今月のMs.Precious……東京都目黒区在住の55歳。風水師。就職氷河期で就活は全滅だったが、学生時代に暇つぶしで勉強した占星術を生業にしてみたら大当たり。その後、風水を学ぶために毎月香港に通うこと10年。21世紀になった頃には、企業の顧問案件だけでかなりの収入が得られるほどになった。普段、クライアントのところに向かう時は「出先で駐車場を探すのが面倒」という理由で、運転手を雇ってメルセデスのSクラスで移動しているが、小回りの利くクルマはないかと探していたところ、偶然TVCMで新型プレリュードを知る。「家族みんなで共用する」というテイで所有するのにいいかも……と、今回松任谷氏の意見を聞くことにした。
今月のクルマ……【HONDA PRELUDE】
「プレリュード」という名前を聞いて、懐かしさを覚えるプレシャス世代は少なくないでしょう。1980年代から90年代にかけて、「デートカー」という言葉の発端となった1台でした。助手席に誰かを乗せるための車。そんな少し甘い空気をまとったクーペが、昨年、24年ぶりに帰ってきました。同じ名前を冠して、でも今度は少し大人の佇まいで。今度のプレリュードはハイブリッドカーとして環境性能もしっかり持ちながら、ホンダらしい「走る楽しさ」も諦めていない令和仕様です。グライダーが大空を滑るように、という開発コンセプトそのままの、低く流れるようなボディライン。乗り込んでアクセルを踏めば、静かなのに不思議と高揚感がある。618万円からという価格も、かつての「みんなのデートカー」とはずいぶん変わりました。でも、それはこの車が変わったというより、正しく成熟した、と言うべきなのでしょう。あのとき助手席に座っていた誰かが、今度はステアリングを握る番かもしれない。時代を超えたプレリュード(前奏曲)の始まりです。
松任谷正隆が選ぶ「いま、このクルマで聴きたい音楽」……ブルーノ・マーズ 「Lo Arriesgo Todo」
なんだかかっこいいわね。第一印象から好きです――Ms.Precious
Ms.Precious はじめまして。
松任谷 よろしくお願いします。
Ms.Precious あの……石川県に松任(まっとう)という町がありますが、出身はやはり石川県ですか?
松任谷 どうなんでしょうね。祖父からはそういうふうに聞いたことはありますが、僕は東京生まれです。
Ms.Precious ではまっとうやさん、とお呼びすればいいですか?
松任谷 ああ、中学の先生にはそう呼ばれてましたね。でも通常はまつとうや、です。
Ms.Precious ああ、そうなんですね。で、今日はクルマの解説をしてくださるということで……。
松任谷 まあ、そんなところです。
Ms.Precious ということは、お仕事はクルマ屋さんですか?
松任谷 ……うーん、まあ近いといえば近いですが……。
Ms.Precious 私、時間があまりないのでさっさとやりましょうか。で、これが私のリクエストした……。
松任谷 はい、新しいプレリュードです。
Ms.Precious なんだかかっこいいわね。第一印象から好きです。
松任谷 街でもぽつぽつと見かける機会は増えてきましたね。
Ms.Precious 私は初めて見ます。
松任谷 まあ、一世を風靡した昔ほどは世に出てないですからね。
Ms.Precious 私の昔の彼が乗っていました。テニスが上手くてね。
松任谷 誰が強かった時代ですかね。
Ms.Precious アガシ、とかじゃなかったかしら。
松任谷 ああ、なるほど。でもテニスコートも似合うクルマでしたね。
Ms.Precious テニスコートはクーペが似合うのよ。ゴルフ場はセダンがいいけど。クラブが積めるから。
松任谷 今ではSUVがどこも席巻していますけどね。
Ms.Precious SUVってなんですか?
松任谷 背の高いというか、ちょっとごついというか……。
Ms.Precious 軽自動車?
松任谷 いや、もっと大きくて、ワゴンをでかくしたような。
Ms.Precious ああ、ジープね。今はいろいろなジープがあるわよね。
松任谷 まあ、その……。
Ms.Precious ジープのことをSUVって言うのね。で、流行っているんですか?
松任谷 結構街中では見るのではないですか?
Ms.Precious 私、運転しているとクルマのナンバープレートしか見ないから。
松任谷 はあ……。
Ms.Precious で、運転はしてくださるの? それとも私が?
松任谷 いや、どちらでも。
乗り心地、僕には絶妙にいいセッティングです。操縦性能とのバランスがいい――松任谷
Ms.Precious では運転してくださいな。私はたぶん助手席が多いと思うので。
松任谷 えっ? ご自分で運転するためのクルマではないのですか?。
Ms.Precious 息子よ。たまに私も運転するかもしれないけど。
松任谷 お母様が勝手に決めちゃっていいんですか?
Ms.Precious 私がいつも決めていますから。
松任谷 息子さんもテニスをされるのですか?
Ms.Precious 上手よ。大学のサークルの中では一番上手だから。
松任谷 わかりました。ではスポーツマンに似合うかどうか、ということで。
Ms.Precious これ、把手が飛び出していて引っかかりそうで危ないわね。
松任谷 いや、これはキーを持ってクルマに近づくと自動的にせり出すんです。で、これを引っ張ればいい、と。
Ms.Precious なんだか不思議ね。最近はこういうクルマが多いのですか?
松任谷 そうですね。ドアハンドルは空力に影響されるらしいので、ドアに埋め込まれているものが増えてきましたね。
Ms.Precious あ、そう、じゃあ行きましょう。
松任谷 座り心地はどうですか?
