軍用車ベースのタフなキャラクターで世界的な人気を誇るメルセデス・ベンツ Gクラスがモデルチェンジし、日本でも正式に発表された。このクルマは中古市場でも高額で取引されていて、しかも買い手の多くはいわゆるカーマニアではない。その理由を探る。

Gクラスはファッションだ!

新型メルセデス・ベンツ G550

こちらが最新のGクラス。価格は1562万円〜。
本格オフローダーであることに変わりはなく、スペアタイヤは背面に付く。

 最新のGクラスはスクエアなフォルムこそ変わらないものの、全長が53ミリ、全幅は64ミリ大きくなり、フェンダーやボンネット、ドアがアルミ製になった。ライトはLED化され、ステアリングも電動アシスト式に。センターパネルには12.3インチのツインワイド液晶モニターが鎮座し、一気にモダンになった。また、メルセデス・ベンツにふさわしい、先進の安全装備が付いたことも見逃せない。

 それでいて旧型の魅力もまったく削がれていないのが、Gクラスのすごいところ。しかも、3つのデフロックスイッチに代表される、卓越したクロスカントリー性能を備えているにもかかわらず、その姿を見かけるのは郊外よりも都会のほうが多い。要するにGクラスとはファションであり、現代では貴重な、武骨な道具のイメージが評価されているわけで、そこにカーマニアの影はちらつかない。高速安定性とかリニア感といった評価は、購買層の関心事ではないのだ(もちろん優れているに越したことはないが)。

新型であることを強く感じさせるのが、液晶のワイドモニター。テレマティクスサービスにも対応する。
こちらはAMGモデルの内装。ゴージャスになっても、ダッシュボードの奥行きが短いことでお分かりのように、抜群の取り回しのしやすさは健在。
横開きのテールゲートを備えたラゲッジも、旧世代と共通。

20年前の多走行車でも元気に走る!

80年代前半の初期型。専門店でごくたまに入荷はあるが、希少車につき高額で、現実的ではない。
90年代のクラシックG。手前からカブリオ、ショートボディ、ロングボディ。エンジンは3.2リッター直6と5リッターV8だった。
「G500」99年モデルの内装。ラグジュアリー志向になった初期の頃で、まだカーナビはビルトインされていない。

 Gクラスが日本で販売されたのは80年代半ばから。モデルバリエーションが広がった90年代後半以降、徐々に人気は高まり、「そろそろ生産中止か!?」と噂されながらも、快適装備を充実させ、パワフルになっていった。一方で、初期〜中期のクロスカントリー車然としたクラシックGを好む人たちも多く、中古車は群を抜いて高値安定傾向にある。

 主な理由として、約40年にわたってフォルムが変わらないことが挙げられるが、それだけではない。軍用車として開発されただけあり、エンジンやトランスミッションなどのパワートレーンが恐ろしく頑丈なのだ。だから10万キロ走ったくらいではビクともせず、それが中古車市場での価値を高めている要因でもある。参考までに相場を記すと、90年代後半の6気筒・ショートボディで300万円前後。走行距離10万キロレベルであることを考えれば、高値であることがおわかりだろう。

 当面は従来型も併売される現在、あえて中古車を狙う理由はなさそうに思えるが、価格も装備もカジュアルなクラシックGはギラギラした印象が薄く、大人の週末に似合う。コンバースのチャック・テイラーをはく感覚で遊べるのが、この年代ならではの楽しみなのだ。

 ただし、注意点はある。パワートレーンは頑丈と書いたが、同時代の輸入車に共通するネガとして、電装系の弱さがある。欧州のカーブランドが、高温多湿で渋滞が多い日本の道路事情を考慮した作りになったのは2000年代以降なので、それ以前のものは、やはり弱い。また、カーナビがビルトインされていない世代なので(あっても古くて使いものにならないが)、最新のクルマのような快適性を求めてはいけない。

 それさえ理解していれば、決して後悔することはないだろう。日本の道でも走りやすいサイズ、無駄のないつくり、ドアを閉めた時の気持ちいい感覚…。クラシックGは、時を経ても色褪せることのない名品の素晴らしさを教えてくれる。

〈メルセデス・ベンツ G550〉(新型)
全長×全幅×全高:4,817×1,931×1,969㎜
排気量:3,982cc
エンジン:V型8気筒DOHCターボ
最高出力:422PS/5,250〜5,500rpm
最大トルク:610Nm/2,000〜4,750rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:9AT
価格:1,562万円(税込み)
※従来型も発売中(1,080万円〜・税込み)

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この記事の執筆者
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。