北方領土とは北海道の北東に位置する4つの島、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島を指します。現在も続く日本とロシア間の大きな外交課題であり、日本人にとって非常に重要な歴史・地理的テーマです。

■なぜ問題なの?

これらの島々について日本政府は「日本固有の領土であり、第二次世界大戦後にソ連(現在のロシア)によって不法に占拠された」と説明しています。現在はロシアが実効支配しているため、両国の間で長年「領土問題」として議論が続いています。

■歴史的背景

  • 江戸時代、島に渡って開拓や漁業を行っていたのは日本(当時の和人)でした。安政元(1855)年、日本とロシアの間で平和的・友好的な形で調印された日魯通好条約は、当時自然に成立していた日本側の択捉島とソ連側のウルップ島の間の国境をそのまま確認したものです。

  • しかし、第二次大戦末期の昭和20(1945)年8月9日、ソ連は、当時まだ有効であった日ソ中立条約に違反して対日参戦し、日本がポツダム宣言を受諾し、降伏の意図を明確に表明した後の同年8月28日から遅くとも9月5日までの間に北方四島の全てを武力占領。1946(昭和21)年2月2日、ソ連は四島を一方的に自国領に編入し、昭和23(1948)年までに四島に居住していた日本人約1万7000人を強制退去させました。ソ連による占拠は現在も続いています。

■日本の姿勢

・四島すべて日本固有の領土である。

・帰属の問題を解決し、ロシアと平和条約を結ぶ。

■「北方領土の日」はなぜ2月7日なのか

2月7日は日魯通好条約が調印された日。北方領土問題に対する国民の関心と理解をさらに深め、返還運動のいっそうの推進を図るためにこの日を「北方領土の日」に制定しました。


【北方領土ってどこ?正しい「読み方」はわかる?基本の地理と歴史をおさらい】

北方四島を正しく読めますか? 漢字で書けるでしょうか? 正解は、択捉島(えとろふとう)、国後島(くなしりとう)、色丹島(しこたんとう)、歯舞群島(はぼまいぐんとう)です。北海道の地名の約8割がアイヌ語の音に漢字を当てたもの。馴染のある音訓読みとは違うこともあり、読むのも書くのも難しいところがありますね。

さて。北方領土は北海道全体で見ると本島の東側に位置します。北海道東端の根室海峡から、カムチャッカ半島南端の千島海峡まで連なる島々を千島列島と呼びますが、日本政府は北方四島は「千島列島に含まれない」としています。

千島列島は北東諸島とも言い、ロシア語ではクリル列島と呼ばれていますが、その全島がソ連及びその継承国であるロシア連邦の実効支配地域。日本政府は千島列島を帰属未定地(帰属が確定していない地域)としています。


【素朴な疑問:なぜいまも“返還されない”?】

北方領土が日本に返還されない理由は大きく3つ。それぞれ簡潔にまとめてみましょう。

■ロシアの軍事・安全保障上の理由

ロシアにとって、北方領土は「太平洋への出口」を守るための軍事的な要所です。

オホーツク海は、核ミサイルを積んだ潜水艦を潜ませる「聖域」のような場所。北方領土を日本に返すと、その周辺海域が敵(アメリカや日本)の通り道になり、監視されてしまうことを恐れているといわれています。

  • また米軍基地への懸念もあります。日本に返還したら、日米安全保障条約に基づいて(日本領地である四島に)米軍基地がつくられるのではないかという警戒も指摘されています。日本側はこれを否定していますが、ロシア側は納得していません。

■ロシアの国内事情

  • 2020年の憲法改正で「領土の割譲(他国に譲ること)を禁止する」という条文が加わったロシア。これにより、大統領であっても領土を返還することが法律的に難しくなってしまいました。

  • さらに世論の反対も根強く、ロシア国内ではいまだに「第二次大戦の結果として得た正当な領土だ」という教育が。四島を日本に返還することは「敗北」や「屈辱」と捉える国民が多いといわれています。

■国際情勢の影響

2022年2月24日、ロシア連邦が軍事侵攻したことによって始まったウクライナ侵攻。日本は欧米諸国とともにロシアへ経済制裁を行いましたが、ロシアはそれに猛反発。日本とロシアで長年続いていた平和条約交渉を一方的に中断すると発表しました。これにより北方領土問題の状況はさらに悪化したのです。

日本から元島民が北方四島へ訪れる際はビザ免除で渡航できましたが、その交流も中止。対話の窓口がほぼ閉ざされている状態なのです。


【素朴な疑問:世界と日本にとって「領土問題」ってなぜ問題?】

日本には北方領土以外にも、島根県の竹島(韓国が実効支配)、沖縄県の尖閣諸島(中国と台湾が領有権を主張)という領土問題を抱えています。領土問題の焦点は3つ。ここはしっかり押さえておきましょう。

■領土問題1:主権

どこの国も、領土は国の形を決める重要な要素です。その主権を守れずにいると、「ほかの地域も他国に奪われるのではないか?」という感情が生まれ、国民に不安が広がりかねません。

■領土問題2:資源

領土そのものだけでなく、その周囲の海域が重要です。「排他的経済水域(EEZ)」はニュースでよく聞きますよね。これは島を領有することでその周囲海域で漁獲したり、天然ガスや石油などの海底資源を掘削する権利を得るもの。資源は国の財産ですから大変重要な問題なのです。

■領土問題3:安全保障

領土は「盾」や「見張り台」の役割を果たします。領土ならレーダーを置いて敵の動きを監視することができますが、その土地が他国のものならこちらが監視される可能性が。また、船や潜水艦などが行き来できるルートの確保にもかかわっています。


北方領土は重要かつデリケートな問題です。インターネットやSNS上にはさまざまな情報が存在します。ひとつの視点に偏ったり、声の大きさにとらわれたりせず、自分で考え続けることが大切です。経験や判断能力の低い若年層はとくに気を付けなければいけませんね。

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江戸時代以前から、北方領土を含む千島列島や北海道本島には先住民族のアイヌの人々が暮らし、日本(当時の和人)も彼らと物資の交換などの交易を行っていました。江戸時代になると幕府や松前藩が本格的に調査や管理を始め、第二次大戦終戦時には約1万7000人もの日本人が居住していました。そんな歴史をもつ北方四島のことを、「北方領土の日」をきっかけに考えてみてはいかがですか?

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/世界大百科事典』(平凡社)/外務省( https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/day/index.html )/外務省:北方領土( https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hoppo/index.html )/内閣府北方対策本部( https://www8.cao.go.jp/hoppo/index.html ) :