Ms.Precious 悪くないわ。行き先は伝えてあると思うけど。
松任谷 はい、ルートはお任せいただいていいですか?
Ms.Precious 遅くならなければいいわ。なるべく早く着きたいから。
松任谷 では出発します。
Ms.Precious ちょっと待ってちょうだい。席を調整したいんだけど。
松任谷 シート下に前後のスライドレバーが、シート横にリクライニングの調整レバーがあります。
Ms.Precious えっ? 自動じゃないの?
松任谷 電動じゃないんです。
Ms.Precious なんで?
松任谷 なんで、と言われても困るんですけど、手動の方が軽く出来るとか、いろいろとメーカー側の都合があるのではないでしょうか。
このフットワークはものすごく軽い靴を履いている感覚――松任谷
Ms.Precious クルマ屋さんなのにご存じないの?
松任谷 正確にはクルマ屋さんではないので、すみません。
Ms.Precious ではそこを右に曲がってね。大通りに出るまでは私が指示します。
松任谷 乗り心地はどうですか?
Ms.Precious 硬いわね。
松任谷 ああ、そうですか。僕には絶妙にいいセッティングだと思うんですけど。
Ms.Precious それはどういう意味かしら。
松任谷 乗り心地と操縦性能のいいバランスではないか、と。
Ms.Precious それなら乗り心地をもっとよくして、操縦性能ももっとよくすればいいのでは?
松任谷 それが砂糖と塩の関係みたいなもので、いい塩梅というのが難しいんです。さらに両方とも足しすぎるととんでもない味になっちゃうでしょ?
Ms.Precious あら、そうなのね。
スピードが上がってくるとしっとりとした感じ――Ms.Precious
松任谷 このフットワークはものすごく軽い靴を履いている感覚ですね。
Ms.Precious 靴は軽い方がいいわよね。
松任谷 足の自由が利く感じがしますよね。
Ms.Precious それは運転をしていると分かるものなんですか?
松任谷 そうですね。ステアリングホイールに伝わってくる感じとか、実際に体に伝わってくる感じが軽やかなんです。
Ms.Precious あっ、危ない。そんなに飛ばさないで。
松任谷 制限スピードは守ってますけど。
Ms.Precious 加速のせいかしら。
松任谷 そうかもしれませんね。加速も軽やかですからね。重いクルマを大きなパワーで動かしている、というより、軽いクルマを軽やかに滑走させている感じでしょうか。
Ms.Precious でもこちらはスピードが上がってくるとしっとりとした感じになってきました。
松任谷 今はノーマルモードなんですけど、この上にGTモードとかスポーツモードとかあって、だんだん硬くなっていくんです。
Ms.Precious それは何ですか? 何のためにあるんですか?
松任谷 走り方にあった動きと言ったらいいんでしょうか。例えば、高速道路をこうやって走る時には柔らかくてもいいけど、峠道とかだと、少し硬い方が運転しやすいんですよね。
Ms.Precious あ、そう。
松任谷 余談なんですが、今回このクルマを借りてみて、あらためてこれは本当に素晴らしいクルマだな、と思いました。殆どオールラウンダーです。フェデラーご存じですよね?
Ms.Precious 失礼ね。もちろん知ってますよ。
松任谷 あんなクルマですよ。スッと動く。
Ms.Precious それならわかるわ。ちょっとそんな気分になってきました。
松任谷 ナダル的なクルマは何だろうなあ。
Ms.Precious 松任谷さん、もう2人とも現役ではないんですよ。ジョコビッチはまだ活躍しているみたいだけど。
松任谷 とにかく、まっすぐに走る時の安心感。コーナーを曲がる時の安定感。これは本当は運転してもらわないと感じられないんだけどなあ。
Ms.Precious 昔の彼は本当に運転が上手くてね。
松任谷 ああ、そうなんですね。
Ms.Precious いつもハンドルは片手でさっさっと回して。
松任谷 ……。
Ms.Precious 松任谷さんはシートをうんと前に出しているじゃないですか。彼はもっとシートを後にさげて、シートバックも倒して、腕をまっすぐに伸ばして運転してました。
松任谷 そうですか。
Ms.Precious 松任谷さん、もう少し運転を勉強した方がいいわよ。カッコ悪い。
松任谷 そうですか? これで慣れちゃったからなあ。
Ms.Precious それに車間をあけすぎ。
松任谷 うーん。
Ms.Precious そこ右に曲がってちょうだい。そうしたら見えてくるから。
松任谷 テニスコートですよね。
Ms.Precious 今日は久しぶりに前彼とテニスなんです。
松任谷 そういうことですか。
Ms.Precious ほら、見えたでしょ。あのクルマ。
松任谷 おっ、初代プレリュード。
Ms.Precious そう、あれが彼のクルマ。まだ乗ってるの。
松任谷 これは珍しい。
Ms.Precious 一度並べて写真を撮ってみたかったの。松任谷さん、彼とクルマを並べて写真を撮りたいのでシャッター押していただけますか?
松任谷 ……はい。
今月のクルマ
【ホンダ プレリュード】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,520×1,880×1,355mm
車輛重量:1,460kg
車両本体価格:¥6,179,800~
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
問い合わせ先

- TEXT :
- 松任谷正隆さん 作編曲家、音楽プロデューサー
- PHOTO :
- 小倉雄一郎(小学館)
- WRITING :
- 松任谷正隆
- EDIT :
- 三井三奈子

















