この人にはなぜスキャンダルがないのか?
ハリウッドの主役的ポジションにありながら、これほどスキャンダルのない女優も珍しいと言われる人がいる。いや単に、スキャンダルになるようなことをしでかしていないと言うだけではない。まだ30代にして人格者、という噂しきり。今やハリウッド一の人気女優といっても良いマーゴット・ロビーである。
逆に言えばスキャンダルがないから、日本ではほとんど報道されないために、人となりがあまり伝わってこないという皮肉もあるけれど、向こうではかなり評判が良いのだ。ハリウッドで悪口を言う人はいないと言う位に。
初めてこの人を見たのは、レオナルド・ディカプリオ主演の「ウルフ オブ ウォールストリート」。ギラギラした男たちと美女たちが多数集ったパーティーで、とんでもない美女がやってきたということで、会場が騒然としてしまうほどの絶世の美女役を演じたのが、まだ映画デビュー間もないマーゴット・ロビーだった。
いや実際にとんでもない美女で、こんな女優がハリウッドにいたのかと目を疑ったほど。なぜならハリウッドは1970年代あたりを最後に、いわゆる絶世の美女系セクシー女優をほとんど輩出していない。女優も、演技力が優先する時代になった証である。
そういう意味では異色すぎて、また美しすぎて、びっくりさせられた訳だが、この人は演技力でも並み外れていた。それどころか自分を誰にでもできる才能を持っていたのだ。次に注目される出演作がなんと「スーサイド・スクワット」、ジョーカーを愛するがために気がおかしくなって超サディスティックとなった狂気の博士ハーレイクインを、なんとも残酷に可愛らしく演じている。
そうかと思えば、翌年には1990年に起こったフィギュアスケート界最大のスキャンダル、ケリガン選手襲撃事件の首謀者にしてスタースケーターであった人物を描いた「アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル」の主人公を演じた。
また翌年にはエリザベス一世を演じ、その次はハリウッドの猟奇的事件の主役シャロン・テートも演じてしまう。さらにはご存知「バービー」も。一体この人はどんな女優なのか、全く追いきれないまま、いつ間にか映画界のトップランナーとなっていたわけである。
シェアハウスの共同生活、親友から結婚へ?
そしていつの間にか、結婚もしていた。本当にスキャンダルがないばかりか、交際報道もなかったし、結婚相手は全然知らない人。それもそのはず、助監督と言う立場だから名前が出る道理がない。助監督と言っても、実際には使い走りのような立場だけに、無名の映画スタッフと結婚? と、既に大スターになってからの結婚だからこそ、いきなり「格差結婚」を揶揄、されたわけである。
ただハリウッドにおける格差結婚は案外うまくいくケースが多く、すぐに思い浮かぶのがアン・ハサウェイ。また最近になって結局離婚してしまったけれど長年寄り添った相手との格差が噂されていたのは天下のメリル・ストリープ。そういえばケイト・ブランシェットもこの部類に入るのだろう。皆ハリウッドで大成功している、まっとうな女優ばかり。格差結婚それ自体は何の問題もない気がする。
ただ、マーゴット・ロビーだけ少し違っていたのは、結婚後まもなく映画製作会社を立ち上げ、自ら主演とプロデュース、そして夫のトム・アッカーリーもそこに制作として参加すると言うスタイルを取ったことだった。普通だったら、公私混同、身内びいきという批判が起きるところ、この夫婦のタックルは批判どころか、むしろ夫婦共々評価を高めていて、面白いことになっているのだ。
実は先にご紹介した『アイ・トーニャ、史上最大のスキャンダル』も、また大きな話題となり大ヒットとなった『バービー』も、夫婦共同制作で制作した作品。これらがことごとく成功し高い評価を得たのである。いやだから近年は、夫婦というより、傑作映画メーカーの「共同経営者」という趣。
そういう二人三脚を成功させたのも、じつはこの二人、恋愛よりも先に友情を築いていたとも言われる関係。どういうことかと言えば、この2人の馴れ初めは、なんとシェアハウスの同居人。友人たちと共に始めたシェアハウスで共同生活をしていて、そういう環境から徐々に徐々に熟成させていった友情が、やがて親友関係と言ってはばからないほどの信頼関係を築き、さらには交際に発展してたと言う、ちょっとハリウッドでは聞いたことがないようなストーリー。まるで学生時代からのお付き合いのような何かほのぼのとした仲の良さがあるらしいのだ。
だから結婚式もほとんど誰も知らないうちに終わっていた極めてプライベートなもので、一昨年に第一子を設けているが、それも含めて、SNSなどでもプライベートを全く公表してはいないのだ。そういう点でもハリウッドスターとは全く一線を画す、普通の人。それが一般の人々の気持ちを捉えている部分もあるのだろう。
自分のポジションより、若いスタッフにチャンスを与えること
それだけではない。その制作会社においてマーゴット・ロビーは、若い監督や女性クリエイターに活躍の場を広げている。ハリウッドスターもこのクラスになってくると、自分の出演料が記録的であることにこだわったりするようだが、この人はむしろ周りのスタッフに光を当てることに注力している。
また格差を揶揄された夫の能力を信じて、若くして制作会社を作ったことが今の成功につながり、今は最強のビジネスパートナーとしての評価を共に高めているのである。
そもそもこの人は、どんな現場でも、脇役のスタッフたちも含め、誰に対しても分け隔てなく敬意を表し、映画の現場をいつも明るくすることを忘れないという。だから業界では極めて評判が良い。彼女を悪く言う人がいないのは、それこそ上から下まで、全てに好感度が高いからなのだ。
なんというかこの人、若いうちから太っ腹。甘えは全くなく、 周りを立て、一緒に発展していこうという大きな懐の持ち主。 スタートが“絶世の美女”だったように、美貌を前面に出しての成功の仕方もあったはずだが、ハーレイ・クイーンやアイ・トーニャという極めて個性的な狂気を演じるような役をあえて選ぶことで、キャリアを重ねていったのもまた独特なスケールの大きさを感じさせる。今年は「嵐が丘」のキャサリンを演じ、さらにまたこの人のキャパの幅広さを印象付けた。
女優としても一体どこまでいくのかわからないほどの可能性を感じさせ、制作者としても次々に成功を収めている。ここまでのスケールの人ってなかなかいない。周囲を巻き込み、一緒に発展していこうと言うエネルギーを持つ人格者。素晴らしいと思う。真のエンパワメントを見せられた気がするほど。そして、親友のような夫との深い絆と見事なパートナーシップ、こんな人生送ってみたいとつくづく思うのである。

- TEXT :
- 齋藤 薫さん 美容ジャーナリスト
- PHOTO :
- Getty Images
- WRITING :
- 齋藤薫
- EDIT :
- 三井三奈子

















